四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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92 建築部門の協力者をゲットしよう!

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「確かに……商業ギルド長のショーギル殿が憤るのも分かりますわ」

 カシコちゃんが決意を込めた瞳で続ける。
 
「しかし、早急に聖域結界《ホーリー・サンクチュアリ》を整えて差し上げないと、天使様の成長に支障をきたす可能性がある事をご配慮いただきたいのです」

 その腕の中には、抱っこされたまま熟睡しているルシーファの姿があった。

 実は、中央神殿の時からちょっと気にはなってはいたのだが、コイツ、一旦眠ると最低でも丸一日は目を覚まさない。

 いや、まぁ、無理やりたたき起こせば起きるには起きるんだが、一言二言会話をすると、すぐにまた寝入ってしまう。

 堕天使の頃はそんな事は無かったし、たっぷり寝てから起きれば普通なんだが……
 多分、この辺りにある『理力』が少なすぎて、体力の回復が追い付いていないんじゃないかな? と、俺は踏んでいる。

 現時点では丸一日程度で済んでいるので、衰弱して行くほどではないが、カシコちゃん曰く、少しづつ睡眠に当てる時間が伸びているらしい。
 これ以上長くなるようだと、栄養補給の面で不安が出て来る。

 そんな理由で、可能な限りサッサと住環境を整えたいのだが……要はアレだろ?
 商業ギルドにお金が落ちないのが困るって話なんだろ?

 そんなの、解決方法は簡単。

「ボーギル殿、ショーギル殿、それでは冒険者ギルドの請負工事はショーギル殿指定の工房に頼む形でよろしいのではないでしょうか?」

「おお、領主代理補佐官殿がそうおっしゃっていただけるのはありがたい」

 ショーギル殿が、赤茶の髪を撫でつけながら愛想のいい笑みを浮かべる。

「ですが! それだと完成まで半年以上もかかってしまうのですよ!?」

「はい、それは十分に存じ上げております、カシコ様。……そこで、一つご提案なのですが、私は土木工事をかなり高速で進めることが出来るスキルを持っております」

 一応、その手の特殊スキルを持つが故に『領主代理補佐官』に、任命された……ということになっているのだ。
 『ダンジョン・クリエイト』だって特殊スキルだから、あながち間違ってはいない。

「このスキルなのですが、実は才能のある方に、土木工事関係スキルを分け与える事が可能なのですが、工事の高速化のために、工房の皆様に能力の委譲を実施しても構いませんか?」

 その一言に、その場にいた全員が一瞬、言葉を失った。

「旦那……じゃなくて、カイトシェイド殿! そんな事ができるのですか!?」

 ボーギルが思わず素の言葉づかいになりかけたが、俺は営業用スマイルのまま頷く。

「ええ、可能ですよ」

 これは、ネーヴェリクにゴブローさん達のスカウトをお願いした時にダンジョン・ポイントの使用を許可したのと同じで、ダンジョン・クリエイトの中で『建築』に関する部分だけを他の奴に委託することができるのだ。

 もちろん、使えるのはこのダンジョン・エリア内だけだけどね?

 ……とはいえ、譲り受ける方だって、やっぱり最低限度の建築知識はあった方が良いに決まっている。

 逆三角形の建物も、魔力量さえ豊富ならびくともしないが、普通の魔力量しかない場合、ピラミッド型の方が安定するのは目に見えている。

 魔王城の管理の時だって、せめて、中級程度の魔力量で良いから、一般兵のヤツ等が協力してくれれば、もうちょっと『分身体』を増やさずに運営できたんだけどなー……
 でも、こういう地味な作業は魔族の中ではかなり下に見られていたせいで、協力者が現れなかったのだ。

 それを考えると、今の段階から建築部門協力者が得られるなんて、実にお得だ。

「の、能力を分け与えるなんて……そんな事をしてしまったら、独占が崩れて、大損をしてしまいますよ!? 本当に良いんですか!?」

 ショーギル殿が目をひん剥いているのだが、人間の価値観だとそうなのか?
 扱う気があるヤツには協力して貰った方が良くないか?

「え? いえ、あの……私が建築に関する技能を使えなくなる訳ではないのですが? ……ただ、同じような魔法を使える者が増えるだけで……」

「ですから、独占が崩れると言っているのです! 高速で工事が完成する技能があれば、そのスキルを使って荒稼ぎが出来るではないですか!」

 でも、協力者が増えると、一人当たりの業務量が減って、楽できるじゃん??
 
「今回は己の利益よりも公共の益と……貴重な天使族の保護を最優先に考えるべきでしょう?」

 ルシーファの生活排水は一種の危険物だしな。
 サッサと個別管理の徹底を図りたい。
 それに、ダンジョン・ポイント的には大変美味しいヤツだから、きちんと搾り取らせながいきして貰わないとッ!

 だが、それを聞いたショーギル殿が目を丸くして、頭の先から足の先まで俺をまじまじと見つめた。

「いやぁ……! カイトシェイド殿が下町で『癒しの聖者』とか『光の勇者』と呼ばれている意味が分かりました! やはり、俗物である私などとは、考え方の根本が違いますな!!」

「は……ははは……おやめください、そのような大それた名など……」

 つーか、『光の勇者』の方はマジで止めろ。

「またまた、ご謙遜を!」

「それより!! 特殊な結界を作るための材料以外は、商業ギルドで準備いただいた資材を購入させていただきます。お支払いは『魔法石』でも構いませんか?」

「ええ、それはもちろん!」

 ショーギル殿と固い握手を交わし、建築作業者を紹介して貰えることで合意。
 なお、建築費用は工房へと納めることになった。
 ちなみに、この費用の一部を紹介金と言う名の税金としてギルドに納めるのだとか。
 
 よっしゃー! 建築部門協力者、ゲットだぜ!!


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