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91 冒険者ギルドを改造しよう!
しおりを挟むそんな訳で、とても素直になって貰ったダーイリダ卿、鶴の一声で親衛隊の皆様には、実に円満にご自身の通常業務に戻っていただいた。
ついでに、何故か、俺自身がここダリスの領主代理補佐官として、この街の運営の全権を任せていただけるようになった。
いやー、話が分かる御仁ってイイネー(棒)
ただし、この呪いのアイテム、とても便利だったんだけど、サーキュとダーイリダ卿を従順にさせたら容量《キャパシティ》がいっぱいになってしまったらしく、これ以上は【絶対服従】が発動しなかった。
どうやら、服従させられる相手の総トータル魔力量によって限界があるらしい。
俺としてはこの二人さえ大人しくしてくれれば十分。
さてと、それでは、色々魔改造できる下準備も整った事だし。
中央神殿に行った際にボーギル達が捕まえた魔物を貰ってあるし。
明日以降、楽しい、楽しい、ダンジョンの魔改造といきますか!
さて、では、現時点で真っ先に手を付けておかなければならないのが冒険者ギルドの建物整備だ。
理由は簡単。ちび天使の棲家になっているからだ。
じーちゃんから、天使とか古代龍とか高位精霊っていうのは『住環境特殊種族』だ……って話はちょこっと聞いた記憶はあるのだが、俺が魔王城の管理をする頃にはその手の種族はすでに居なかった。
だから、全特徴を記憶していないんだよなー……
それに、自分自身の事なのにルシーファに天使の特徴を聞いても「全部は覚えていません」と答えるばかりで、当てにならなかった。
あのアホ「全部は覚えてない」じゃなくて「ほとんど全部覚えてない」の間違いだろ!?
一応、俺の記憶にあるのは天使ってのはかなり繊細で、ほとんどの魔族が好む『瘴気』に弱く、逆に自然光と人間達が『理力』って呼んでいる方の魔力が満ちた空間が成長に必須……だったはずだ。
それに、今はサーキュ、ダーイリダ卿のような『呪い』を解かれたくないヤツ等が同じ町に共存しているので、ルシーファの生活排水は個別管理が重要だ。
一瞬、生活排水を『呪いクリーナー』と銘打って売り出そうか? とも考えたのだが、それを持った冒険者達がダンジョンに潜って、万が一、誤ってサーキュの呪いを解いてしまったり、誰かがダーイリダ卿に差し入れされても困るので、一部は「その場で使って貰うのを前提にそれなりに高価な値段で売り出すのは有り」だが、残りはキッチリ処分させてもらう事にした。
「新しい冒険者ギルドなんだけど地下に試験場、1階公共施設、2階個別相談個室、3階事務室、4階ギルド長室、5階と屋上が、ボーギルやカシコ、それにルシーファの生活空間で良いか?」
「ギルド長室が4階!? 普通、偉い人の部屋って1階の別棟か2階にあるんじゃないの!? それに5階なんて、倉庫か物見やぐら用よ?」
「え? 偉い人の部屋って高いところにあるんじゃないのか? 普通……」
聞けば、普通、人間の世界だと1,2階辺りが一番良い部屋で、上の階であるほど、格が下がるのだとか。
何でも、上の階の場合、生活用水を上水道や井戸まで汲みに来ないといけないし、トイレや風呂も基本は1階が普通。そのため、それらの生活導線を踏まえると、やはり一番良いのが1,2階と言う事になるらしい。
魔王城の場合、上下水道ともに屋上まで配備するのが普通だったから、魔王の部屋とか、良い部屋って言ったら最上階ってイメージだったからちょっと驚いた。
「いや、ちゃんと最上階まで生活導線は配備するぞ? 階移動は瞬間移動魔法陣を組み込むし、風呂や洗面所・トイレは全階設置するし……」
「5階に個人用の風呂まで創れる!? そんな建物……ちょっと、想像がつかんな……」
「そうね。でも、それが本当なら、カイトシェイドさんのいうとおりの間取りでも全然かまわないわ」
「ああ」
二人の了承も得たので、俺の計画どおりにギルドの魔改造をしようとしたところ、ここでちょっとしたトラブルが発生した。
「冒険者ギルドの建物を建て替えるのに、『商業ギルド』を経由しないというのはどういうことです!? 困りますよ、ボーギル殿、大型の公共施設工事はウチのギルドと契約のある工房で請け負う約束ですよね!?」
「ま、それはそうなんだが……こっちもちょっと急ぎでな?」
ボーギルのヤツが少し気まずい雰囲気で頭を掻いている。
目の前に居るガタイの良い赤茶髪のオジサンは商業ギルドのギルド長だ。
本来、建物の造形は『ダンジョン・クリエイト』で一発……なのだが、ギルドの建物みたいな大規模公共施設の工事費用と言えばかなりの高額。
当然、その資材の販売だけでも大きな利益が動く。
それを、俺の魔法一発で終わらせてしまっては、大工たちが経済的に立ち行かなくなってしまうのだとか。
個人の家や商店……俺が私有地に勝手に作った『闘技場』や『公衆浴場』のような施設はまだ目をつぶって貰えたのだが、流石に冒険者ギルドの改造は、そういう訳にはいかないようだ。
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