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90 強制労働に従事させよう!
しおりを挟む「ババンヘッドォォォォッ!! イヤぁッ!! 全毛が縮れ毛ェェェッ!!」
俺が、オメガに頼んでサーキュを起こして貰ったら、奇妙な叫び声を上げ、腹筋を二つに折り曲げながら覚醒した。
……一体、どんな夢見させられてたんだ?
「やあ、おはよう! サーキュくん」
とりあえず、気を取り直してサーキュに声をかける。
「ハッ……えっ!? 髪!! アタシの髪が……縮れてない! ハゲてないッ!! ……よ、よかった……」
「良かったな、毛が無事で」
「かっ、カイトシェイドッ!」
俺が手に持って居るのは、小さな針とサーキュ自身が首にかけていた【絶対服従】の呪いの薬瓶。
「『様』はどうした? サーキュ」
にやり。
俺は、魔法紋のバッチリ浮き出た彼女に向かって、そう宣言した。
「ハァ? 何を言っているの? カイトシェイド様……!?」
「俺に這いつくばって詫びろ」
ばばッ!
その命令に従って、俺の足元で土下座するサーキュ。
指先とか尻尾の先がぴくぴく動いているから、多分、必死に抵抗してるんだろうなー。
「も、申し訳ございませんわ……カイトシェイド様にご迷惑をおかけし、部下のネーヴェリクにまで危害を加え!?」
「ネーヴェリクにも『様』を付けろよ」
「ね、ネーヴェリク様の御身にまで危害を加えてしまい、大変、失礼いたしました。なにとぞ……なにとぞ、お許しくださいッ……!」
サーキュのヤツは額を地面に擦りつけたまま、滑らかに謝罪の言葉を述べる。
言い終わった後に、ギリィッ、という女の口から漏れたとは思えない程の歯ぎしり音が聞こえたから、心の中では謝る気などサラサラ無い事は明確だ。
だが、まぁ、そこは別に構わない。
この性悪女が改心するとは思えないし。
「ま、いいや。……それより、本当に効き目があるんだな。この【絶対服従】の呪い」
「へ~、これで、このレディさんは心配ないの?」
「ああ。……いいか、サーキュ、命令だ。『俺を始め、俺のダンジョン内に生息して居るハポネスの全ての住民に物理的・心理的・魔法的・呪術的なあらゆる危害を加えてはならない』いいな?」
「……か、かしこまりましたわ、カイトシェイド様」
これで、ここでのコイツの順位は最下層。
大粒ゴキーブリや吸血蝙蝠豚なんかよりも下だ。
「じゃ、土下座もかしこまった口調も止めて良いぞ」
「くっ……! か、カイトシェイドッ……様! ま、まさかっ! その呪いをアタシに!?」
お? かしこまった口調は止めて良いって言ったのに「様」を付けるなんて、ビビってんのか?
「当たり前だろ?」
キョロキョロと胸元の魔核やら体中を確認し不審気に首をかしげるサーキュ。
その様子に、オメガがひょい、と手鏡を渡す。
これは、事前にオメガに依頼しておいたとおりだ。
「ちょ!! な、何よコレっ!? よ、よりにもよってアタシの顔に【絶対服従】の魔法紋を入れるなんて……ッ! サイテーッ!!」
バーンと顔中に浮き出た魔法紋を見て金切り声を上げるサーキュ。
「はっはっはーっ! 額の真ん中に針を刺してやったんだよ。別に良いだろ? どうせ数日したら魔法紋は透明になるから普通は気づかれないし。それに、殺すより、生かしておいた方が役に立つからな」
コイツを殺したところで、一時的な死亡ボーナスが手に入るだけである。
それよりも安全に扱えるなら、ウチのダンジョン内に縛りつけておいた方がポイント的にはお得だ。
多分、単体であれば、ウチの住人の中でも五本の指に入るくらいサキュバス・クイーン1体が稼ぎ出すダンジョン・ポイントは高い。
この呪い、天使の体液を薄めたモノで消えちゃうから、ルシーファの生活排水はかなりキッチリ個別管理しておく必要性はあるが、それでも俺は魔王城では秘かに『下水道の魔術師』と謳われていたのだ。
……謳われていたっつーか、馬鹿にされてたっつーか……
だが! そのあたりの水回り制御には自信がある。
「お前にはウチの地下ダンジョンのキーパーをやって貰うからな。あ、地下ダンジョンの中だけは住人であっても危害を加えて良い事にしてやるから。ただし、一歩でも地下ダンジョンを出た住人を操るのは駄目だからな!」
「そ、そんなっ!? アタシはサキュバス・クイーンなのよっ!? 嫌よ、そんな下働きみたいな真似は!」
「もちろん、お前専用のジャグジーは地下に作るけど?」
「えっ!? ……うぅぅ……」
ただし、魔王城ほど高性能なものは作る気はない。
この女、いつ呪いを解いてこっちに牙を剝くかわからないからな。
「お前が嫌がったところで俺の命令には背けないだろ? さ、ちゃっちゃと働け。ああ、そうだ、地下ダンジョンの詳細はゴブリン・ロードのゴブローさんに聞いてくれ」
「ちょ!? 身体が勝手に……何処へ行くのよ!? 地下ダンジョン? 地下ダンジョンとやらへ向かってるのね!? くっ……お、覚えてなさいよぉぉぉぉぉっ!!」
ぷりぷりと腰を振りながら闘技場から出ようと歩くサーキュを見送り、俺は戦闘用結界を解いた。
「ありがとな、オメガ。一応、あの女がちゃんとウチの地下ダンジョンで仕事をするか、最初だけ見てやってくれ」
「うん、わかった~。あなたはどうするのぉ?」
「ちょっと、もう一人オハナシが必要なヤツが居るんで、ソイツと話をつけてから戻るさ」
俺は、サーキュから奪った呪いの小瓶を振るとにっこりと笑った。
この呪い、結構便利だな。よしよし。
ダーイリダ卿もちょっと俺に従順になってもらっちゃおうかな~?
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