四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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88 解呪材料をゲットしよう!

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「おーい、ルシーファ居るか!」

 冒険者ギルドのギルド長室では、カシコちゃんが多くの書類に押印したり、チェックを入れながら働いていた。

「カイトシェイドさん、大変よ! 領主代行のダーイリダ様から『貴方が反逆罪を企てている可能性が有る』って正式な通知が数日前に出ていたの! これは、今屋敷の周りを包囲している騎士団だけじゃなくて、もっと強い親衛隊も動きかねない書類よ!?」

 そんな彼女が、俺を見ると血相を変えて一枚の皮用紙を見せてくれた。

 だが、まぁ、ダーイリダの方は、もうしばらく動けないだろう。
 未だ失神中だろうし、仮に気づいても兵士・看守共々、牢の中だ。
 交代要員が来るまでは誰も気づかないに違いない。

「大丈夫だ!! ダーイリダはすぐには動けないはずだから、そっちは後で対応する! それよりルシーファのヤツはどこだ!?」

 俺の剣幕に圧倒され、思わず皮用紙を取り落すカシコちゃん。

「え? る、ルシちゃんならボーギルと一緒にココのお風呂に入ってるけど……」

「風呂か!」

 俺は、急いでギルド内浴室の扉を開けた。

「おい、ボーギル、ルシーファ居るか?」

「旦那? ど、どうしたんだ、突然……」「な、何事ですか? カイトシェイド」

 見れば、ギルドの浴槽は大人が2,3人、両足を伸ばして入れるくらいのそこそこ立派なものだった。
 その湯舟でほっこりくつろいでいる途中だったらしく、唐突に開かれた扉と、そこに立つ俺の姿に二人とも戸惑っている。

「おい、ルシーファ、お前の体液を分けてくれ!!」

「な? え? た、体液ですか??」

「とりあえず、『涙』『唾液』『胃液』『汗』『血液』『尿』を頼めるか?」

 流石に『脳脊髄液』とか『胆汁』とか『母乳』とかが必要な場合は、色々と本気でいただかないとならない訳だが、そこまで入手困難な液体ではあるまい。
 ……ないよな?

「旦那、落ち着いてくれ! いくら何でもそれは変態が過ぎるぜ!? なんだって体液が必要なんだよ!?」

「ネーヴェリクが呪われた。その呪いを解くのに、天使の体液を水で薄めたものが効くらしいから試したいんだよ」

 その一言で、二人とも察してくれたらしい。
 ルシーファの奴が一瞬、身体をこわばらせた後にため息をついたのは、俺が本気で、絶対に該当の液体を持ち帰る気マンマンだと悟ったせいだろう。

「これでも、外部から取り出しやすい液体に標的を絞ってみたんだが?」

「……わたしとしては、胃液をスタンダードに取れる液体に分類しないでほしいんですけど……」

 みぞおち辺りをカバーするように両手で腹部を抑えるルシーファ。

 大丈夫、大丈夫。
 処置が苦しくならないように、オメガに頼んで『熟睡』させた上で、取り出してやるから。
 一応、俺『回復術師』だし、胃壁に穴を開けちゃうタイプの寄生虫の治療とかも経験あるから、胃液くらいならチャチャっと取り出せる。

 別にどっかの脳筋魔王みたいな真似……胃液を吐くまで腹パン……したりしないぜ?

「だったら、順を追って試そうぜ? まず、汗でもいいなら、この湯舟の残り湯だって十分ってことになるだろ?」

「ふむ……それもそうだな」

「つーか、俺も入浴しちゃってるけど良いのか?」

「かまいませんっ! 居てくださいっ!! ボーギルもここに居てくださいっ!! わたしを一人にしないでッ!!」

 ちび天使が半泣きでボーギルの右腕にすがりつく。

「ネーヴェリク連れて来るから、泣けるようなら、こっちの器に『涙』を溜めとけよ、ルシーファ」

「……うぅ……なんだか、別の意味で泣けそうですよ……」

 どんな意味でも自然に絞り出せるなら出しておいて欲しいものである。
 いくらルシーファとはいえ、子供を泣くまで虐めるのは趣味ではない。

 俺は一旦、屋敷に戻ると、ネーヴェリクを抱えて再度、冒険者ギルドの浴室へと移動したのだった。

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