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87 呪いを解こう!
しおりを挟む「テメェ……俺が何を言いたいか分かってるだろうなァ……!」
しかし、状況が分かっていないのか、サーキュはすぐに勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ふふ……ほほほっ!! あのヴァンパイア娘にかけた呪いの事ね!」
「分かってるなら話は早い。さっさとあの呪いを解け!!」
「ざーんねん! それは出来ないわ!!」
「ほぅ?」
思わず俺の目つきが鋭くなる。
今まではあくまでも威圧だったのだが、その一言を聞いてサーキュに叩きつける魔力の中に明らかに殺気が混ざった。
それまでは俺を見下している様子だったにもかかわらず、殺気を叩きつけた途端に「ひっ」とか小さな悲鳴を上げて、鼻水を垂らしながら動揺するサーキュ。
ここに来て、ようやく周りをキョロキョロしているあたり、やっと自分の置かれた立場が理解できたようだ。
泡を喰ったように情けない言い訳を垂れ流し始めた。
「ち、ちがうのっ、アタシは魔王様の命令で仕方なくやっただけなの!! だから、アタシではあの【絶対服従】は解けないのよ!! あれは魔王様から、昔、貰った魔道具を使ったんだもの! ホントよッ!! こ、これよ!! ホラっ!」
そう言って、サーキュのヤツは何やら禍々しい力を放つ小瓶をぶら下げたネックレスを胸の谷間から取り出す。
曰く、この小瓶の中の魔法薬をつけた針を相手の身体に打ち込むと、呪いが発動し、徐々に【絶対服従】の魔法紋が全身を侵食。針を刺した者に従うようになるのだとか。
「何でこんなもん、テメェが持ってるんだよ?」
「魔王様が捕らえた天使を嬲る手伝いをした時に貰ったのよッ!」
何でも、天使の体液には『呪い』を打ち消す効果があるらしくて、この薬は効き目が無かったのだとか。
『呪い』よりも通常の薬による『状態異常』の方が良く効くらしい。
……天使の体液って『呪い』を打ち消す効果なんてあったんだ?
て、ことは、あの中央神殿での『聖水』の作り方って、人としては間違っていたけどそこまで間違ってなかったのか……?
できあがったものは、アンデットにダメージを与える本来の『聖水』ではないのかもしれないが、全く無意味な汁って訳でもなかったのか。
「つまり、天使の体液を混ぜた水で洗い流せば消えるって事か?」
「そ……そうだけど……でも、もう天使なんて残ってないわよ。魔王様が殺しちゃったもの! そ、それにアタシを殺したって意味ないわよ!? そうなったら【絶対服従】の主が不在で、呪われた方は狂って身体が崩壊するだけなんだから!!」
さて、サーキュの言っている事は本当なのだろうか?
この女、嘘つきだからなぁ……
俺も何度か煮え湯を飲まされているから、ぶっちゃけあんまり信用できない。でも、まぁ、生きた天使で良いなら、ついさっき、このダンジョンに連れ帰って来たばっかりだ。
試すだけ試しておくべきだろう。
「おい、オメガ、この女に少しばかりコワイ夢を見させてやれ。今の情報が本当だったら呼びに来るからその時は起こしてやってくれ」
「うん、わかった~、【強制睡眠】!」
「ちょっと、何すんの……ぐぅ~……」
「ふふふ、おやすみねぇ~。良き悪夢を、レディさん」
オメガの呪文で、闘技場の床にひっくり返り寝息を立て始めるサーキュ。
時々「うぅ、ほうれい線が~」とか「あごのたるみがぁぁ」とか言いながら、うなされている。
「じゃ、ちょっと悪いがこの女を見張っててくれ」
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俺は、ダンジョン内瞬間移動で、ほんの半日前に別れたちび天使の元へと飛んだ。
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