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86 サキュバス捕獲!
しおりを挟むこの辺り、ベータ曰くセーブ・エリア虫が潜んでいる可能性が高いのだが、ちょうどマッピングの途中なのだとか。
「よし……だったら、オメガに頼んで、サーキュを捕まえて来て貰え。お前たち二人がオメガに代わってこっちの騎士団をサクッと蹴散らせ。あ、でも可能な限り殺すなよ?」
その指示に、アルファのヤツが分かりやすく顔を歪めた。
「ふざけんなよ!? オメガに何かあったらどうすんだよ! しかも、一人であのババアを捕まえられる訳ねーだろ! 俺も行かせろ!」
「だったら、まだベータに一緒に行って貰った方がマシだな。お前みたいな若い男はサーキュにとってはカモも良いとこだぞ?」
「ぐ……俺があんなババアに惹かれる訳ねーだろ!!」
まぁ、確かに、前にコイツの記憶を読んだ時に見た『死んだ恋人の見た目・雰囲気・性格』を考えると、サーキュとは全く似てないけどな。
むしろ、まだオメガを成長させた方が恋人に似ている。
しかし、万が一アルファが操られると、正直、厄介。
サーキュのヤツは本来、直接的・物理的な強さはさほどでもないのだが、アルファが操られると、そこをまるまるカバーされてしまう。
「その点、オメガなら夜は女だし、そもそも子供だし、魔法抵抗力もお前たちの中では最も高いし、サーキュの【魅了】が一番効きにくいタイプなんだよ」
そんな訳で、オメガにモンスター捕獲運搬用のアイテムを貸して、『花街付近の近寄りたくないと感じる所へ無理矢理進め』と指示したところ、かなりあっさり、サーキュのヤツを捕まえて来てくれた。
オメガくらい魔力量があるなら、セーブ・エリア虫の結界を突き破れるとふんでいたのだが、ここまで簡単だと逆に驚く。
簡単だった理由が、捕らえられていたサーキュを一目見て納得した。
どうやらコイツ、魔力の回復をほとんどしていなかったらしく……かなり見た目が痛々しいオバはんと化していたのだ。
これは……アルファもベータも最初の説明だけだとサーキュとは気付けないわ……
一時的にネーヴェリクの新設した風呂を利用していたようだが、あれはあくまでも人間用。
サキュバス・クイーンの魔力を回復するには至らない。
瞬間的に元の若い姿に戻れたとしても、長続きはしなかったのだろう。
だから、あの風呂付近のセーブ・エリアに引っ込んでいたって事か。
さらには、セーブ・エリア内で酒をかっ食らっていたらしく【強制睡眠】一発で、実にあっけない捕物だったようだ。
むしろ、熟睡している成人女性を捕獲機に移す作業の方がよほど大変だったらしく、オメガのヤツが「このレディさん、重たいよぉ~」と散々文句を言っていた。
「あのねぇ~、ついでに、この虫も捕っておいたよ~」
「おう、オメガ、ありがとな」
セーブ・エリア虫も一緒に捕獲してきてくれたので、わしゃわしゃとオメガの頭を撫で回して、飴ちゃんを褒美に渡してやったらご機嫌に戻ってくれたのでヨシとする。
「さ・て・と……オメガ、もうちょっと手伝ってくれよ?」
「は~い、うふふ、楽しそうだねぇ」
俺は、ダンジョン内瞬間移動で誰も居ない闘技場へと場所を移すと、戦闘用結界を発動させた。
これで、この馬鹿女は俺とキチンとオハナシする以外に方法は無い。
俺は、捕獲機の中で惰眠を貪っているサーキュを闘技場の床へと放り出した。
どべちゃっ!!
「んぐっ……ンもぅ、何よ~……」
突然、ベッドから落ちたような寝ぼけた声を出して目を擦りながら伸びをするサーキュ。
「よぉ……サーキュ、久しぶりだなぁ」
俺は、ヤツの真後ろからドスの効いた声を響かせた。
「ッ!? か、カイトシェイドッ!?」
サーキュは、バッと、サキュバスとは思えない程、不細工に顔を引きつらせ真後ろを振り向いた。
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