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83 領主代理・ダーイリダ
しおりを挟むダンジョン内瞬間移動の場合、すでに知っている場所、もしくは俺の知人の居る場所の近くであればどこにでも移動が出来る。
ボーギル、カシコちゃん、ルシーファの三人を冒険者ギルドのギルド長室へ送り届けた後、移動した場所はまるで石造りの地下牢のような所だった。
「おーい、ネーヴェリクー?」
「き、貴様っ! 何者だッ!!」
その地下室の入口には豪奢な服を纏い、複数の兵士を連れたヒゲのおっさんが立っている。
兵士っぽい人間達が「ダーイリダ様、お下がりください!」とか言っておっさんを庇っているから、コイツが領主代理のダーイリダ卿なのだろう。
「ああ、ダーイリダ卿、お初にお目にかかります。私はカイトシェイド。こちらに私の部下が伺っていると聞き足を延ばしたのですが……」
「まさか……! 貴様が反逆者カイトシェイドか!」
光の勇者になったり反逆者になったり……忙しいな、俺の評価。
ま、この様子ならわざわざ敬語を使う必要性もないだろう。
「別に反逆しているつもりは無いが……」
「だまれ! 民衆の人気取りをしてこのハポネスを乗っ取るつもりだろう!!」
……そこまで考えてなかったんだが……どうせ俺のダンジョンはココだし、さっさと乗っ取っておいた方が後腐れ無くて良いのか?
「そうだな。お前がそうして欲しいと言うのなら俺が管理してやってもいい。お前、北外町では、ずいぶんと上下水道の管理がおざなりだったぞ? あと、あの辺の住民の世話とかしてないのか?」
ちょこっと住環境を整えてやっただけで、あの辺りの住民からは、どえらく慕われてしまった。
病気なんか治そうものなら、ほとんど神様扱いだ。
「な!? ふ、ふざけるな!!」
「ふざけてはいないぞ? 管理とは言っても、俺は人間達の数が増え、長生きし、レベルを上げてくれればそれでいいからな?」
「くそっ!! その厚顔無恥なる態度! 反逆だ!! 我が騎士団を持って貴様等一族郎党、始末してくれるッ!」
その時、部屋の奥の方から、ヒュッという空気を切り裂く音と同時に、びしっ! と、鋭い衝撃音が走る。
何してるんだ? と問うまでもなく、拷問官らしき男の声と聞き覚えのある少女の悲鳴が聞こえた。
「ひゃはははっ! さっさとコアの在処を吐け! 出来損ないのクズが!!」
ビシっ、びしんッ!!
「あうっ……! うぅ……」
見れば、ウチのネーヴェリクの服を脱がし、鎖に吊るし上げ、下卑た笑いを響かせながら、その華奢な身体を鞭打つ看守らしき二人の男。
「何してんだテメェ等ぁっっ!!!」
ぶごわっ!!
「うごわっ!?」「ぶぎゃっ!?」
ばしん! びたんっ!!
思わず、咄嗟に魔力波を叩きつけて吹き飛ばしてしまった。
牢の壁に叩きつけられた二人の男は目を回してぶっ倒れている。
ふん! ……即死させなかっただけありがたく思え……!
俺は、急いで吊るされているネーヴェリクの鎖を魔力の刃で断ち切ると、拘束を外し、自分の上着を彼女に着せてやる。
「か、カイトシェイド様……だ、だめデス……カイトシェイド様の、たいせつナ……ダンジョン・ポイントさん、たちが……」
「馬鹿っ!! 確かに、コイツ等も大切なダンジョン・ポイントを生み出す生き物たちだが、お前だって大切に決まってるだろっ!! お前自身が嫌だと思うことをしてくるような人間は『眷属化』しろよ!?」
だが、その様子を呆然と見ていたダーイリダのヤツが我に返ったらしく、顔を真っ赤に染め、怒鳴った。
「き、貴様! 何をしている!! ええい! こ奴をひっ捕らえろ!! そのヴァンパイアは私のものだ!!」
「ふざけんな!! ネーヴェリクは俺の部下だ!! ずっと前から俺の直属の部下だッ!!!」
思わず、本気で怒気を込めて威嚇してやると、兵士もろとも「ひぎぃ」とか「ふごへっ」とか言いながらションベン漏らして失神しやがった。
まったく!! 盗人猛々しいにも程があるぜ!
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