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80 中央神殿への置き土産
しおりを挟む「よーし、帰ろうぜ」
「旦那、楽しそうだな……」
そりゃ、こんなに長くダンジョン・コアから離れた事は無かったから……
「あ」
「……? どうしたのよ、カイトシェイドさん」
そうだ。この、中央神殿内に作ったサブ・ダンジョン、どうしようかな?
いや、もちろん破壊することは前提なのだが、想定外に広いサイズまで成長したんだよな。
天使恐るべし。
精々、最大でも天使様のお部屋……大人4人が横になって寝られる程度の広さ……を想定していたのだが、それの倍近い大きさまで広がっている。
ダンジョン・コアを自壊させる場合【迷宮代償】と言って、それを代償にするかわりに、ちょっとした奇跡を起こせるのだ。
奇跡の規模は、ダンジョンの成長具合によって変化する。
このサブ・ダンジョンだと、せいぜい、ただの水が湧き出る泉を作る、とか、100年程度は光を失わないぼんやり発光する石を作る、とか……その程度だ。
「……て訳で、いや、この神殿に、何か置き土産するなら、何が良いかな?」
「ふーん、『泉』か『光る石』な……実利を考えると『泉』一択じゃねーか? この辺、水資源は、相当地下の井戸から汲んでいるんだろ?」
「あら、でも、聖地だから何の意味も無い『光る石』でも結構、有難がるんじゃない? 観光資源になるわよ? 本物の天使様も居たんだし」
「わたしはどちらでも構わないと思います。ただ、昼間でも水が汲めるのは……水が冷たすぎなくて良いかもしれませんね」
協議の結果、泉の得票数が光る石を超えたので、サブ・ダンジョンを破壊するのと同時に、神殿内の広場に、こんこんと水が湧く泉を作った所、神官たちに、妙にありがたがられてしまった。
「あ、そーだ! ……おい、ルシーファ、ちょっとこっち来い」
「? なんですか?」
俺は、ふと、小さないたずら心で、その造りたての泉に向かって、今回の騒ぎの原因となった駄天使様を引っ掴むと、ぽ~い、とばかりに放り投げた。
「ほぇっ!?」
だぼーん! と、いい音を響かせて泉に落下するルシーファ。
「ははははは!! これで、この泉にも天使の出汁が混ざったな!」
ドバキッ!!
「おぉっ!?」
ざばーーーんッ!!! ごぼべっ!?
大笑いしていた俺の背中を何者かが、泉の方に向かって、吹き飛ばして来やがった!
「何てことするのよ!! さっさとルシちゃん、拾って来なさいッ!!!」
……はい……
般若なカシコちゃんの怒鳴り声を背で聞きながら、俺は溺れているルシーファを引っ掴んで泉から上がったのだった。
なお、この泉……『天使と勇者が共に沐浴した泉』として聖地巡礼の中に組み込まれたらしい。
……ホント、物は言いようだよなぁ。
なお、後日聞いた話では、あの神官達……
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しかも、その処刑方法が、虚言の罪により、上下の唇と舌を縫い合わせ、水だけを与えて餓死させる、という壮絶なやり方だったようで……しかも、あのぜい肉まみれの巨体。
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一方のマチョリダの方は、人間の罪こそ問われなかったものの、天使様から直接ダメ出しされたことで、結局、社会的には完全に死亡。
隠居状態だけだと、やがて逆上して、天使様や勇者様に害を及ぼす可能性がある、と勝手に不安視した信者共の手により完全幽閉状態にまで追いやられたらしい。
噂では、逃亡防止のために、両足の指を全て切断されている、とのことだが真偽のほどは不明だ。
当然、その一派は完全に解体。内、悪質な幾人かは同じように断罪されたようだ。
こわい、人間、マジ怖いッ!!
ねぇ、一応、同族だよね!? 制裁する側も同じ種族なんだよね!?
マチョリダの極端なトコロ……笑えないよ!!!
じいちゃんが「実は人間は恐ろしい」と言っていたのが滅茶苦茶身に染みたよ……
ところが……無事、カシコちゃんの【出戻移動】で、屋敷に戻った俺達を待っていたのは、新たな面倒事だった。
くそぉ……ちょっとは俺を休ませろ……!
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