四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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73 【ハポネスside】サキュバス襲来

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 「うふふふ……ここがカイトシェイドの隠れているトコロね」

 サーキュは、眼下に広がる街を侮蔑の瞳で見下ろした。
 マドラの記憶を読み、その場所まで来てみたが、まだまだ魔王城と比べれば発展途上もいいところだ。

 だが、今回のサーキュの目的はカイトシェイドではない。

 魔王様のご機嫌を鑑みるに、カイトシェイドを連れ戻すのは危険が大きい。
 そのため、狙うならカイトシェイドの補佐をしていたあの出来損ないのヴァンパイア娘だ。
 あの娘、いつから魔王城に居たのかさっぱり記憶に無いが、何となくカイトシェイドの金魚の糞みたいにウロチョロしていたのは覚えている。

 あのレッサー・ヴァンパイアならば自分一人でも捕らえるのは容易。

 性別が同じであるため【魅了】が効きにくいのは少し厄介だが、それであれば、この辺りの男共を根こそぎ手玉に取り、捕らえさせれば良いだけのこと。
 
 あの娘に魔王城の管理をさせればいいのだ。
 彼女はカイトシェイドの手伝いで、しょっちゅうサキュバス専用浴槽の整備をしていた姿を目撃している。

 当時は、その度に色々と難癖をつけて、虐めていたものだ。
 曰く「歩き方が気に喰わない」「掃除の仕方が雑」「返事の声がムカつく」「謝罪が遅い」
 気分次第でストレスを発散できるサンドバックとしても使い勝手の良い少女だった。

「うふふ……ヴァンパイアは趣味じゃないけど、雑用係として使うなら、女のヨロコビを調教しおしえてあげても良いわね」

 サーキュは、男性型の魔族を魅了する一方で、同じ女性型の魔族を快楽で狂わせる術も一流だ。
 ぺろり、と、その色っぽい唇を舐めると、嗜虐的な笑みを浮かべる。

 そうね……アタシ達のお風呂を整備できたら、ご褒美にオークの仔でも孕ませてあげようかしら?
 触手責めの味を覚え込ませ、触手それなしではいられない身体にしてあげようかしら?
 そしてアタシの忠実な下僕にして、カイトシェイドの粗品を切り取らせて踏み潰させようかしら?

 魔王城で仕事をしていた頃からの忠実な部下に裏切られれば、カイトシェイドのヤツも地団駄を踏むだろう。
 悔しそうに顔を歪めるカイトシェイドを想像すると、少し気分が良くなった。

 そんな邪な思いを抱えつつ、人間の姿に変身したサーキュはハポネスの街の門をくぐった。
 ーーはずだった。

「!?」

 突如、サーキュの目の前の景色が歪む。

「何だァ!?」「……おや?」「あれぇ~……?」

 目の前に現れたのは3体の魔族だ。

 ばっ、ばっ、ばっ!

 周りを見渡せば、まるで闘技場のようなスペースに強制転移させられたようだ。
 だが、それは目の前の3体の魔族も同じだったようだ。

(まさか、転移系の罠!?)

 それぞれ、手にマンドラニンジンを掴んでいる筋肉質の男、事務的な書類を持った壮年の紳士、羽ペンを握ったままの子供……彼等も一様に目を丸くしている。

 その中で、最も幼い子供がサーキュを見つめると、小さく首をかしげた。
 横長の瞳孔が、目を合わせた者を少し不安にさせる。

「……おばちゃん、誰?」

「お、おばちゃんですって!?」

 【魅了】の守備範囲外の幼さとはいえ、サキュバス・クイーンに対して、堂々と「おばちゃん」と言い放たれたことに、サーキュは衝撃を受けた。
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