71 / 124
71 勇者誕生計画!?
しおりを挟む「ねぇ、結局、この子はハポネスへ連れ帰る、って事で良いのよね?」
「ああ」
俺は、カシコちゃんの問いかけに頷いた。
「あ、ありがとうございます……」
「そりゃ、このままここに置いておいたら、お前さんの命も尊厳も危ないからな?」
ボーギルがそう言いながら優しくルシーファの頭を撫でる。そのまま号泣してしまったルシーファを慰める様子は、まるで親子のようだ。
ボーギルのヤツ、確かまだ独身とか言っていたから、また後でからかうネタにしよう。
だが、俺達の中で話はまとまったとしても、ルシーファのヤツを連れ帰るには一つクリアしておかなければいけないことがある。
俺としては、もういつでもカシコちゃんの【出戻移動】で帰れば良いんだが、どうやら人間的には、勝手に戻れば良いというものでもないらしい。
「ふーん? じゃ、どうすれば良いんだ?」
「簡単よ、そんなの。勇者や聖女が確定すれば、守護天使はその人について行くのが普通だもの。だから、カイトシェイドさん、名目だけでも『光の勇者』やってあげなさいよ」
「ああ、それがいいな」
「「えぇぇッ!?」」
思わず、俺とルシーファの声がハモる。
元・堕天使のルシーファのお告げで、魔族の俺が、スゴピカ様の加護を得た『光の勇者』をやるの?
何……その茶番……
だが、どうやら、マジでそういうことになった。
「ルシちゃん……もうちょっと大人だったら箔が出たんだけど……まぁ、私のメイク術で何とかするしかないわね」
カシコちゃんがガサガサと自分のポーチを漁りながら呟く。
……ふむ?
「なぁ、ルシーファのヤツ……成長させるか?」
「ハァッ!?」
「そ、そんな事出来るのか?」
ボーギルとカシコちゃんが目玉をひん剥いているが、一応、コイツは今、俺のサブ・ダンジョン内に居る生き物である。
多分、体内に魔力を思いっきり注ぎ込めば、数時間程度は元の姿に近い状態に出来る……と、思う。
天使に試した事は無いが、魔王城では、妖精族やインキュバスのガキから、時々『数時間だけ大人の姿にして欲しい』とせがまれたものだ。
……まぁ、滅多にやらなかったけどな。
ダンジョン・ポイントを使った正式な進化は、流石にポイントが少なすぎて無理だが、ハッタリかます程度ならいけるんじゃないかな?
「わたしは構いませんよ」
ルシーファの方も別に問題は無いらしい。
「もしかして、この背中の羽が羽毛だけじゃなくて、もう少し成長した翼になるくらいまでいけるのか?」
「本当はもう少し威厳が欲しいのよ。今だと本当に白い赤ちゃんヒヨコの羽みたいでしょ? せめて、幼鳥か若鳥くらいまで育てて欲しいわ」
二人にそう指摘されルシーファは、少し気まずそうに、背中の羽をぴよぴよと動かしているが、確かに……威厳とは縁遠い状態だ。
「……あの、成長させるなら、男性タイプと女性タイプのどちらにするんですか?」
「どういうことだ? それ?」
ルシーファ曰く、天使や堕天使には特に決まった性別が無く、本人が仕えている相手次第なのだそうだ。
相手が男を望めば男になり、女を望めば女になるらしい。
へ~? 知らなかったぜ。
あんまりホイホイ変更されるとしんどい、と言っていたが、ヤツが女の姿で居たのなんて見た事ないぞ?
ちなみに、男性タイプだと攻撃系の魔法が得意で、女性タイプだと防御系の魔法が得意。
なお、回復はどっちの姿でもいけるらしい。
「あー……だから、攻撃力重視な魔王城では常時、野郎姿だったんだな」
「ええ、魔王様のご趣味です」
あそこは『直接的な強さこそが正義』だったもんなぁ。
「この神殿、破壊するんだろ? だったら男でいいよな?」
「ダメよ!」「ダメに決まってるだろ!」
「おぉ!?」
ボーギルとカシコちゃんから同時にダメ出しされました。
0
お気に入りに追加
1,309
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる