四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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58 VS魔竜王マドラ

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「くくく……よもや貴様がこんな僻地に居ったとは……! 探したぞ、カイトシェイド!!」

 うわー……ナイスタイミングと言えばナイスタイミングなんだけど、何も魔力を使い尽くして疲れているこのタイミングに来なくても、という思いはあるな。

「おい、アルファ、ベータ、オメガ、ちょっと今回は俺を手伝え。アイツを倒すぞ」

「……ッチ、ったくよォ……」「かしこまりました、旦那様」「……楽しそうだねぇ」
 
 まぁ、4対1ならこの程度の残り魔力でも何とかなるんじゃないかなぁ?

「ネーヴェリク、これ、頼む。あ、あと折角だから、外の観戦施設の点検もやっちゃってくれないか?」

 俺は、懐から『ダンジョン・コア』を取り出すと、それをネーヴェリクに手渡す。
 少し不安気な表情をしているが、流石にこの真昼間の外でヴァンパイアを戦わせるのは気が引ける。
 マドラの奴は一撃が重いからな。

「ハイ……ご武運を、カイトシェイド様」

「シスター・ウサミン、少々お待ちください。あの魔族を片付けて来ますので、お弁当はその後でいただきますね?」

 せっかく美味しそうに作ってくれたのだから、ちゃっちゃと終わらせるか。

「へ!? ま、魔族ッ!? 回復術師であるカイトシェイド様には危険すぎますっ!!」

「大丈夫デス、シスター・ウサミン様、ウチのカイトシェイド様はお強いんデスよ?」

「えぇっ!?」

 二人が少し下がったのを見て、俺は闘技場の舞台へと降り立つ。
 すでにアルファ達はこっちへ来ているし、マドラの奴もこの三人に興味が有るのか、輝く漆黒のウロコの生えた尻尾を揺らしながら値踏みする目つきで睨み合っている。
 手にしているのは例のバトルアックスだ。

「よぉ、久しぶりだな、魔竜王マドラ」

 俺はそう言いながら、戦闘用結界を発動させた。
 これで、ヤツがどんなに暴れたとしても、外に影響はないはずだ。

「くくく……貴様だったのか、俺の邪竜眼を壊したのは……誰かと思っておったが、逆にちょうどいい。貴様が消えたせいで、魔王城は滅茶苦茶よ」

 へぇ~……ま、じいちゃんの創ったあの魔王城がコイツ等の手に負えるとは思ってなかったから、それは意外でも何でもないぜ。

「今からでも貴様の手足を捥いで、管理室に縛り付けてくれるわ!」

「出来るもんならやってみな!! ベータ、オメガ、ヤツは一撃が重い! お前たちだと、一発でも喰らったらアウトだ。遠距離からアルファの補佐をしろ! アルファは人化を解いて全力で行け!! 喉の奥に炎が見えたら顎を蹴り上げてやれ!」

 その言葉を合図に、アルファのヤツが大地を蹴る。

 おぉ、中々、素早いな。

「うおぉぉぉおぉおおッ!!」

 ガキィッッン!!

「ほほぅ、やるな、小童こわっぱッ!!」

 両腕だけ竜化したアルファの拳がマドラのバトルアックスとぶつかり合う。
 おー、真正面からあの斧を受け止めて指が無事って結構すごいな。

 あれは俺でも真似ができない。
 
 「……くっ!」

 「はははははは!!」

 マドラが楽しそうに高笑いをすると、猛然とバトルアックスを振り回す。
 流石にあの力で連撃されるとアルファでも凌ぎきれないか……

 斬ッ!!

 アルファの身体が2つに切り裂かれ、吹き飛ばされた上半身がどろり、と溶けた。

「ん?」

 だが、勝者であるはずのマドラの顔に浮かぶのは困惑の表情だ。

「……ふふふ、魔竜王にも、ボクの【幻術】は効き目があるんだねぇ?」

 どうやら、途中からマドラと戦っているアルファが幻と入れ替わっていたらしい。
 『不可視』の魔法を使っているのか、オメガの姿は見えないが、その少し幼い声が闘技場に響いた。

 ……と、同時に地面からふわふわと湧き出す黒いモヤが、俺たちの姿を形作る。
 幻惑によるデコイの作成か。

 うん、うん。
 戦闘初心者にしては、補助魔法の使い方も悪くない。

「おやおや、これは私も何かしなければいけませんね……」

「ベータは戦いは初めてか?」

「はい、このような直接的なものは……」

「別に構わないから、単純に何か力のあるモノで、あの野郎の脳天ぶん殴ってやれ」

「力ある……なるほど。かしこまりました、旦那様」

 アルファとオメガは中々の連携を見せている。
 複数のアルファが一斉にマドラに殴りかかってくるため、ヤツも少しウザがっているようだ。

 特に、最初、アルファ本人はマドラの攻撃をはじき返していたが、オメガの幻覚にはそれが出来ない。
 そのことに割とすぐ気づいたアルファは、今では回避中心に立ち回ることで、本体の識別をより困難にしているし、オメガの方でも『幻肢痛』の応用で幻覚の拳が当たった所に痛みを振り撒く工夫を凝らしているようだ。

「ええいッ! 羽虫どもが!!」
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