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54 スラムを改造しよう!
しおりを挟む「そんな……!? 明日には立ち退け、なんて言われても困ります!!」「そうだ、そうだ!」「俺たちゃ、生まれた時からこのスラムで生活してんだよ!」「テメェの都合で勝手なことをいうな!!」
スラムを改造するために足を運んだ俺たちに、その地に勝手にテントのような小屋をおっ立てて使っていた住人たちがいきり立つ。
貧民区の地価が異様に安い理由がこれである。
不法占拠というか……土地の権利を購入することは簡単なのだが、今までその地区にあばら家を勝手に作って住み着いている土着市民。彼らがもれなく付いて来るのだ。
「ここから出て、何処へ行けば良いって言うんだよ!」
「ええ、ですので、これからこちらに集合住宅を準備させていただきます」
「「「はいぃ!?」」」
俺は拳を振り上げて身勝手な権利を主張する集団に、ニッコリ笑顔でそう宣言する。
彼らとて俺の大事なダンジョン・ポイントを生み出してくれる可愛い奴らである。
無策で追い出して野垂れ死にでもされたら、もったいないがすぎるではないか!
命は大事に! ダンジョン・ポイントを生み出す命は大切に!! 一個たりとも無駄にはしないぞ、俺は。
そこ!! 貧乏性と言わないっ!!
要はアレだろ?
魔族の下級兵士用集団宿舎の人間バージョンがあればいい訳だろ?
風雨と暑さ寒さをしのげて……こいつ等の汚れ具合からみても大浴場は必須だな。まぁ、小さな子供が多いみたいだから老化防止は不要だけど、それ以外はウチの奴隷風呂と同じで良いだろう。
あ、代わりに肉体強化を付けとくか。
スラムの連中って冒険者みたいな危険を冒す職業に就く率が高いらしいし。
「この辺が良いか……『ダンジョン・クリエイト:集合住宅!』」
ずごごごごごごご……!!
「な……!?」「何だッ!?」「ま、魔法!?」
俺はダンジョン・ポイントとセーブ・エリア虫を併せて使って、一気にスラムの住民たちが移り住めるような宿舎を建設する。
口の字型5階建ての長屋式で、中央部分には住民全員が利用できる大浴場・洗濯場・炊事場を準備している。
各々の家族単位で移り住めるように、それぞれの2つの部屋とお手洗いは全部屋完備だ。
「では、こちらの部屋はどこでも自由にお使いください」
「えええ!?」「す、すげぇ……」「ほ、本当に良いんですかい、旦那!?」
いつの間にか俺の呼び名が「テメェ」から「旦那」になってるな。
「ええ、構いませんよ。それに大浴場は自由に使っていただいて結構です。温水は24時間新鮮なものが湧いていますので、いつでもどうぞ」
俺の創る風呂は魔族の間でも評判良かったから、これの整備に関しては自信がある。
「あと、この厠の中に居るスカベンジャー・スライムと、このクリーン・スライムは汚れを取ってくれる便利なスライムなので退治しないようにご注意くださいね?」
「そ、それって……結構高価なヤツじゃ……」「ぷよぷにしててかわいい~」「あはは、くすぐった~い! この子、舐めるんだね~」「あったかくてやわやわ~」
……く、クリーンスライムに舐められるって……相当汚れてるぞ、お前……
俺は、思わずそのクリーンスライムと戯れる少女達に引き攣った笑みを浮かべてしまった。
女の子がクリーンスライムに舐められるような状況を放置しとくって、人間の領主って訳が分からないな……
下級層のケアとかしないのか?
魔王城の下級魔族だって、それなりの種族特性に合わせた管理をしていたのだが……
まぁ、その汚れも風呂で落としてくれ。
若さとは新陳代謝! と、誰かが言ってたな……? サーキュだっけか?
「部屋の割り振りはご自由にお決めください。早い者勝ちでも構いませんよ?」
それを聞いた途端、俺たちを取り囲んでいた貧民区の住民たちが我先にと新しい集合住宅へ駆け出して行く。
「ひゃっほぉぉぉ!!」「かぁちゃん!! 俺、高いところが良いっ!!」「バカ! 台所に近いところが良いに決まってんだろ!」「おい、急げ急げ!!」「俺は南側が良い!」「何処だってこのテントよりマシだよ!」
結局、広場を占拠していた連中は、初日のうちにほとんどが居なくなった。
それでも動きたがらない頑固な老人達も居たが、俺が体調と老化を回復させ、メンタルを前向きにしてやったら何故か涙を流して拝み出したので、円満に集合住宅へ移っていただいた。
まったく……たかが60歳程度で「もうこんな年」などと絶望しないでいただきたい。
人間種は丁寧に生きれば120年は持つのだ。60歳など、まだまだ折り返し地点!
あと60年は搾り取るぞ、ダンジョン・ポイント!
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