四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

文字の大きさ
上 下
53 / 124

53 防衛計画を立てよう!

しおりを挟む

 ようやく空白期間が終了した朝、俺は魔族化した仲間達を集めて宣言した。

「お前たち、まず防衛施設として闘技場を創るぞ!」

「「「闘技場!?」」」「……デスか?」「でございますか?」「何考えてんだテメェ?」「……って、なぁに?」

「うん。闘技場ってのは、戦うため専用の広場だ」

 闘技場そのものを知らないオメガに説明する。「ふ~ん?」と生返事を返してくるが、多分、まだよく分かっていないだろう。まぁ、詳細を知るのは出来あがってからでも遅くはない。

「多分、あのゲドーダのヤツを倒しちゃったから、俺がここに居る事はマドラのヤツにバレたと思うんだよな。となると、多分、絶対、あの筋肉馬鹿マドラはウチへ来る!!」

 つまり、ヤツと戦うための戦闘用結界……魔王城でルシーファやシシオウが全力で戦っても周りに被害をおよばさない場所……が必須だ。

「ベータ、この街で一番土地の価格が安いところは何処だ?」

「はい、おそらく北外町の貧民区スラムが最も地価が安いかと……」

「そこって、前にシスター・ウサミンの孤児院があった辺りか?」

「はい、左様でございます」

 ええ、そうです。
 なんやかんやでシスター・ウサミンを丸め込ん……もとい、彼女達の孤児院の経営が苦しいことを良い事に、ウチの敷地内に新たな孤児院を建て、すでに幼児たち諸共こちらに引っ越して来ていただいております。

 ダンジョン・エリアを拡張した今となっては、元の位置でも良かったんだが、序盤のポイント・ブーストでは大変助かりました。
 ありがとう幼児! ごちそうさま児童! 今後も末永く長生きしろ、ポイントボーナス達よ!!
 
 おかげさまで、マンドラニンジン収穫の労働力は奴隷だけでなく子供たちも協力してくれているし、シスター・ウサミンは俺の分身体がメインで開いている回復施設しんりょうじょの手伝いまでしてくれている。
 彼らの食費などは、微々たるものなので費用対効果バツグンだ。

「あの辺りの土地を……そうだなぁ、この屋敷の敷地面積の二倍くらいの広さで買い取りはできそうか?」

「資金面では全く問題ありません」

 空白期間には、人間の通貨をゲットすべく、マンドラニンジンを売り払ったり、クリーンスライムを創って売ったり、例の接待用ダンジョンの周りに出店を出したい商人たちのために、地代を取って区画の貸し出しを行ったりしたのだ。

 土地の利用料金をせしめるなんて、ベータに言われなければ気づかなかったぜ。
 でも、あれは良いな。
 こっちは適当に土地を割り振って貸し出すだけで、ほとんど手間がかからないのに人間の通貨が自動的に入って来る。
 まるで地脈から魔力を吸い出す魔晄炉の人間通貨版みたいなシステムだ。

 ダンジョンから出てすぐの所に、武器屋や防具屋、それに魔法石の買い取り店や軽食、飲み物、回復アイテム等を売る屋台風の店が立ち並び、ウチの庭なのに結構、賑わっている。

 ダンジョンの構成も、多少、手を加え、6~8階をアンデットゾーンに、9,10階をゴブリンさん達にお願いしている。なお、10階のダンジョン・ボスはゴブローさんだ。

 瀕死ダメージを負うような事が有ったら自動的にバックヤードへ瞬間移動する代わりに、宝箱……あんまり使ってない魔道具やら魔法剣やらが入っている……が、出るように設定しているのだが、今のところまだゴブローさんが倒された事は無い。

 そして、クリーンスライムは全階層で出るようにしているが、少し数を絞ることでバランスを取らせて貰った。

 緊急時にはウチの財政の柱になって貰うので、あまり値崩れしすぎても……ね。

 この他に、ベータが主導で妖天蚕マギ・シルキーも育ててくれている。育成は順調らしく、今後は、これも収入に加わりそうなので楽しみだ。

 北外町の貧民区スラムであれば、じいちゃんの金貨を使わなくても、それらの収入源から入って来る人間の通貨だけでも十分買い取れるらしい。

「じゃ、そこをざくっと買い取って、そこに住んでいるヤツ等は別の場所に移って貰おう」

「では、不動産屋のデベロにはわたくしの方から出向きましょう」

「ああ、頼む」

 まず土地の確保はこれで良いだろう。
 権利さえ入手してしまえば、後は『ダンジョン・クリエイト』でゴリ押ししてしまえば良い。

「あ、そうだ、ネーヴェリク」

「ハイ、カイトシェイド様」

 ネーヴェリクが困ったようなハの字眉のまま、ぽやん、とした眼差しを向けて来る。
 
「オメガのヤツに軽く古代魔法文字を教えてやってくれ。多分、すぐに文字の魔力色を見分けられるようになると思うから。その内、一人でも『封魔回廊』程度の術式を組めるようにして欲しいんだ」

「ハイ、かしこまりマシた。オメガちゃん、それでは、ネーヴェリクが古代魔法文字を教えてあげるのデス!」

「うん、ありがと~」

 こうしてみると、この二人、年の離れた姉妹みたいでちょっとほっこりする。
 
「アルファ、お前は『人化』の練習な」

「……ちっ……ったく、しかたねぇな……」

 アルファの奴は鬼らしい角、手甲代わりに竜のウロコを纏ったような両腕、とかなり人間離れした外見へと進化している。
 
 ある程度の高位魔族だと『人化』と言って、人間そっくりに変化する技を身につけることができるのだ。
 魔族同士の場合だと「人間そっくり」なのは、侮蔑の対象なので、この術、魔族至上主義者には、あまり人気は無い。

 だが、人間に混じって生活した方が有利に暮らせる種族の場合は、これが使えるのと使えないのとでは生活レベルが段違いだったりするので、ある種必須技能でもあったりするのだ。

「ふぉぉぉぉぉッ!!」

「力み過ぎだ、お前。はいはい、角と腕に集中、集中!」

「えーい、ぐだぐだやかましいわッ!!」

 がんばれー。

 二人の訓練が終わる頃には、ベータが「無事に土地の権利を購入してまいりました」と、証書らしき皮用紙を持って帰ってきた。

 よし、準備は整ったぜ!
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...