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13 犯罪者奴隷を買おう!
しおりを挟む「そうか。そこまで伝わっているなら話が早い。早速、奴隷を見せてくれ」
俺がそういうと、待ってました、とばかりに奴隷商人は、俺たちを館の奥へと案内する。
「念のため確認ですが、本当に『不良在庫』で構わないのでしょうか?」
ちなみに不良在庫、というのは病気をしていたり、怪我などで身体に欠損が有ったり、年を取り過ぎている老人の事を指すらしい。
「ああ、こう見えても俺は医学を志しているから『回復魔法』や『薬作成』の実験用にしたいんだ」
実際、この手の不良在庫の使い道は人体実験用の『実験奴隷』一択だそうだ。
戦闘用や労働用……もちろん、愛玩用にも使えないから、値段も安い。
奴隷商人としても、いつあの世へ旅立たれるかわからない奴隷など、維持費もかかるし、手元に置いておくのはリスクでしかないのだろう。
その点、俺の場合はダンジョン内で『住人登録されていない者』が死んだ時は、ダンジョン・ポイントに一時ボーナスが付く。
長い目でみると、屋敷内で長生きしてくれた方が得なのだが、仮に死亡したとしても損はない。
それに、強い不満や怒りを胸に抱いたまま死んでくれれば、アンデットとして復活してくれる可能性すらあるのだ。
そんな訳で、この奴隷商人の手元に残っていた、病人・ケガ人・老人等を併せて11人を購入する事にした。内訳は女6名、男5名だ。
「あの……カイトシェイド様、こちらの方々は、購入されなくテよろしいのデショウか?」
その時、ネーヴェリクが少し離れた所で隔離されていた3人を指差した。
全員、猿ぐつわのようなモノを噛まされ、拘束されている。
それぞれが別の場所に入れ墨のようなマークが刻まれていた。
一人は、しわがれたよぼよぼの老人。
もう一人は元戦闘要員らしき右腕が欠損した筋肉質の男。
最後の一人は、顔中ボコボコだし、倒れ伏しているせいで性別もよく分からないが、身に着けている布が腰巻だけなので多分、若い男……いや、男の子供だろう。
「ああ、お嬢様、そちらは流石にお勧めできません。コイツ等は元・犯罪者です」
聞けば、老人は貴族に仕えていた元執事だそうだが、主の貴族が犯罪に手を染め、投獄。お家取り潰しで仕事を失い路頭に迷ってしまったらしい。
後に、その取り潰しの原因を暴いた別の貴族家の主を逆恨み。
結局、その相手方を詐術と毒を用いて殺害してしまったのだそうだ。
次に、右腕の無い男は殺人鬼。
なんでも、冒険者のクランと呼ばれる集団同士の抗争とやらで、相手方40名を殺害。そのせいで右手を失ったようだが、その戦闘能力は中級の魔族並と言って良い。
腕を失ってなお、ネーヴェリクを射殺しそうな瞳で鼻先に皺をつけて睨みつける様は、まさに狂犬のそれだ。
そしてフルボッコにされている子供は虚言癖のある頭のオカシイ餓鬼で自分の主が寝静まった際に、手にかけてしまったにもかかわらず、偶然生き延びたのだとか。
通常、奴隷は【奴隷紋】と呼ばれる魔法の紋章を身体に刻まれ、主に重大な害を及ぼす行為を取った際には、その魔法の力で命を奪われるはずなのだが、ごく稀に生来魔法耐性の高い者は、その呪いを打ち消してしまうことがある。
「仮に傷が癒えたとしても、行動や言動は狂人のそれ、とても手に負えるモノではありません」
「いや、構わない。この三人も購入する」
特にあのじーさんは元執事ってことだし、それなりに常識もありそうだ。
魔族の俺たちに人間達が使う程度の毒は効かないから、大した危険は無い。
「危険です! こやつ等は【奴隷紋】も効きづらく、旦那様に害を及ぼす可能性がございます!」
ダンジョン内であれば中級魔族レベルの戦闘力は驚異ではないし、じーさんやフルボッコくんは明らかに非戦闘員。
「問題無い」
「で、ですが!?」
「……くどいぞ」
「いえ、申し訳ございません! かしこまりました、こちらの三人もお売りいたします」
俺が、少しワザとらしく不愉快そうに顔を歪めると、平身低頭な態度でお辞儀を繰り返した。
想定よりも安く大量に奴隷を仕入れられたので、俺としては万々歳である。
「サービスとして14名の一週間分の食糧と荷馬車をお付けいたします。さ、旦那様、それでは奴隷たちとの契約魔法を使わせていただきますが……一部効きの悪い者が居ることは重々承知おきください」
「ああ、もちろん。……お前に迷惑をかける真似はしないさ」
「お心遣い、ありがとうございます!」
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