四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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07 人間の街、ハポネス

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「ん? あ、あれ……カイトシェイド様……ここ、どこデスか?」

「ああ、ネーヴェリク、起きたか。ここはな……人間の街だ」

「に、人間ノ街!?」
 
 がばッ!

 ベッドから飛び起きたネーヴェリクは、不思議そうに近くの窓からあたりをキョロキョロと見まわしている。
 街外れだから人影は無いが、それでも見慣れない植物の生い茂る庭は、彼女にとって珍しいのだろう。

 そう、俺が魔王城から決別し【瞬間移動】した先は、ハポネス……という名前の人間の街だったのだ。
 どうやら、ここは元の魔王城からだいぶ西南に移動した島国であるらしい。

 見た目が人間とほとんど変わらない俺とネーヴェリクが身をひそめるには、うってつけと言って良かった。

「そうだ。俺は此処にダンジョンを創ることにした」

「に、人間の街の中に、デスか……!?」

「ああ」

 そこで、俺は、じいちゃんから受け継いだ宝石類を売り払い、使われていない街外れの屋敷を購入すると、早速『ダンジョン・クリエイト』を発動させたのだ。

 俺の能力上、何は無くとも、まずは『ダンジョン』を作り上げなければ話にならない。

 そもそも『ダンジョン』とは、簡単にいうと一種の空間支配だ。

 『新規作成』を行うと、『コア』と呼ばれる握りこぶし大の宝玉が発生する。
 その核に『主』を設定すると、その『主』がコアから「ダンジョン」と呼ばれる空間が広がる。
 そして、その陣地の中に『主』が存在している限り、時間経過と共に、徐々に『ダンジョン値』と呼ばれるポイントが加算されるのだ。

 ま、それ以外にもポイントが加算される方法がいくつかあるので、是非とも効率的に稼いでいきたいところだ。

 そして、そのポイントを消費する事で、ダンジョンを拡張したり、罠を設置したり、変形させたりする事が出来るのだ。

 ただし、その核を壊されるか、核を『ダンジョン』の敷地内から持ち出されてしまうと、『ダンジョン』は自動的に消滅してしまう。

 まだ、創りたてほやほやな赤ちゃんダンジョンなので、広さはギリギリこの屋敷内。

「もちろん、この『ダンジョン』の主は俺だ」
 
 そして俺の各種特殊能力が使える範囲が、この『ダンジョン内』なのだ。

「デハ、今、このダンジョンの住人は、カイトシェイド様と、ネーヴェリクだけ……デスか?」

「まぁ、そうなるな。でも、俺の『ダンジョン』があれば、お前の日焼けダメージも『無効化』できるだろ?」

「?? え? えと? ハ、ハイ? それは、ありがとうございマス……?」

 ネーヴェリクがイマイチ状況をのみ込めていない様子で、その浅黄色の瞳を瞬かせる。

 ネーヴェリクのヤツは「レッサー・ヴァンパイア」だ。

 移動先のこの街が、偶然、日が落ちたばかりの夕方だったから問題無かったが、彼女の白い肌は直射日光に酷く弱い。人間に伝わる物語みたいな「日光を浴びると灰になって死亡する」ほど弱くは無いが、長く日の光に当たると、酷い火傷を負ってしまう。
 ヴァンパイア種は育てば魔族の中でもかなり強い種族なんだが……
 いかんせん、低レベルのうちは「日光」だの「銀の武器」だの「聖水」だの……とにかく弱点が多い。

 この屋敷を中心に、『ダンジョンの範囲』を人間の街側に広げて行けば、彼女が昼間に町をうろついたとしても、火傷くらいは防ぐことができる。

 そのため、俺だけでなく、俺たちにとっても「ダンジョン」は必須だといえるのだ。
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