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04 四天王最弱、反旗を翻す
しおりを挟むコア・ルームで目覚めた俺は、『接待用の分身体』が、シシオウによって、瞬殺された事を把握する。
膨大な業務を同時進行でこなすために、『分身体』一個体へ割り振った魔力量は決して多くはない。
考えてみれば、それは当然の事。
第一、「お茶くみ」や「トイレ掃除」のような雑用までが俺の業務。
当然、そんな軽作業担当の『分身体』に満遍なく力を注ぐくらいなら、もう一人『分身体』を用意して、作業を分担させたくなるのが人情というもの。
結局、一体あたりの魔力配分は小さくなり、紙装甲上等!
筋力など、掃除が出来れば十分!
……そんな、柔らかくて、ひ弱な『分身体』が、やたらと増える事になるのだ。
しかし、今回ばかりは、『接待用の分身体』を紙装甲にしてしまった事に後悔が噴き出す。
俺が瞬殺された後、あの場に居たネーヴェリクは……!?
俺は『分身体』に意識を飛ばすことを忘れ、本体のまま時空袋を引っ掴むと、謁見室へとダンジョン内瞬間移動をする。
俺の本体が魔王城を管理するための『コア・ルーム』から出てしまうと、全ての『分身体』の活動が停止するのだが、知った事か!!
いくらネーヴェリクがアンデット族のヴァンパイアとはいっても、サイコロステーキ並に切り刻まれては、流石に命が危ない!
謁見室に戻った俺の目に飛び込んで来たのは、腹部を大きく切り裂かれ、右腕と右足を失い、散々殴られたような痕のあるネーヴェリクが部屋の片隅でぐったりと横たわっている姿だった。
「ネーヴェリク!」
俺は、彼女に駆け寄ると、急いで時空袋の中からアンデット用の蘇生薬を取り出すと、彼女の口に含ませ、再生魔法を唱える。
「……ぅ、……ぁ?」
よし! 何とか、彼女の命を繋ぐことは出来たようだ。
「喋るな、ネーヴェリク! 今、治してやるから!」
ここがダンジョン内……そして、彼女がヴァンパイアでなければ、恐らく助からなかった事だろう。
しかし……この謁見室の中に居る誰もが、俺たちの事になど注目をしていない。
部屋の中央部では、俺が日々整備していたおかげで、無事に発動している決闘用結界の中で、あのケモミミ男のシシオウと四天王筆頭・陰険メガネのルシーファが、互角の戦いを繰り広げていたのだから。
すでに、魔龍族のマドラはノックアウトされ、紅一点のサーキュはリタイアしたのか、ダメージを受けたらしき腹部を押さえて観戦モードだ。
「すげぇ、流石ルシーファ様……!」「いや、あの、シシオウ様、だっけ? 異国で魔王を名乗るだけあるぜ!」「ああ、あのマドラ様とサーキュ様を倒して、まだあんなに動けるんだろ!?」「一応、カイトシェイド様だって倒してるぜ」「おいおい、アレをカウントに入れるなよ」「あんな雑用係、居ない方がマシだろ」「新たな四天王の誕生だ!」「シシオウ様万歳! 魔王様万歳!!」
ざわざわと興奮し、盛り上がる魔族達の言葉に、俺は、怒りとは別の……もっと冷たい感情が広がるのを自覚した。
こいつらは……いや、ここに居る誰もが、考えた事すらないのだろう。
あの結界の起動にどれだけ繊細な魔力操作が必要で、維持にはアホほどの魔力量を補充しておかねばならず、それをいつでも・誰でも使えるようにして準備しておくことが、いかに労力を使うのかということを。
「ふむ、中々……見事な戦いだ」
魔王は満足気に、決闘用結界を解除する命呪を飛ばした。
「よかろう。シシオウ、そなたは今後、余の四天王を名乗るが良い。そして、カイトシェイドよ。先代魔王様の顔を立て、今日まで面倒をみてやったが、貴様にはほとほと愛想が尽きた」
「ええ、魔王様、その意見には俺も同感です」
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