四天王最弱の男、最強ダンジョンを創る〜俺を追放した魔王から戻ってこいと言われたけど新たなダンジョン創りが楽しいし、知らんがな〜

伊坂 枕

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01 ヤツは四天王でも最弱

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「お帰りなさいませ、魔王様! 我等、魔王軍一同、主の帰りを心待ちにしておりました!」


 玉座にふんぞり返る角の生えた長髪の美丈夫に対し、四天王筆頭、堕天使のルシーファが声をかけ、それに合わせ、一斉に跪いて頭を垂れる。
 それは俺、――魔王軍四天王の一人であるカイトシェイドも例外ではない。

 魔王に謁見できる上位の魔族全員が一様に跪く姿は、圧巻だ。
 
「ふむ、良い。面を上げよ」

 と、そんな魔王の隣に、何やら不機嫌そうな表情のケモミミ男が立っている。引き締まった体つきは四天王№2である魔龍族のマドラにも引けを取っていない。
 和服に似たこの辺りではあまり見かけない衣を乱暴に気崩している。

「魔王様? そちらの方はどなたですの?」

 四天王の紅一点、サキュバス・クイーンのサーキュがその整った眉をすこし愉快そうに持ち上げて、ケモミミ男を見据える。

「ああ、一騎打ちで戦った東の元・魔王、シシオウだ。余が勝った故、部下にするために連れて来た」

 ……ざわり。

 どうやら、ウチの魔王様は他所の魔王を部下に加えるつもりらしい。
 チラッと横を見ると、他の四天王達は、舌なめずりしながらシシオウと呼ばれた元・魔王を品定めしているようだ。

「……くくく、それではシシオウ殿の力……我等にも教えていただいても構いませんかな?」

 筋肉自慢のマドラがふたつに割れた舌で自らの唇を舐めながら好戦的な笑みを浮かべる。

「そうだな。余もシシオウとそなた等の強さを見極めたい。シシオウよ、余の四天王と戦え」

 しかし、シシオウと呼ばれた男は、その言葉に、鼻の上に皺を作って不機嫌そうな顔をすると、俺を指差した。



「四天王じゃと? 一匹、弱すぎる小粒が混ざっておるようじゃが?」



 その呆れた様子にクスクスと笑い声が漏れ聞こえて来た。

 ……そう。俺のあだ名は『四天王最弱』『四天王の雑用係』『魔王城の掃除夫』
 かなり不名誉なあだ名で呼ばれている妖魔族の男だ。
 理由はその能力。

 俺は先代魔王の孫、ということもあり、その先代のスキル「ダンジョン・クリエイト」を引き継いでいる。

 死んだじいちゃんが創り上げた、最高ダンジョン『魔王城』
 ……そして、それを管理できる能力である「ダンジョン・クリエイト」

 この能力、実はなかなかレアらしく、俺以外にこの魔王城内で「ダンジョン・クリエイト」を扱える魔族は居ない。

 結局、ここ『魔王城』の維持・管理・整備などの雑務が、全て俺の両肩にのしかかってきている。

 この脳筋魔王にしろ、他の四天王共にしろ、戦闘力だの戦術だのといったスキルは無駄に豊富なくせに、生活能力が無さ過ぎるのだ。

 おかげで、俺の業務の中にヤツ等の衣・食・住の管理サービスまで組み込まれているのは「解せぬ」としか言いようがない。

 この謁見中の今でも、数百体以上の俺の『分身体』が魔王城のそこかしこで、罠の調整をしたり、魔力水路の掃除をしたり、ダンジョンに勝手に住み着くモンスターの一種である『セーブ・エリア虫』を駆除したり、奴らの汚した服を洗ったり、食事の準備をしたり……あらゆる雑用をこなしている。

 もちろん、ウチの城内では、俺が戦闘向きではないことなど周知の事実。
 
 ……なのだが、外部からの来訪者から、こうもハッキリと戦力外を通知されると、多少モヤモヤするものがある。

「ち、ちがいマス!!」

 その時、俺の後ろから、聞きなれた少女の声が響き渡った。
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