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4年目の恋人(年の差/生徒×教師/ハピエン/8月10日ハートの日作品)
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「せんせ~せんせ~!これあげる🫰」
そう言って取り出した生徒の右手を見ると人差し指と親指がクロスしただけで何も持っていなかった。
「……?」
「え~?先生もしかして指ハート知らない?」
不服そうに頬を膨らませるその生徒は グイッと私の目の前まで腕を伸ばして"指ハート"と言った。
なるほど。確かに親指と人差し指のクロスした形がハートに見えなくもないな
「ああ、ありがとうございます。お気持ち頂きますね」
指先のハートを両手で包み込んで微笑むと、その生徒はポカンとした顔で数秒 私の手と顔を見比べたかと思えば声を出して笑い始めた。
「マジかwそう来るとは思わなかったわ!こっちもあげるから 俺の気持ち もらってね🫰」
左手でも指ハートを作って私の頬へ「ちゅ」と言って触れさせるとその指はすぐに離れた。
「……!あ、りがとうございます。君は顔に似合わず可愛らしい事をするんですね」
僅かな驚きに頬を手で抑えながら素直な感想を述べると、その生徒はニカッと元気な笑顔を浮かべてから廊下をキョロキョロと見回した。
「どうしまし……?!」
突然手が伸びて来て ドンッ と壁に手を着くと いつもとは違う大人びた表情で 少しだけ色気を帯びた声を出した。
「先生、俺 卒業したらあんたに告白しに来るから 気持ちもらってよ」
このドキドキと高鳴る胸は、壁ドンされた事による驚きなのか いつもと違う表情で告白の予告をされたからなのか。なんにせよ、生徒にこんな胸の高鳴りを感じるなんて良くないな。
「君はいつまでも私の"大切な生徒"ですよ」
牽制のために落ち着いてそう言うと、ほんの少し眉間に皺を寄せた彼は 耳元に顔を寄せ「そんな赤い顔して言われると誘われてるみたいだよ」と言って耳に掠めるだけの口付けをしてから離れた。
「─ッ!」
慌ててそんなつもりは無いと反応しようと口を開こうとしたものの、彼の人差し指が当てられて何も言うことは出来なかった。
「しー。ねぇ先生好きだよ。」
少しだけ目線が上の彼を見上げると、楽しげな顔で言葉を続けた。
「俺、絶対諦めないから。 卒業するまでに俺の事好きって思わせるよ。それでもダメなら 何回でもアタックする。だから 俺の事少しだけ意識しといて」
まったく、困った生徒だ。いきなりハートをプレゼントして来るなんて……。
不覚にもときめいてしまったみたいだ。
「……わかりました。なら、今日からテストは毎回 全教科満点で卒業しなさい。それが出来たら考えてあげます」
彼の成績は平均より少し上程度。今まで全教科満点なんて事は無かったのだ。きっと諦めるだろう。
「マジで?本気で考えてくれる?」
「ええ。本当にちゃんと考えてあげます」
とりあえずは考えるだけですが。
なんて思っていたはずなのに……卒業まであと一月になった今、全教科満点な上に有名大学に合格までした彼の気持ちに早く応えたくて仕方なくなるほど彼に惹かれていた。
「ねぇ先生、本当はもう俺の事すげえ好きでしょ?」
「何言ってるんですか?卒業したら考えてあげるって言っただけですよ。好きになんて……ッ」
誰も居ない放課後の教室で 彼に背後から抱きしめられて、思わず身体を跳ねさせた。
「嘘つき。耳まで真っ赤だよせんせ」
耳元で囁かれる声は、半年前よりも低く艶のある響きで。早く離れなければダメだと思うのに いつまでもこの温もりに包まれて居たいと思っている私がいた。
「……大人を揶揄うものではありませんよ。離して 下さい 」
声が僅かに震えるのを抑えながら感情を殺して頼むと、彼はあっさりと手を離してしまった。
「はーい」
「……ぁ……」
名残惜しさから微かに漏れた声は静かな室内で寂しげに響いた。
「ふふ 続きは卒業式の日ね」
彼は満足そうに微笑んで帰って行った。
「卒業したら もうこうして会えなくなるんですね。それはそれで……」
寂しいな。彼が1年の頃はまさかこんなにも彼に惹かれる日が来るなんて思いもしなかった。もっと 色んな彼の表情を良く覚えておけば良かった。3年間も同じクラスの生徒だったのに。最後の半年しか彼を見て居なかった。今思えばあの時も、あの時だって、彼はアピールしていたのに。ただ人懐っこい生徒だとしか思っていなかった当時の自分を怒ってやりたい。
「卒業したよ、先生」
「ええ、おめでとうございます」
「俺、全教科満点で有名大学にも受かったし、もう高校生じゃ無くなったよ」
「……まだ4月までは高校生で、私の生徒です」
「それはズルくね?まぁいいけど。俺、先生の事 1年の頃からずっと好きだよ。優しくて、真面目で、ちょっと抜けてて、笑った時のえくぼとかすげえ可愛くて、どんだけ下らない事でも真剣に対応してくれるのとか超好き。本当に、好きだよ先生。真剣に付き合って下さい」
右手を伸ばして深く頭を下げる彼の手を握り、手の甲に軽く唇を落とした。
「4月からでも良いですか?我慢出来ます?」
少し照れ臭くて 冗談めかしく返事をすると、彼は嬉しそうにニカッと笑って、ボロボロと大粒の涙を流しながら私を抱きしめた。
「3年我慢したんだ、あと少しくらい我慢できるよ!」
+ + +
彼の居ない新入生だらけの学校は何となく 寂しい。
だけど、家に帰れば同じ家に彼も帰ってくると思えば苦ではないのだ。
「あ、おかえり先生」
「ただいま 攻めくん」
「へへ、なんか良いね、同じ家に帰るのって付き合ってる感じする」
「ええ。交際してますからね」
嬉しそうに 幸せそうに話す彼に擦り寄ると 肩に顔を乗せて一息ついた。
「受けさん 4月になってからのデレが凄すぎて脳がバグりそうなんだけど?」
「そうですか?私は何も変わってないですよ?」
身体を起こして彼の手に触れながら小首を傾げると、少し困った様に笑いながら「無自覚なの?」と言われた。何の事がも分からなくて「私の行動 何か変ですか?やめた方がいい事があったら教えて下さい気をつけますので」と指先を絡めながら握りしめてお願いした。
「いえ、めちゃくちゃ可愛いだけで変じゃないです!むしろどんどんお願いします」
何をお願いされてるのか分からないが、とりあえず私の行動が不快な訳では無いらしい。
「ねぇ受けさん、ちゅーしてもいい?」
先程までの犬の様に可愛い生徒だった彼の雰囲気が大人なそれに変わった。
正式につい会い初めて3ヶ月、何度か唇を重ねてはいるものの 未だに確認を取る彼が愛おしくて 私から顔を寄せるとしっとりと唇が重なった。
「攻めくん 大好きです」
「俺も受けさんが大好き」
数ヶ月後の初めて肌を重ねた翌朝、彼は指ハートを作って私に「これあげる」と言った。
「ふふ、ありがとうございます」
昔の事を思い出しながら両手で包み込むと、手の中にコロンと何かが落ちてきた。
「!これ、どうしたんですか?」
手の中の物を落とさぬ様に気をつけながら中を見ると、銀色に光るリングが入っていた。
「安物だけど、ペアリング買ったんだ。付けてくれる?」
彼の手をよく見ると 同じリングが左手の薬指に着いていて、涙を流しながら頷くと 私の手の中のリングが左手の薬指に移動して 唇には優しい温もりが触れた。
言葉にならぬほど幸せな朝の始まりだった。
そう言って取り出した生徒の右手を見ると人差し指と親指がクロスしただけで何も持っていなかった。
「……?」
「え~?先生もしかして指ハート知らない?」
不服そうに頬を膨らませるその生徒は グイッと私の目の前まで腕を伸ばして"指ハート"と言った。
なるほど。確かに親指と人差し指のクロスした形がハートに見えなくもないな
「ああ、ありがとうございます。お気持ち頂きますね」
指先のハートを両手で包み込んで微笑むと、その生徒はポカンとした顔で数秒 私の手と顔を見比べたかと思えば声を出して笑い始めた。
「マジかwそう来るとは思わなかったわ!こっちもあげるから 俺の気持ち もらってね🫰」
左手でも指ハートを作って私の頬へ「ちゅ」と言って触れさせるとその指はすぐに離れた。
「……!あ、りがとうございます。君は顔に似合わず可愛らしい事をするんですね」
僅かな驚きに頬を手で抑えながら素直な感想を述べると、その生徒はニカッと元気な笑顔を浮かべてから廊下をキョロキョロと見回した。
「どうしまし……?!」
突然手が伸びて来て ドンッ と壁に手を着くと いつもとは違う大人びた表情で 少しだけ色気を帯びた声を出した。
「先生、俺 卒業したらあんたに告白しに来るから 気持ちもらってよ」
このドキドキと高鳴る胸は、壁ドンされた事による驚きなのか いつもと違う表情で告白の予告をされたからなのか。なんにせよ、生徒にこんな胸の高鳴りを感じるなんて良くないな。
「君はいつまでも私の"大切な生徒"ですよ」
牽制のために落ち着いてそう言うと、ほんの少し眉間に皺を寄せた彼は 耳元に顔を寄せ「そんな赤い顔して言われると誘われてるみたいだよ」と言って耳に掠めるだけの口付けをしてから離れた。
「─ッ!」
慌ててそんなつもりは無いと反応しようと口を開こうとしたものの、彼の人差し指が当てられて何も言うことは出来なかった。
「しー。ねぇ先生好きだよ。」
少しだけ目線が上の彼を見上げると、楽しげな顔で言葉を続けた。
「俺、絶対諦めないから。 卒業するまでに俺の事好きって思わせるよ。それでもダメなら 何回でもアタックする。だから 俺の事少しだけ意識しといて」
まったく、困った生徒だ。いきなりハートをプレゼントして来るなんて……。
不覚にもときめいてしまったみたいだ。
「……わかりました。なら、今日からテストは毎回 全教科満点で卒業しなさい。それが出来たら考えてあげます」
彼の成績は平均より少し上程度。今まで全教科満点なんて事は無かったのだ。きっと諦めるだろう。
「マジで?本気で考えてくれる?」
「ええ。本当にちゃんと考えてあげます」
とりあえずは考えるだけですが。
なんて思っていたはずなのに……卒業まであと一月になった今、全教科満点な上に有名大学に合格までした彼の気持ちに早く応えたくて仕方なくなるほど彼に惹かれていた。
「ねぇ先生、本当はもう俺の事すげえ好きでしょ?」
「何言ってるんですか?卒業したら考えてあげるって言っただけですよ。好きになんて……ッ」
誰も居ない放課後の教室で 彼に背後から抱きしめられて、思わず身体を跳ねさせた。
「嘘つき。耳まで真っ赤だよせんせ」
耳元で囁かれる声は、半年前よりも低く艶のある響きで。早く離れなければダメだと思うのに いつまでもこの温もりに包まれて居たいと思っている私がいた。
「……大人を揶揄うものではありませんよ。離して 下さい 」
声が僅かに震えるのを抑えながら感情を殺して頼むと、彼はあっさりと手を離してしまった。
「はーい」
「……ぁ……」
名残惜しさから微かに漏れた声は静かな室内で寂しげに響いた。
「ふふ 続きは卒業式の日ね」
彼は満足そうに微笑んで帰って行った。
「卒業したら もうこうして会えなくなるんですね。それはそれで……」
寂しいな。彼が1年の頃はまさかこんなにも彼に惹かれる日が来るなんて思いもしなかった。もっと 色んな彼の表情を良く覚えておけば良かった。3年間も同じクラスの生徒だったのに。最後の半年しか彼を見て居なかった。今思えばあの時も、あの時だって、彼はアピールしていたのに。ただ人懐っこい生徒だとしか思っていなかった当時の自分を怒ってやりたい。
「卒業したよ、先生」
「ええ、おめでとうございます」
「俺、全教科満点で有名大学にも受かったし、もう高校生じゃ無くなったよ」
「……まだ4月までは高校生で、私の生徒です」
「それはズルくね?まぁいいけど。俺、先生の事 1年の頃からずっと好きだよ。優しくて、真面目で、ちょっと抜けてて、笑った時のえくぼとかすげえ可愛くて、どんだけ下らない事でも真剣に対応してくれるのとか超好き。本当に、好きだよ先生。真剣に付き合って下さい」
右手を伸ばして深く頭を下げる彼の手を握り、手の甲に軽く唇を落とした。
「4月からでも良いですか?我慢出来ます?」
少し照れ臭くて 冗談めかしく返事をすると、彼は嬉しそうにニカッと笑って、ボロボロと大粒の涙を流しながら私を抱きしめた。
「3年我慢したんだ、あと少しくらい我慢できるよ!」
+ + +
彼の居ない新入生だらけの学校は何となく 寂しい。
だけど、家に帰れば同じ家に彼も帰ってくると思えば苦ではないのだ。
「あ、おかえり先生」
「ただいま 攻めくん」
「へへ、なんか良いね、同じ家に帰るのって付き合ってる感じする」
「ええ。交際してますからね」
嬉しそうに 幸せそうに話す彼に擦り寄ると 肩に顔を乗せて一息ついた。
「受けさん 4月になってからのデレが凄すぎて脳がバグりそうなんだけど?」
「そうですか?私は何も変わってないですよ?」
身体を起こして彼の手に触れながら小首を傾げると、少し困った様に笑いながら「無自覚なの?」と言われた。何の事がも分からなくて「私の行動 何か変ですか?やめた方がいい事があったら教えて下さい気をつけますので」と指先を絡めながら握りしめてお願いした。
「いえ、めちゃくちゃ可愛いだけで変じゃないです!むしろどんどんお願いします」
何をお願いされてるのか分からないが、とりあえず私の行動が不快な訳では無いらしい。
「ねぇ受けさん、ちゅーしてもいい?」
先程までの犬の様に可愛い生徒だった彼の雰囲気が大人なそれに変わった。
正式につい会い初めて3ヶ月、何度か唇を重ねてはいるものの 未だに確認を取る彼が愛おしくて 私から顔を寄せるとしっとりと唇が重なった。
「攻めくん 大好きです」
「俺も受けさんが大好き」
数ヶ月後の初めて肌を重ねた翌朝、彼は指ハートを作って私に「これあげる」と言った。
「ふふ、ありがとうございます」
昔の事を思い出しながら両手で包み込むと、手の中にコロンと何かが落ちてきた。
「!これ、どうしたんですか?」
手の中の物を落とさぬ様に気をつけながら中を見ると、銀色に光るリングが入っていた。
「安物だけど、ペアリング買ったんだ。付けてくれる?」
彼の手をよく見ると 同じリングが左手の薬指に着いていて、涙を流しながら頷くと 私の手の中のリングが左手の薬指に移動して 唇には優しい温もりが触れた。
言葉にならぬほど幸せな朝の始まりだった。
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