SS置き場 (ツイノベ /ネタ書き/短編)

紫陽さらり

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☆無自覚な恋(片想い/同級生)

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 晴天の日差しにじわりと汗ばむ体育の授業中 佐藤の首筋に流れる一筋の汗が 何故か俺の視線を釘付けにさせている。

「あちー!今日サッカーとか暑すぎねぇ?」
「うん暑すぎ!アイス食べた~い」

 谷口が佐藤の肩に腕を回して 気だるげに文句を言ってる横で 俺は内心『佐藤に触るな』と引き剥がしたい衝動を抑えながら 「暑いんだったらそんなくっつくなよ。見てるこっちがあっちぃーわ!」と言いながら谷口を小突いた。

 いつも通りの距離感なのに 何となくモヤモヤして心が重い。

「あ、帰りに3ワンアイス食べに行かない?俺チョコミント食いてぇ」
「いーよー!僕はパチパチミント!兎澤は?行くよね?」
「佐藤が行くなら俺も行く。俺は……コーヒーフロートかな」

 楽しそうな笑顔を俺に向けてくれるだけで、俺だけを見つめてくれるだけで こんなにも心が軽くなるのは何だろう?

「俺水道で汗流してから行くわ!先更衣室行ってて」

 溌剌とした笑顔で谷口が去っていくと、佐藤と2人 肩を並べて更衣室へ向かった。

「汗ふきシート持ってるけど兎澤も使う?」

 体操服を脱いで半裸の俺に差し出されたボディーシートを1枚もらって汗を拭き取る。

「兎澤ってさ、筋トレとかしてる?」

 じっくり俺を見つめる佐藤が不思議そうに訪ねてくる

「ん?あぁ、最近な」
「僕も頑張ってるのに腹筋割れないんだよなぁ」

 体操服を脱いだ佐藤は汗を拭きながら腹部をゆっくりとさすって、悲しそうにつぶやいた。

「佐藤はそれでもいいんじゃない?触り心地は良さそうじゃん」
「何それ?腹筋割れてる方が触り心地良さそうだよ」
「触ってみる?」

 少しだけ腹筋に力を入れて、佐藤の手を腹筋まで持ってくる。
 ほんのり汗ばんだ指先が俺の腹をおずおずと這う。

「わぁー……カチカチだ。すごっ、かたっ……いいなぁ、かっこいいなぁ」

 遠慮がちに触れる指も、うっとりとした顔で呟く佐藤の表情も何だか酷く艶めかしく思えて、心臓が破裂しそうだ。

「おっ?!兎澤の腹筋すげぇじゃん!うわ、かってぇ!」
「ゔっ、いきなり何すんだお前……」
「佐藤は…うん、可愛いな!」
「なんだよそれ!どうせ僕には腹筋なんかないですよーだ!」

 谷口が遅れて更衣室に入ってきた瞬間、俺の腹部に軽いパンチをして驚いた後に 佐藤を眺めて手を伸ばした。何となくホッとしながらも、佐藤の腹に触れようとしてる谷口の事が許せなくて、佐藤にYシャツをバサッとかぶせた。

「ふざけてっと時間なくなるぞ。お前ら早く着替えろよ」
「ほーい!怒んないでよママー」
「ママじゃねぇ!」

 あとほんの少しだけ、佐藤を独占したかったような これで良かったようなこの不思議な気持ちに名前を付けるとしたら、これは何なんだろう。
 
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