SS置き場 (ツイノベ /ネタ書き/短編)

☆愛しの兎澤くん(片想い/同級生)

　彼は窓際の後ろから2番目の席、僕の席は真ん中の一番後ろ。
　僕と彼の間には一列あって、いつもひっそりと斜め後ろから彼を見つめてた。

　隣の女子と楽しげに話してたり 後の奴と笑ってるのを羨ましいって思ってたんだ。彼は別段かっこいい訳じゃないのに彼から目が離せなくなってて、気付けば好きになってた。

　だけど、この学校は3年間クラス替えも席替え無い。彼はノンケだから、僕みたいなパン·セクシャルなんて理解できないだろうと思って……バレないように1年の頃は彼を想うだけで我慢した。

　2年になる頃には 彼と毎日L!NEするほど仲良くなっていた

「佐藤が女子だったらなぁ」

　俺の前髪を人束持ち上げて唐突に言うもんだから 狼狽えながらも鬱陶しそうに手を払いのけた。

「は？え、なんだよいきなり」
「昨日悠晴が彼女と居るの見てさ～俺も彼女欲しい～ってなったわ」
「あー。悠晴モテるもんな」

　僕が女だったら、か。
　ちょっと キチーなぁ……哀しくなりながら 眼鏡を外してさりげなく目元を拭う。

「待って 佐藤眼鏡外してる時薄目で見れば可愛くない？やべ 俺ワンチャン付き合えるわ～」

　前の席に座っていた谷口が僕を見ながら驚きの声を上げてから軽口を言って大袈裟に抱き締めてくる。

「ちょ、は？薄目ってなんだよ 絶対褒めて無いよねそれ」

　すりすりと頬を寄せてくる谷口を押し返しながら言うと、兎澤も谷口を引き剥す手伝いをしてくれた。

「おいぐっさん、佐藤は眼鏡かけてても可愛いだろ」
「兎澤って佐藤大好きだよな」

　ゲラゲラと笑いながら「お前ら付き合っちゃえよ」と言う谷口の言葉を聞き流しながら 出来たらしてるよ と心の中で悪態をついた。

「男に可愛いってなんだよ 僕は眼鏡イケメンなの！」
「佐藤、現実を見ろイケメンからはかけ離れてるぞ」
「眼鏡かけてても佐藤は綺麗系だよな。俺は好き」
「化粧したら女子になれるぜ佐藤！」

　軽口を返した瞬間 谷口がスマホのカメラを僕に向けて写真を撮った。

「わっ！ いきなり撮んないでよ」
「ほれ！佐藤かわちぃ～」

　画面には ほんのり桜色に染った頬を膨らませ 怒ったふりをしながらも乙女のように兎澤を見てる俺が居た。

「やーぐーち～！消せよそれ！」
「おい、ぐっさん佐藤嫌がってんだからやめよろ」

　兎澤は谷口からスマホを奪うとササッと操作して画像を消してくれた。

「あ！そんなことよりさ、昨日のアプデの後 佐藤ガチャ引いた？」
「え、ああ、爆死したー兎澤は？」

　さりげなく隣に座って 肩を触れ合わせてゲームしてる その距離はゼロセンチ。

　気の合う男友達それ以上でも以下でも無くて 付かず離れずでいいと思ってたハズなのに、最近は少し虚しい。
　僕から行かなきゃ この距離は変わらないってわかってるのに 動けない意気地無しな僕は 今日も心の中で君が好きだと叫んでる。