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♡俺だけの瞳に映れば良い(兄弟BL/タヒネタ/ 色情霊/メリバ)
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「『もうしにたい』 わざわざ そんな事言われたら止めて貰えると思ってるの? 逝ってどうにかなると本気で思ってるなら勝手にすりゃいいじゃん。残された奴に辛さを押し付けて自分だけ楽になるならなればいいじゃん。お前を好きな俺の 生きてて欲しいって気持ちも何もかも抱えて……俺も連れて逝けよ」
そう言って俺を叱ってくれた兄が、今日事故で息を引き取った。
もう俺を叱ってくれる人はこの世に存在しないのだと思うと何だか酷く虚しくて淋しくて苦しい。何もやる気が出なくて彼の後を追いたくなってしまう。
だけど、俺にはどうしても兄がまだ生きてる様に思えて仕方ないんだ。
だって
兄は今でも、俺の目の前で笑っているから。
最初は俺の幻覚だと思った。兄の居ない世界なんて悲しすぎて 俺の頭が可笑しくなったんだって思った。
しかし まだ幼い妹が いつものように兄に手を伸ばして微笑んでる姿は 本物だった。
義母さんは妹が何も無い空間に手を伸ばしてニコニコしてる姿を不思議そうにしていたけど、俺には変顔しながらいつものように妹をあやす兄の姿がハッキリと見えていた。
「兄ちゃん…なんで…」
思わず口から漏れた言葉は義母にも伝わって 俺が泣く事すら出来ないほどに 未だ状況を受け入れられてないと思われたらしい。
震える下唇を噛み締めながら微笑んで「お兄ちゃんっ子だったもんね 泣いてもいいんだよ」 と妹を抱っこしたまま抱き締められて、ほんの少しだけウルっとしたものの ニヤニヤと楽しそうに俺達を見つめる兄の顔がすぐ横にあって結局泣く事は出来なかった。
親戚は皆 俺を心配した。
トイレに立った時 心配して付いてきた叔父さんは頭をグリグリと撫でながら「おめぇちっちぇ頃から兄ちゃんと仲良かったもんなぁ……無理しねぇで泣いて良いど?」と、言ってくれた。
でも、目の前で空中にあぐらをかきながら浮かんでいる兄が大きく頷きながら泣き真似をしてから、ニコッと笑って片手でOKとハンドサインまでし始めた時には 軽い苛立ちすら覚えてしまった。
「大丈夫だよ 叔父さん。俺 もうそんなに子供じゃないから」
そう言って叔父さんを残してトイレへと向かった。
兄だけは 俺の傍から離れなかった
「……ちょっと兄ちゃん、覗かないでよ」
男性便器の前でズボンのチャックに手を伸ばす俺を……明確には俺の手元を見つめる兄に文句を言うと、ニカッと笑って 気にするな とでも言いたげに手を振った。
「いや、目の前にいたら普通に気になるから。早くどいてよ…漏れちゃう」
ほんの僅かに思案顔をした兄はスっと消えて見えなくなった。
…ぁ……。
こんな別れ方は嫌だ。
「ヤダ……まだ居なくなんないで」
咄嗟に振り向いて周りを見渡しても兄の姿は見えなくて 静かなトイレに俺の悲しげな呟きが無情に響いた。
「……兄ちゃん……」
まさか最後の言葉が「早くどいて 漏れちゃう」なんてそんなのありかよ?どうせ同じ言葉ならもっと色気のある場所のが良かったな。結局最後までそう言う意味で兄とベッドを共にする事は出来無かったしな……。
じんわりと目の前が歪んで 生暖かい何かが頬を撫でた。
あれ?なんか 急に悲しく なって……俺、泣いてるのか?さっきまで兄ちゃんに怒ってたのに馬鹿だなぁ俺。人は急に居なくなるもんなのに もっとちゃんと…兄ちゃんを大事にしておけば…好きって言えば良かった。
頬を伝って落ちた水が足元にシミを作る頃には 喉の奥から嗚咽が込み上げ、すぐに立っていることも儘ならなくなった。
「に"ぃち"ゃん…あ"いだいぃ」
自分でも聞いた事のない声が自然と口から出て来ていた。
少しすると ギギギと個室の1つが開いた。驚いて振り向くと、困った様な微笑みを浮かべた兄がそこに居た
「に"ぃちゃん……なん、なんで」
分からない とでも言いたげに小首を傾げた兄は 手招きをして個室へと消えて行った。
俺は吸い込まれるようにその個室へと足が向いて気付けば ふわふわと浮かぶ兄と2人きりで個室にいた。
「……兄ちゃん、俺……」
兄ちゃんと離れたくない。好きなんだ。キスしたりそれ以上もしたいって意味で 好きなんだと、生前 何度も言おうとしては飲み込んできた言葉。今もまた、言えずに飲み込んでしまった言葉。
足先を見つめて立ち竦むと兄の整った顔が目の前に迫って来て ふわりと俺の唇に何が触れた。
「え?今 キス……?」
驚いて顔を上げると、ほんのり恥ずかしげな兄が顔の前でピースをして笑っていた。
「え?あ、え?何で?」
上手く状況が掴めずにいると 兄は悪戯っ子な笑みを浮かべて 俺のズボンのチャックを下げる動作をした実態の無い兄の手によって ジッ……ジジッ……と少しづつ降ろされていく。
「はっ?えっ?何何なんで?」
驚きに大きな声が出てしまうと、兄は己の唇に 立てた人差し指を押し当てて微笑んだ。慌てて自分の口を手で抑えると、兄の手は俺を撫で、絶頂を迎えるまで可愛がってくれそして 俺の瞳にしか映らない兄は数十年後、俺が自然に息を引き取るその日までそばに居続けてくれる最愛の人になった。
天使を引連れて迎えに来た兄に手を伸ばして「愛してるよ」と抱き寄せると ずっと聞けなかった兄の声で「ああ。俺も愛してる」と返事が返ってきた。
「やっと、聴けた……」
そう言って俺を叱ってくれた兄が、今日事故で息を引き取った。
もう俺を叱ってくれる人はこの世に存在しないのだと思うと何だか酷く虚しくて淋しくて苦しい。何もやる気が出なくて彼の後を追いたくなってしまう。
だけど、俺にはどうしても兄がまだ生きてる様に思えて仕方ないんだ。
だって
兄は今でも、俺の目の前で笑っているから。
最初は俺の幻覚だと思った。兄の居ない世界なんて悲しすぎて 俺の頭が可笑しくなったんだって思った。
しかし まだ幼い妹が いつものように兄に手を伸ばして微笑んでる姿は 本物だった。
義母さんは妹が何も無い空間に手を伸ばしてニコニコしてる姿を不思議そうにしていたけど、俺には変顔しながらいつものように妹をあやす兄の姿がハッキリと見えていた。
「兄ちゃん…なんで…」
思わず口から漏れた言葉は義母にも伝わって 俺が泣く事すら出来ないほどに 未だ状況を受け入れられてないと思われたらしい。
震える下唇を噛み締めながら微笑んで「お兄ちゃんっ子だったもんね 泣いてもいいんだよ」 と妹を抱っこしたまま抱き締められて、ほんの少しだけウルっとしたものの ニヤニヤと楽しそうに俺達を見つめる兄の顔がすぐ横にあって結局泣く事は出来なかった。
親戚は皆 俺を心配した。
トイレに立った時 心配して付いてきた叔父さんは頭をグリグリと撫でながら「おめぇちっちぇ頃から兄ちゃんと仲良かったもんなぁ……無理しねぇで泣いて良いど?」と、言ってくれた。
でも、目の前で空中にあぐらをかきながら浮かんでいる兄が大きく頷きながら泣き真似をしてから、ニコッと笑って片手でOKとハンドサインまでし始めた時には 軽い苛立ちすら覚えてしまった。
「大丈夫だよ 叔父さん。俺 もうそんなに子供じゃないから」
そう言って叔父さんを残してトイレへと向かった。
兄だけは 俺の傍から離れなかった
「……ちょっと兄ちゃん、覗かないでよ」
男性便器の前でズボンのチャックに手を伸ばす俺を……明確には俺の手元を見つめる兄に文句を言うと、ニカッと笑って 気にするな とでも言いたげに手を振った。
「いや、目の前にいたら普通に気になるから。早くどいてよ…漏れちゃう」
ほんの僅かに思案顔をした兄はスっと消えて見えなくなった。
…ぁ……。
こんな別れ方は嫌だ。
「ヤダ……まだ居なくなんないで」
咄嗟に振り向いて周りを見渡しても兄の姿は見えなくて 静かなトイレに俺の悲しげな呟きが無情に響いた。
「……兄ちゃん……」
まさか最後の言葉が「早くどいて 漏れちゃう」なんてそんなのありかよ?どうせ同じ言葉ならもっと色気のある場所のが良かったな。結局最後までそう言う意味で兄とベッドを共にする事は出来無かったしな……。
じんわりと目の前が歪んで 生暖かい何かが頬を撫でた。
あれ?なんか 急に悲しく なって……俺、泣いてるのか?さっきまで兄ちゃんに怒ってたのに馬鹿だなぁ俺。人は急に居なくなるもんなのに もっとちゃんと…兄ちゃんを大事にしておけば…好きって言えば良かった。
頬を伝って落ちた水が足元にシミを作る頃には 喉の奥から嗚咽が込み上げ、すぐに立っていることも儘ならなくなった。
「に"ぃち"ゃん…あ"いだいぃ」
自分でも聞いた事のない声が自然と口から出て来ていた。
少しすると ギギギと個室の1つが開いた。驚いて振り向くと、困った様な微笑みを浮かべた兄がそこに居た
「に"ぃちゃん……なん、なんで」
分からない とでも言いたげに小首を傾げた兄は 手招きをして個室へと消えて行った。
俺は吸い込まれるようにその個室へと足が向いて気付けば ふわふわと浮かぶ兄と2人きりで個室にいた。
「……兄ちゃん、俺……」
兄ちゃんと離れたくない。好きなんだ。キスしたりそれ以上もしたいって意味で 好きなんだと、生前 何度も言おうとしては飲み込んできた言葉。今もまた、言えずに飲み込んでしまった言葉。
足先を見つめて立ち竦むと兄の整った顔が目の前に迫って来て ふわりと俺の唇に何が触れた。
「え?今 キス……?」
驚いて顔を上げると、ほんのり恥ずかしげな兄が顔の前でピースをして笑っていた。
「え?あ、え?何で?」
上手く状況が掴めずにいると 兄は悪戯っ子な笑みを浮かべて 俺のズボンのチャックを下げる動作をした実態の無い兄の手によって ジッ……ジジッ……と少しづつ降ろされていく。
「はっ?えっ?何何なんで?」
驚きに大きな声が出てしまうと、兄は己の唇に 立てた人差し指を押し当てて微笑んだ。慌てて自分の口を手で抑えると、兄の手は俺を撫で、絶頂を迎えるまで可愛がってくれそして 俺の瞳にしか映らない兄は数十年後、俺が自然に息を引き取るその日までそばに居続けてくれる最愛の人になった。
天使を引連れて迎えに来た兄に手を伸ばして「愛してるよ」と抱き寄せると ずっと聞けなかった兄の声で「ああ。俺も愛してる」と返事が返ってきた。
「やっと、聴けた……」
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