貴族令嬢を助けたら断罪されました。人間のカテゴリから外れた俺は、無能の敵対者をざまぁ無双する~

うし。

文字の大きさ
上 下
9 / 52
第一章 ダンジョンコアを手に入れました!?

第9話 匂いは音で買う

しおりを挟む
 ヒナを肩車してルーナと町の雑貨屋や生活用品、食料品店などを案内してもらう。
 怪我がある程度治って散歩をした時にも思ったが、中世のヨーロッパ的な文化度にしては町並みは綺麗だった。
 魔法やスキルがある分、科学的には発展していなくてもそれ以外で全く別の文明を築いている可能性だってあるしね。

 俺はライトノベルを嗜んでいるのでこの街並みが普通と思う反面、実際の中世ヨーロッパのことも調べていたので、もっとゴミや汚物が道に散らばっている可能性も考えていた。

 大通りは綺麗でも小道にそれればそうではないと言った可能性だ。
 しかし、ルーナに案内された場所は通りを含めてすべて綺麗で清潔だった。
 まあトイレだけは、ボットンというよりはオマルを大きく深くしたようなもので、致した後にナンナさんがいずれ処理をしてくれると知った時は衝撃を受けた。
 俺は羞恥心が物凄かったが、この世界でそういった処理は普通であるらしく、ナンナさん、もっと言えばルーナですら気にしている気配さえなかったのだ。
 年齢的に俺のモノが女子高生に運ばれて処理されるとかどうなのよ。
 あの時は羞恥に耐えて、ナンナさんとルーナに申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、逆に俺が処理をしていればよかったのでは?
 女子高生の……いやこれはこれ以上考えてはダメな案件だった。

 「まあトイレは日本でさえ下水道がまともに整備をされ始めたのは昭和頃からだしな……」

 下水自体は奈良時代ごろからあったとはいえ、広く水洗トイレが使われるようになったのは昭和からだったりする。
 なんなら現代日本でも田舎ではボットン式というのはまだまだ多いのだ。
 俺がホームセンターで働いている時にも、夢は自給自足の田舎生活と言う都会人も多かったのだが、トイレ事情を聞いて結局は諦める人も多かった。

 都会人は水洗に慣れているからボットンは無理だよね。
 また水洗であっても和式ということも珍しくなく、足腰がある程度は鍛えられていないと踏ん張ることすら難しかったりということもある。

 「キョウジ、トイレにでも行きたいの? ここから近い共同トイレは……」
 「あ、違う違う。下水道は整備されてないのかなってね」
 「下水道……。王都ならそういう話も聞いた気はするけど、ここにはないわね」

 俺はそうなると自分より前に転移して来ている人たちはそういう所に手をつけていないのだろうか? と考える。
 しかし、自分の前に送られた100人が何時此処へ送られたのかということまでは聞いていなかった事を思い出し、意外と最近……1年前だったりとかもあるのかもしれないと結論づけた。

 「そう言えばルーナ。明日は一緒にクエストでも受けに行くか?」
 「もちろん! でもクエストを受けるのは初めてだから、今日みたいに案内をしたりはできないわよ?」
 「ああ、俺も初めてだし最初は誰でもそうだろ。とりあえずは簡単なものを受けて見よう。怪我の治療とその間の生活費も返さないといけないからな」
 「それは気にしなくて良いのに」

 ナンナさんやルーナは、ポーション代や怪我治療の看病や滞在費を払う必要はないと言うが、さすがにそういうわけにもいかないだろう。

 「ヒナは? ヒナもぉー!」

 俺とルーナが明日の活動のことを話していると、ヒナが自分も行くと駄々をこねて肩の上で俺の髪を引っ張る。

 「いてて、痛い痛い。抜ける。男はある程度の年齢を重ねると髪の毛のことが物凄く気になるから! 抜いたらダメだから!」
 「じゃあつれていってくれりゅ?」

 俺はヒナを肩車したまま無言でクルクルと回転をし始めると、時々膝を曲げたりして遊園地の何かのアトラクションのような動きをする。

 「きゃっきゃっ たのちー!」
 「ヒナはナンナさんを護衛してもらわないとダメだからなー。家を守る騎士さまだ」
 「ヒナがきちー? じゃあおかーしゃんごえいすりゅ!」
 「ヒナは偉いな~。 そーれ!」
 「えへへ。わーい!」

 俺はヒナが一緒にクエストをすると言うのをなんとか諦めさせると、少しの間ヒナの機嫌を取るために一緒に遊ぶ。

 「まったくヒナは! キョウジに迷惑をかけたらだめでしょう?」
 「え~。そんなことないもーん。にいにヒナおなかすいた!」

 俺たちは朝から冒険者ギルドへと行きその後町を見て回っていたのだが、広場にある時計塔を見ると既にお昼を過ぎていた。
 時計塔では近くで時計を見られない人のためにも、朝6時と9時、昼の12時と15時、夜の18時と21時には鐘がなって時刻が分かるようになっているのだが、どうやら遊びに熱中していて音が聞こえていなかったようだ。

 「んー、ルーナ。昼飯はどこで食べられる?」
 「うーん。ここは広場に近いからそこで出ている屋台にでもする?」
 「お、良いな。行こう」

 俺はそう言うと、時計塔のある広場へと向かう。
 そこは昼時とあって人が多く、いくつかの屋台が軒を連ねていた。

 「ヒナは何が食べたい?」
 「うーん。すーぷ!」

 俺はヒナの要望を聞いて、スープを買った。

 「にぃに、あそこですわってたべよー。あそこならにおいでにばいおいちいの」

 俺は匂いで二倍美味しい? というヒナの発言の意味がわからず、ヒナが指をさした所へとりあえず向かうと、そこでは何の肉かはわからないが、肉を焼いたおいしそうな匂いが漂っていた。

 「なんだ? あの肉串も食べたいのか? なら買ってくる」

 俺はヒナが屋台で焼かれている肉串も食べたいのかと思って買いに行こうとするが……、

 「ちがうのー。そこまでおなかはへってにゃいからにおいをたのちむの」

 なるほど。
 食べる量はいらないが、匂いで一品増えたような感じなのかな。

 「ルーナはどうだ?」

 ヒナには断られたが、野菜や多少の肉が入っているスープとは言え、若い子には足りないだろうと思い、俺はルーナに肉串がいるかを聞いた。

 「んー、今日は特に動いてないからなー。このスープもけっこうボリュームがあるからいらないかな」

 遠慮して断っている風でもなくルーナにもいらないと言われたので、俺はそれなら買わなくて良いかと肉串の屋台近くのベンチに腰を下ろし、ヒナも座らせて昼食をとることにした。

 「スープに入っている肉は良く煮込んであるからうまいな」
 「あい! しかもにおいでにばいおいちー」

 日本でそんなことを言えば、こいつらは貧乏なのかと思われそうだが、ヒナぐらいの子供が言うのであれば微笑ましい方が勝ってしまって、俺はヒナの言うとおりにスープと屋台の匂いを楽しみながら昼食をとった。
 もう少しで食べ終わるかと言う頃、突然肉串を焼いていた屋台の店主が俺たちの前にやって来た。

 「おいおい、にーちゃん。人んちの屋台の匂いでメシを喰うとはどういう了見だ? こちとら匂いも商売のうちの一つでさぁ。だからそれぞれ三人分、串の料金を払ってもらおうか!」

 いきなり喧嘩腰で、しかも嗅いだ肉串の料金を払えと言われた俺はさすがに困惑する。

 「……キョウジ」
 「にぃに……」

 急に顔を怒りに染めた店主に詰め寄られたルーナとヒナは怯えてしまっている。
 たしかに、屋台の店の前でその店の匂いでご飯を食べていたら日本であればマナーが悪いとは思う。
 しかしながら、肉串と同じ料金を払う必要があるだろうか?
 俺は自分たちのミスと店主の言い分を比較して……、ただのイチャモンをつけられているだけでお金を払う必要が無いと判断した。

 「ふむ。匂いの代金ね。ならこっちはこれで払うよ」

 俺はそう宣言すると、ギルドで冒険者登録料を払った後に小銭が多くなった皮袋を取り出して、ジャラジャラと店主の前で音を鳴らす。

 「いの料金なら金ので払えるよな。ちょっと多めに払ってしまったが、お釣りは結構だ」

 俺は匂いの料金を払えという店主に対してとんちで返した。

 「テメー! 舐めてんのか!」

 肉屋の店主は俺の行動に怒り、殴りかかってくるが……、俺はそれをかわすと店主の顔面を殴りかけて目前で拳を停止させる。

 「舐めてるのはどっちだよ? これ以上は手加減できんぞ」
 「クッ……。覚えてろよ!」

 店主はそう言うと、屋台に戻りこちらに背を向けて座る。

 「はぁ。馬鹿のせいで飯がまずくなったな。ルーナ、『人生は一度きり!』に案内してくれ」

 俺は飯がまずくなったと言う言葉を店主が聞こえる音量で話すと、ルーナに『人生は一度きり!』へと案内を頼んだ。

 
 俺はその後、ルーナたちを家に送り届けると、『人生は一度きり!』に戻り宿をとったのだった。


 

 
――――――――――――――――――――――――――
 もし、少しでも面白い、先を読みたいと思われましたら、お気に入り登録してもらえれば助かります。
 おひねり的なお気に入り登録でもモチベーションがあがります。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...