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第一章 ダンジョンコアを手に入れました!?

第6話 知らない天井②

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 名乗った瞬間に俺の腕の中でキャッキャとしていたちびっこは急に固まり、女性と少女は一歩引いてしまう。

 「あ、違いますよ! 貴族ではないです。俺の地元では苗字も名前も両方あるのが普通の場所なんで気にしないで下さい」

 「ああそうなんですね。良かった。お貴族さまならヒナが抱き着いて粗相をしてしまってどうなるかと……。あ、私の名前はナンナです。こっちが娘のルーナと抱き着いているのが妹のヒナです」

 「ルーナよ。あの時は助けてくれてありがとっ」
 「ヒナよー!」
 「いや、こちらこそ助けてくれてありがとう」

 俺はヒナを撫でまわしながら自己紹介をし合った。
 しかし俺は思う。
 ルーナの妹がヒナ……。
 ナンナさんは人族でルーナも同じ。
 でもヒナは耳とシッポがある獣人……。
 これは複雑な家庭環境だったのかな? と思ってしまう。

 「おとーしゃんのかたみをつかったから、にいにはおとーしゃんになりゅ?」

 ……お父さんの形見ってポーションのことか?
 ナンナさんもなんかそれっぽい事を言っていたんだよな。

 「形見ってもしかしてポーションのことですか?」

 俺は気になってナンナさんに聞いてみる。

 「え、ええ。そうです。家族に何かあった時に使えと言っておいて行ってくれたんですけど、新しく出来たダンジョンへ出稼ぎにいって死んでしまったみたいで……」

 家族のために出稼ぎにダンジョンへ行って死んだ。
 意外にヘビーな話を聞いて俺は困惑する。
 しかも新しく出来たって言うなら、地球から転移した俺のようなダンジョンマスターが作ったダンジョンの可能性さえあるのだ。

 「そんな貴重なものを。俺は一体どうすれば」
 「いえ、私たちではあの人の形見を、もし怪我をしたりしてしまってもきっと使うことはなかったと思うんです。だから貴方……キョウジさんの命を救えてよかったと思います」

 ナンナさんは形見を失い悲しいだろうに、俺の命が助かった事が良かったと言ってくれている。
 俺は今なら複雑な家庭の話も聞けるのではないかと思い切り出した。

 「俺の故郷ではヒナちゃんのような獣人? は居なかったのですが、ルーナさんとご兄弟と言っても血は繋がっていないのですか?」

 俺は本当はもっとオブラートに包みながら聞こうとしていた事を、ついそのまま聞いてしまって一瞬しまった! という顔をするがもう遅い。

 「あ、いや……すみません。助けてもらったのに無粋な話をして」
 「え? いえいえ。人族だけしか居ない所なら、気になるのも仕方がないのかもしれませんね。私の夫は猫獣人で、子供は親が人族と獣人族の場合なら、どちらかの特徴を持って生まれてくるんですよ」

 お、おお~!
 複雑な家庭環境じゃなくて良かった~!

 「にいに ヒナのことさべつすりゅ?」
 「こ、こらヒナ!」

 ヒナの言葉に対してルーナが注意するが……、差別?
 俺は気づく。
 人族しかいない所=人族至上主義の国から来たと思われたのではないかということに。

 「そんな事はしないぞ~。ほら高い高い……いててっ」
 「きゃっ わーいっ!」
 「キョウジは獣人を差別しない所から来たのね。良かった~」

 ルーナもやはり俺の住んでいた所が気になっていたようで大きく息を吐いた。

 「俺の住んでいた所はそういう差別はなかったよ。こっちではあるの?」
 「え? アルギン帝国を知らないの?」

 俺はアミノ酸のような帝国名をルーナに聞いても知っているはずがなく、もっと言えば今いる所の名前すらしらないのだ。

 「知らない……っていうかここが何処かさえ分からないって言うか……。魔法で飛ばされて、落ちたらここだったんだよ」
 「えぇ~! ここはカルチ王国で首都からはかなり離れている町のキストリンという所よ」
 「カルチ王国のキストリンね。ありがとう」
 「にいに もっとたかいたかいちて~」

 俺はペチペチと顔をヒナに叩かれながら高い高いの要望を受けて座ったままではあるが、ヒナを持ち上げて何度か高い高いをする。

 「ほーら高い高い! いててっ」
 「きゃっきゃ! たのちー!」
 「こらヒナ! キョウジさんはケガをしているんだからもう降りなさい。ごめんなさいねキョウジさん。娘の相手をしてくれて」

 ナンナさんは謝って来るが、俺からすれば可愛い猫獣人っ子を合法的に撫で回せて遊べるこの機会は貴重だった。

 「いえ、大丈夫ですよ。ヒナちゃんは可愛いし。そーら!」
 「わーい!」
 「もう、ヒナは仕方がないわね。キョウジさんは良くなるまでウチにいて下さいね。では私は夕食を作りに行くので戻ります」
 「あ、すみません。行く当てもないので怪我が治るまで居させてもらえれば嬉しいです。もちろん働いてキチンとこの御恩はお返しますから!」
 「あはは。キョウジさんが娘を助けてくれたことも知っているので気にしないでここにいてください」

 そう言うとナンナさんは去っていき、俺は夕食ができるまでヒナやルーナと話をして過ごすのだった。




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