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第一章 ダンジョンコアを手に入れました!?

異世界転生→即死亡!?

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 ドンッ

 「きゃあ!」
 「いててっ。……何かにぶつかって着地もまともに出来ないやり方で送るなよ。しかも転生じゃなくて異世界転移じゃねーか!」

 ムニュ。

 んん? なんだこのプニュっとしたマシュマロみたいなの。

 モミモミ。

 俺は転移後に何かにぶつかり、態勢を整えるために手を伸ばした場所にあった柔らかいものを揉みながらそれがなんであるかを確認する。
 俺がマシュマロをモミモミする動きと同じく、かすかに「あっあっ」っという小さな声が聞こえた。
 
「ってか人!?」

 自分が何とぶつかって何を揉んでいたのかに気が付いた俺は、すぐさま15歳程度の強気そうなツインテールの美少女を助け起こす。

 これはもう事案では?
 最近の日本であれば、登校中の女子学生に『おはよう』とおじさんが声をかけるだけでも、通報をされれば声掛け事案として保護者に連絡、さらには地域の警察署のサイトに不審者の声掛け事案として登録されてしまうのだ。

 挨拶での通報は行き過ぎだとしても、今の俺の状況は突然に現れて、美少女の胸を揉んでいた状況。
 言い逃れのしようもない事案が発生していた。

 俺は事案発生という言葉が脳裏に浮かんだ瞬間に、ズサササーッとその少女から距離をとったかと思うと―――土下座した。

 「本当にすまない。言い訳に聞こえるかもしれないが、何とぶつかったのかさえわかっていなかったんだ」

 「うう……。ちょっとアンタ! 急に空からあらわれてなんなの? それにその変な格好……」

 土下座をしながらその少女を見上げると、胸を揉まれた事よりも突然に空から現れてぶつかった衝撃とその後の綺麗な所作で即座にひれ伏した俺の姿を見てどうやら困惑しているようだった。

「俺も何が何だか……。急に飛ばされたと思ったらここに落ちたんだ。改めて先ほどは済まなかった。怪我とかはないか?」

 「大丈夫だけど……。あ、胸を揉まれたことが大丈夫というわけじゃないからね! ただ、アンタが急に空から降って来た所は見ていたから、わざとではないことはわかっているわ。だから、その良く分からない態勢はしなくてもいいわよ」

 異世界の少女には俺のするジャパニーズ土下座styleスタイルはどうやら理解されなかったようだ。

 俺は土下座から立ち上がると腰を90度に曲げてもう一度謝罪をした後に、少女が怪我をしていないか確認をする。

 「揉まれた以外に被害は――」

 俺は胸を揉まれたという少女にさらに謝ろうとするが、前方から声が掛かる。

 「おい! 人が往来おうらいする場所で立ったり伏せたりしていたら邪魔になるだろうが!」

 俺は突然異世界に飛ばされた事で状況把握が出来ていなかったが、どうやらここは通り道で通行の邪魔になってしまっていたようだった。

 「すまない、すぐに道を開けるから――」
 「おお? もう一人の方は可愛いな! もしかして俺たちに見せつけていたのか?」
 「イチャコラするなら、俺たちも混ぜてくれよ」

 通行の邪魔だと言った二人のやからがニヤニヤとしながら此方へとやって来ていた。
 俺は思う。
 異世界転移直後に連続でイベントが起こるって頻度が高すぎない? と。

 「イチャついてなんかないわよ! すぐに移動するからこっちに来ないでよ!」

 少女が近寄る輩二人に対して拒否の言葉を言い放つ。

 「つれないねぇ。おねぇちゃん。ただ俺たちも混ぜてくれって言ってるだけだぞ」
 「そうそう、一緒に気持ちよくなるだけだ。男は邪魔だから歯向かえば殺すけどな!」
 「「ギャハハ!」」

 この異世界って道を塞いだだけで殺されちゃうの?
 俺は男たちが「気持ちよくなるだけ」「男は殺す」という発言をしたことで即座に状況の分析を始める。
 見たところ、この輩二人は亜人でもなく普通の人であるようだ。

 俺は考える。
 すでに相手が自分を歯向かえば殺すと言う発言をしている以上は、こちらも相手の行動次第では殺す気で動かないと本当に死ぬ危険があるだろう。
 その判断に至った瞬間に、俺は一度目を閉じて今までの日本での常識をリセットしようとした。
 
 というのも、喧嘩……と言えば規模が小さく聞こえるが、良くTVでの喧嘩自慢が何十人を相手に倒したと言うのを見聞きする。
 しかしながらあれは、相手が本気で殺しに来ていないことが前提なのだ。
 いや、潜在意識化では殺すことを勝手に脳がセーブをしていると言った方が良いか。

 鉄パイプなどの武器を相手が持ち、フルスイングをして頭を狙われたなら、ボクシングの世界チャンピオンであれば数人程度なら避けることが出来て倒すことも出来るかもしれない。

 でも、それ以上の人数なら?
 頭だけでなく胴体にも同時に左右から避けきれない距離でフルスイングされたら?
 点ではなく線、避けられない軌道で鉄パイプでの攻撃をされたならば、受ける必要がある。
 そうなってしまえば動きが止まり、後は殺しに来る相手の攻撃を躱せることはないだろう。
 相手を殺してしまうかもしれないと言う躊躇がある場合と、ない場合では本当に結果に差が出てしまうのだ

 そして戦闘になれば、それらを考える余裕はもちろんないのだが、人というものは不思議なもので潜在意識において知らぬ間にブレーキをかけるのだ。
 事実、俺は日本において無頼の輩ぶらいのやからに一方的に絡まれた時にそれを倒し、これ以上は殺してしまうというところで攻撃を止めた事があった。
 そしてその後……大逆転をされて、逆に殺されそうになったのだ。

 俺はこの世界が日本よりも倫理に厳しく、手を出せば即お縄の可能性も一度は考えるが、無意識下での躊躇ちゅうちょを排除すべく目を閉じて念仏のように手加減をしないという言葉を繰り返えした。
 もちろん、男は殺すと言う発言を聞いているので、倫理が日本より高いと言うことはないだろうとは思っているが。

 「ハハ。なんだ? 男の方はもう目を瞑って命乞いか? 往来で見せつけておいて肝が小さいやつ!」
 「ギャハハ」

 何が楽しいのかはわからないが、相手が会話をすることでこちらの覚悟が決まり、時間を稼げたことに感謝する。

 「ほら、男の方はお前がお持ち帰りされるのを怖くて止めないそうだぞ」
 「何だったらお前も見て行くか? 上の口と下の口は使用するから、お前は見てるだけだけどな!」
 「ギャハハ」

 男の一人はそう言うと、少女の手を掴んだ。

 「そのから手を放せ!」
 「あ゛あ゛ん? 何だテメーは。さっきまで目を瞑って震えていた雑魚はすっこんでろ!」
 「その娘が嫌がっている以上は、そういう訳にはいかないな」 

 俺は少女を掴んでいる輩の手を強引に引き離す。
 同時にその男から殴り掛かってこられるが、それをかわすと逆に相手のアゴを殴り返し、一瞬で昏倒させた。

 「テメー!」

 そばにいたもう一人も俺に殴りかかるがもう遅い。
 なぜなら当然それは想定内だからだ。

 「おせーよ」

 俺はそう言うと、もう一人の男に対して蹴りを放ち転倒させた。

 
 
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