貴族令嬢を助けたら断罪されました。人間のカテゴリから外れた俺は、無能の敵対者をざまぁ無双する~

うし。

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第一章 ダンジョンコアを手に入れました!?

夢想する男

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 子供の頃から大河ドラマが好きだった。
 それらの話のどれだったかは忘れたが、男は一国一城のあるじを目指すものというセリフがあって俺はそれにひどく感銘を受けた。
 
 俺はそう言った過去の偉人の言葉から、自分も生まれる時代が違えば、ひとかどの人物になれたのではないかと考えている。
 そして今ではよわい27歳にもなりながら、ライトノベルを片手に異世界転生を夢想するのだ。

 もちろん年齢が40歳だろが70歳だろうが、ライトノベルを嗜む人は多いだろう。
 しかし俺はホンモノだと自覚する。
 もちろん……それはいい意味ではないし、それも理解して自分をホンモノだと思っているのだ。
 
 異世界転生に憧れた人の多くが、マヨネーズの作り方やしょうゆの作り方は調べたことはあるだろう。
 もしかしたらスマホの充電器だって、電池切れを防ぐためにソーラータイプを買っているかもしれない。

 だが、ホンモノはそれだけにとどまらない。
 自分の世界のほぼ全てを転生に賭け願うのだ!
 本気で異世界に転生したいと思うなら、しょうゆ・・・・の作り方やみそ・・、果てはセメントの作り方から領地運営をするために複式簿記など、あらゆる料理チートや知識チートを独学で勉強して当然なのだ。
 まあ、しょうゆやみそはこうじで詰むので、頑張っても作れないんだけどね。
 いやまあ、もちろんその麹も調べて手に入れるような知識はあっても、チートがないと難しい。
 ホンモノでなければこう思うことだろう。
 転生するのだからそれを作るためのチートは手に入れているはずだと。
 しかしながら俺はそんなラッキーには期待しない。
 奴隷スタートだろうが、チートゼロだろうが成り上がる! そう決意して今世の自分のスキルを増やすのだ!
 


 ☆☆☆

 「異世界に転生してぇ……」

 普段はホームセンターで働く俺こと天城矜侍あまぎきょうじは、10連勤をした後の休みで趣味のWEBウェブ小説を読み耽りながら、今日も今日とてその言葉を呟いた。

 そもそも俺がホームセンターで働いているのも、生活に必要なものを取り扱い、ガーデニングやペット、DIYDo It Yourselfにいたるまであらゆる知識やそれを行うことが出来るようになるためで、異世界転生時に困らないようにするためだ。

 休日はもっぱらWEB小説を読むか、もう一つの趣味であるアウトドアの延長線上で買った山林と農地を開拓して、養殖をしたり作物を作ったりと異世界に転生した時のシミュレーションをして過ごしている。
 今日は新しく面白いWEB小説を発見して、1日中読みふけっていた。

 「俺なら主人公がこうした場面はチートがなくても対処できるのにな」

 俺は主人公がピンチになった場面を自分に重ね合わせて対処方法を考えていた。
 そんな時、急に部屋が真っ暗になったかと思うと意識が朦朧とし始めて気を失ってしまった。


 「ん……? 意識を失ってしまったのか? 最近は激務だったからなぁ。って何処だよここ!」
 「ふむ。人一倍に思いが強いものを呼んだはずなのじゃが、冴えない男が来たものじゃな」

 俺は急に声をかけられてビクリとする。

 「だ、誰だ!?」
(のじゃロリ娘となぜか謎空間に二人きりでいる件)

 「わしか? わしはお前の世界の管理者のうちの一人じゃな。お前さんが思い浮かべる管理者の姿がこれじゃと思ったんじゃがのう」
 「!?」
(俺の心の中を読まれている!? ま、まさか! いや……でも俺が思う神ならおっちょこちょいなプークスクスと笑う美女女神なんだが? のじゃロリタイプも思い浮かべないわけではないが……)

 「ふむぅ。のじゃロリとうるさい奴じゃの。それならこれでどうじゃ?」
 「ば、馬鹿な!? 狐耳幼女―――のじゃロリに獣人属性を足してきただと!?」
 「おっちょこちょいな水の女神ではないが、お主の潜在意識ではこの姿も好きならしいぞ?」

 (まあ、実際に低年齢な場合は好きではないが、たしかに見た目が子供で年齢が1000歳とかはラノベだと神っぽいか……。これはもう確定か? 意識を失ったまま俺は死んだのか?)

 夢でなければWEB小説を嗜む俺はここがどういう空間かを理解した。

 「死んではいないな。ただまあ、それ以外は概ねおおむねお主が思っていることで間違いがないのう」

 (ハハッ 俺もついに転生か! 本当にこんな謎空間があるんだな。しかし実際にこの状態になると、残している両親が気になってくる)

 「ふむ。冴えないやつじゃと思ったが、心根は悪くはないか? お主の両親に関しては病気や事故までは関知をしないが、お主のことに関することについては上手くやっておいてやろう」
 「ありがとうございます」
 「それでお主を呼んだ経緯なんじゃがの?」

  (つ、ついに異世界転生! 俺はやった、やったぞ! あ、鑑定とアイテムボックスと言語理解はつけてください!)

 「いやお主、わしが心を読めるからと言って願望だけ伝えてくるではない!」
 「す、すみません」
 「うむ。それで経緯なんじゃがの。ワシが管理をしている別の世界に、こちらの世界で必要とされていない人間を百人ほどダンジョンマスターとして送ったのじゃ。そやつらはクズどもばっかりでなぁ。必要のない者たちだから、犯罪者や無気力な人間、ダメ人間ばかりだったわけじゃ。そこで異世界行きを望んでいる者を後二人ほど選んで、わしの力を込めたダンジョンコアを持たせて、あっちで暴れている者どもの処分をしてもらおうかと思っての」

 (しょ、処分だって? この場合の処分は間違いなくそう言うことだよな?)

 「まあそうじゃの。ただ殺さずともダンジョンコアを壊すか吸収さえすれば、普通の人間に戻るからそれでもかまわんぞ」

 (殺さなくても良いなら……大丈夫か?)

 「まあ直ぐにお主も修羅になるから気にする必要はないがな」
 「しゅ、修羅!?」
 「悪党を見逃せば、自分に跳ね返ってくる世界だ。そこで死ねば終わりじゃ。気を付けるんじゃな」
 「……はい」

 (これは覚悟を決めないとダメな感じか?)


 「ならば問おう! 力が……ほしいか?」
 「……」

 (急にどうしたんだ? 何故ここで急にネタっぽいやり取りに!?)

 「ならば問おう! 力が……ほしいか?」

 (え? リテイク? リテイクするの? 承諾をしないと先に進まない感じなのか?)

 「はい、ほしいです」
 「宜しい。ならば力をくれてやろう!」

 のじゃロリっ子狐女神はそう言うと、懐からなにかオーブのようなものを取り出した。

 「まずはこのダンジョンコアをお前に渡しておこう。前の百人でワシが溜めていた力を使い果たしてしまったんだがの。やっと新たに2つ作れたところなんじゃが、このコアは基本的に壊せないほど硬く出来ておる。序盤はダンジョンを作ることも簡単には出来ぬじゃろうから、壊されないようにという処置じゃな。例外はワシのような神か御主と同類のダンジョンマスター、エンシェントドラゴンや英雄クラスの攻撃は耐えられないようになっておるがの。ほいっ」

 自称神のちびっこケモ耳女神は、その大事なダンジョンコアを俺に向かって気楽に放り投げた。
 あまりに急に投げられ放物線を描いてこちらに来るそれを、俺は咄嗟にとることができない。

 「!?」

 パリンッ

 「「……」」
 「壊れないほど硬く……できていたのでは……?」
 「……投げたことが神による攻撃判定になったようじゃの……」





 
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