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しおりを挟む誰しも、幼少期にお気に入りだったオモチャのひとつやふたつはあることだろう。
それは、もちろん佐緒里にもあった。
しかし、それがまさかあんなことになるなんて、いったい誰が予想できたであろうか――。
「お母さーん、これはどうするのー?」
「ああ、それはあっちにまとめておいてー」
「ほーい」
母に返して、佐緒里はかかえていた段ボール箱を運んだ。
佐緒里は今、実家の片付けの手伝いに来ているのである。
段ボール箱をかかえ直して、母に指定された部屋へ佐緒里はそれを移動させた。動かすたびにガチャガチャと音をたてる箱の中には、佐緒里が幼い頃に遊んでいたオモチャの数々が入っている。いくらなんでももう使わないのだから処分すればいいのにと佐緒里などは思うのだが、母が主張するには、思い出がつまっていて捨てるに捨てられないのだそうだ。
そんなものだろうか。そんなものかもしれない。
箱を床に置き、佐緒里は気まぐれにその段ボール箱の蓋をあけてみた。
見ると、うっすらと記憶に残っているオモチャがいくつも入っている。
「わぁ、なつかしい……」
人形や、当時人気だった女児向けアニメの変身グッズ、子供向けのコスメなどなど。
今でこそただのオモチャにしか見えないものの、幼い時分は、そのどれもがキラキラと輝いて見えたものである。とくに子供向けのコスメは、母親の化粧品やアクセサリーに憧れる年頃の自分にとって、大人に近付ける大切なアイテムだった。
「あはは、こんなのあったあった。たしかヒロイン達が変身するための道具だったんだよね」
スティック状のオモチャを取り出して、記憶を遡る。たしか、幼い頃に夢中になっていたアニメのグッズだったと思う。これを握ってお決まりのセリフをくちにすることが、無性に楽しかった。変身ごっこやおままごとなど、「自分以外の誰かになりたい」年頃だったのかもしれない。
そこで、佐緒里は不意に箱の奥にあったとある物に目が行った。
「……ん?」
手を突っ込み、オモチャを掻きわけて、それを取り出す。
佐緒里が手にしたのは、子供が持つにはやや大人っぽいデザインのコンパクトミラーだった。アンティークな見た目をしているそれは、どう考えても子供向けのオモチャにまぎれていていいものではない。
だが、佐緒里はこの鏡に見覚えがあった。それも、決して家の外には出さず、大切に大切に扱っていた記憶もある。
はて、なんだったか。
首を傾げていると、背後から声が掛かった。
「あー、それそこにあったの?」
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