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しおりを挟むそれでもヴィクトールは相手の無言の訴えには気付かぬふりをして、手を動かし続けた。
ゆるやかに、着実に、それでいながら決定的な刺激は与えず、指の腹で下着越しの過敏な箇所を優しく愛撫する。
「は、ぁ……ヴィクトール、さん……」
「なんだ」
「もっと……」
返ってきた彼女の声は、いたく弱々しい。その先をくちにすることを、羞恥心がためらわせていた。
無論、ノアの言いたいことがわからぬほどヴィクトールは鈍感ではない。が、敢えて気付かぬふりをして、小首を傾げてやった。
すると、彼女は一瞬だけ泣きそうな面差しになり、次いで、いかにも恥ずかしくてたまらないという様子で、言葉の続きを声に出す。
「もっと……強くしてください……」
「ほう、これでは足りないか」
「足り、ません……っ」
言って、潤んだ瞳でヴィクトールの手に下腹部を押しつけてきた。
いったい、こういうことをどこで覚えてくるのか、と思う。少し前まではなにも知らなかった少女が、今ではこうして淫らな言動でヴィクトールを煽ってくるなど。
生娘の開発などに関心はなかったはずなのだが、ノアにこうされると、どうにも満たされた気分になって、いけなかった。
内心で笑って、秘部に与える刺激を強める。ぐりぐりと過敏なそこを容赦なく責め苛むと、彼女の痩身はびくびくと震えた。
「ひぁッ、ぁああ! まってヴィクトールさん、急に……っ」
「足りないと言ったのは、お前だろう」
「で、でもっ――っあ、アあぁっ! だめっ、だめです……ッ!」
急激に自身を襲った愉悦に、少女は肩をすくめて耐える。しかし、もとより気持ちのよいことに弱い肉体が、長く快感に耐えられるはずもなかった。
じきに、ノアは呼吸を乱しながら喉を反らし、そのまま全身を痙攣させて、法悦の頂に達する。
「ふぁ、アッ、ぁああアアあッ!」
理性の溶けた甘い声は、いつだってヴィクトールの耳を楽しませた。
彼女の繊細な指先が、流し台に縋る。絶頂によって、華奢な腰は壊れんばかりに跳ねた。
ノアが果てるたびに、壊れてしまいそうだ――と、ひそかにヴィクトールは思っている。壊れて、どうにかなってしまうのではないかと。
だが、不思議なことに、そんな危うさに惹かれてしまうのも事実であった。
危うい彼女を見ていると、いつも相反する感情がヴィクトールの中で拮抗する。
守ってやりたい気持ちと――いっそ壊してやりたくなる気持ち。
このふたつがヴィクトールの中で拮抗し、そうして、ない交ぜになって心の奥底に沈んでいく。
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