【R18】転移先で獣人アラフィフ男性と色々ありまして

８

「こ、こんなときに地震なんて……っ」

「ただの地震ではない。これは、魔法使いが起こしている地震だ。それに、この大掛かりな魔法……。ひょっとすると、君を召喚した魔法使いの仕業かもしれない」

　冷静に告げた彼を、紅葉は見返した。

「ま、魔法使いって……どうして、このタイミングで……」

「騒ぎを起こして、君を誘い出そうとしているのかもしれない。とにかく、まずは君の安全を確保する必要がある。地下室に移動しよう。いったん避難をして――」

　そこで、レオナルドが急に頭を押さえて呻く。紅葉はあわてた。

「レオナルドさん！　ど、どうしたんですか！」
「すまない、大丈夫だ。早く地下へ行こう。こっちだ」

　彼はふらついた足取りで紅葉の手を引いて、部屋の奥にある地下室への入口に進んだ。

　大丈夫だと本人は言ったが、とても大丈夫そうには見えない。けれど、今はレオナルドのためにも自分のためにも、ひとまずは地下へ避難したほうがいいだろう。

　地震は、まだおさまらない。いくらなんでも長すぎた。自然に発生する地震とは思えないことを考慮すると、本当に魔法使いとやらが引き起こしているらしい。

　こんな大きな地震を意のままに発生させることが出来る魔法使い。世界の安寧を平然と脅かすそんな魔法使いに、紅葉は召喚されたかもしれないのだ。それも、生贄として利用するために。

　改めて考えると、ぞっとした。そんな魔法使いが紅葉を生贄に利用すれば――いったい、なにが起こるのだろう。少なくとも、平和な世界が訪れることはないに違いない。

　そんなことを考えながら、紅葉はレオナルドと共に地下室へと続く階段をおりて、したに向かった。

　腹に響く地鳴りの音が、紅葉の不安をじわじわと増幅させていった。

＊

　地下室に降りてからも、しばらく地震は続いていた。

　それに不安を煽られる紅葉だったが、それ以上に気になることがあった。レオナルドの調子が、どんどん悪くなっていっている気がするのである。

　地下室には簡易なベッドと机があり、その机の上ではレオナルドがつけたランプが明かりを発していた。

　当の彼はベッドに腰掛けて、荒い呼吸を繰り返している。

「あの、やっぱり具合よくない……ですよね？　ひょっとして、地震となにか関係が……？」

　尋ねれば、レオナルドは迷ったふうに少し目を泳がせたのちに、返答した。

「……どうやら、この地震は魔力を持つものに影響を与えるものらしい。いや、魔法使いのチカラが強すぎるばかりに、我々魔力を持つ者にまで影響が及んでいる――と言うべきか」

　彼は苦しげに言葉を紡ぐ。