上 下
233 / 263
第10章 世界へ ポートリタ編

第233話 スターダストフラワー

しおりを挟む
 手術の2日後、経過良好と言うことで、クロット退院することになった。

「先生……、このたびは本当に助かりました」

 クロットが深々と頭を下げた。

「いえいえ、無事退院出来て良かったです」
「これも先生のおかげです。そういえば宿の女将に聞いたのですが、先生は私に用があったとか」

 すっかり忘れていた。スターダストフラワーを売って貰うために宿に行ったんだった。

「そうだった。スターダストフラワーを譲って貰いたくて……」
「よろしいですよ、用途はエクス系のポーションの為ですかな?」
「そうです、そうです」
「ふむ、エクスヒールポーション、エクスマジックポーションも使う人が居ないと聞きますが、必要なのですかな?」
「ぇ?そうなんですか?」

 それは知らなかった。

「えぇ、回復量はハイポーションの5~10本分ですからなぁ、ただし値段は10倍以上しますからなぁ」

 あぁ、コスパが悪いのか、ドラゴンブラッドルートとスターダストフラワーを考えたら、そんな値段でも仕方がない気がする。

 そうなるとよっぽどのことがなければ、ハイポーション10本持った方がいいってことかな?

「あ~そうなんですね」

 周囲を見渡し誰も居ないこと確認してから伝えた。

「欠損治療に使おうかと思っているんです」
「ほぉ……、こりゃまた……」
「ハイポーションだと、肘から先の治療でハイだと数百と言うレベルになりそうだったので」
「なるほど、しかし先生、骨はどうするのですかな?ヒールポーションじゃ治らないと聞いておりますが」
「そこは考えがあります」

 ここは詳しいことは話さなかった。

「ほぉ」

 クロックは考えるそぶりを見せた。

「わかりました。こちらを」

 そういうと、クロットは粉末が入った小瓶を私に差し出した。

「これは?」
「スターダストフラワーの花びらの粉末です。エクスヒールポーションの素材ならこれで十分だと思います」
『せやな、十分や、それだけでも20本分くらいにはなるで』
「ぇ……」

 その小瓶の粉末だけでそんな量のエクスヒールポーションが作れるの?

「えっと、お代は……?」
「いりません」
「ぇ?これエクスヒールポーション20本分位ありますよね?」
「ほぉ、この量でそんなに作れますか、先生は薬師としての腕前も一流なのですな」
「ぇ?どういうこと?」
「スターダスタフラワーの粉末の使用量は、薬師の腕次第なんですよ、この量で1本しか作れない者もおります。ですが腕の良い薬師ならばこれだけあれば10本以上作れるそうです」

 それって、さっきの値段にも関わってくるのでは……?

「あっ、そうなんですか?」
「えぇ、それでお代の代わりと言ってはなんですが、友人の手の治療を頼めますかな?」
「ぇ?」
「その友人は、その昔、キラーピラニーに手首を食われましてな」
「手首から先がないと……」
「えぇ」
「あの~、申し訳ないんだけど、まだ構想段階で実際に出来るかわからないんですけど……」
「構いません、元は諦めているものです。手が治ればよし、治らなければ仕方ないものです」
「ん……、それでいいなら、良いですよ、えっとポーションとか作るので来週でもいいですか?」

 エクスヒールポーション自体初めて作るからどれくらい時間かかるのかがわからない。

「構いません、こちらも友人をポートリタに連れてくるのにそれくらいはかかりますからな」

 と言うことはレリッシュ大陸にいるって事かな?

「わかりました。それならまた来週にここで」
「わかりました。それでは先生、本当にありがとうございました」

 クロットは再び頭を深々と下げて治癒院を出て行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます

空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。 勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。 事態は段々怪しい雲行きとなっていく。 実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。 異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。 【重要なお知らせ】 ※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。 ※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

処理中です...