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第7章 学園生活 不穏な夏休み編

第174話 リリアン・スターブレイド

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 アクアについて行くと、扉の前に1人の騎士が居た。

「これは、アクア殿」

 アクア殿……?

「ラミナが目を覚ましたので連れてきました」
「どうぞ中へ」

 騎士が扉を開けてくれた。

 中に入ると、エルフ族の綺麗なお姉さんがいた。

「お連れの方が目を覚まされたようで」
「えぇ、なので、連れてきましたよ」
「ありがとうございます。ラミナさん私はステルツィア王国の第2騎士団団長リリアン・スターブレイドと申します。以後よろしくお願いします」

 凄く丁寧な挨拶をされ、慌てて私も応じた。

「ラミナです。ルマーン帝国、国立アカデミーの基礎学科1年です」
「国立アカデミーですか、懐かしいですね」
「ぇ?」
「私もルマーン帝国、国立アカデミーの出身なのですよ」

 ここにも先輩がいた。

「へぇ~」
「私が魔法科に上がる頃までは、精霊使いで名物先生が居ましたね」

 精霊使いで先生、もしかして……。

「ぇ、もしかしてリタですか?」
「えぇ、錬金科の学科長なのに授業に飽きたからと言って、基礎学科の実技や魔法の授業に頻繁に顔を出していましたし、騎士科の実技にも顔を出していたようですよ」
「そういうことをやって、ヴィッシュに頻繁に怒られていましたからね」
『懐かしいわぁ~』
『またですか!ってヴィッシュがよく言ってたよね~』
『それでリタが、別に良いでしょ!って答えるまでが流れだよね』

 なんとなくだけど想像できる。

「ぇっとじゃあ、2人は顔見知りだった?」
「いえ、私が一方的に知っていました。学内武道会や国際武道祭で何度か精霊様が姿を現していましたからね」

 学内武道会は分かるけれど、国際武道祭ってなんだろか?

「国際武道祭?」
「あら?知らないんですか?11月に行われる収穫祭のメインイベントなんですよ」
「へぇ……」
「世界中から腕に自信がある者達が集まるんです」
「もちろんそういった場なので、良い人材を確保しようとする各国の重鎮達も見に来るんですよ」
「そうなんだ」

 私の中では、先祖リタは、暴れるだけ暴れて全てのスカウトを蹴るって所までは想像がついた。

「参加したらいつも優勝?」
「えぇ、しかも相手の戦い方に合わせて勝利を収めてました」
「というと?」
「相手が魔法不得意なら剣のみで戦ったり、魔法が得意な相手だったら魔法の打ち合いでですね」

 そういえば、リタは剣が得意だったと聞いた覚えがある。

『世界中を回ったからな、いろんな流派の良い所を自分の物にしていたな』
『おまけに努力の天才やったし』

 そういう話を聞くと憧れるけども、普段の話を聞いていると、はちゃめちゃな感じがして憧れる気持ちはわかない気がする。

「はぁ……、リリアンさんもリタと手合わせしたことは?」
「授業で何度かありますよ」

 すると実技でだろうか?

「やっぱり厳しいの?」
「そうですね、私達平民の女性に対しては非常に柔らかかったですが、貴族の子ども達に対しては凄く厳しかったのを覚えていますね」

 あぁ貴族嫌いだったし、そのことは容易に想像出来る。

「貴族嫌いは健在だったんだ」
「そうですね、リタ先生の貴族嫌いは有名でしたから」
『あれだけ露骨にやってりゃな』
『でも、為になったって言っいてる子もいたよね~』
『教え方だけは上手かったもんね』

 嫌いな相手でもちゃんと教えるという意味では出来ているのかな?

 むしろ、守るべき者が多い貴族の子ども相手だったからこそ、厳しく教えていただけなのかな?

 私の中ではなんとなく、貴族の子どもだからこそ厳しく教えていたって感じがした。

「そうなんだ」
「えぇ、ラミナさん本題に入ってもよろしいですか?」
「あっ、はい」

 聞けることは聞けたし私としては、このままずるずる雑談するよりは、話を切り替えてくれて良かった。

「ラミナさんがどういった理由で私に接触してきたかは理解しているつもりです」
「はい」
「ですが、正直私は身動きできないのが現状です」
「ぇ、そうなんですか?」
「そうです、私は組織の人間、ある程度の自由は利きますが、理由も無く王都に戻ったら要らぬ疑いをかけられるでしょうからね」

 確かに戻れって言われてないのにもどったらそうなるかな。

「今の持ち場ってコーレン?」
「えぇ、そこの死守が私の任務です」
「と言うことは国境の戦が負けた場合のって事?」
「その通りです」

 そりゃ、不戦敗状態で王都に戻ったら、要らぬ疑いなんてかけられて当然な気がする。

「私はどうすればいいですか?」
「国王に反感を持っている騎士団長は私だけじゃありません」
「そうなんですか?」
「えぇ、第3騎士団団長ガレス、第4騎士団団長アリアナ、第6騎士団団長イザベラ、第9騎士団団長トリスタン、第10のユリウスも……ですが、彼は今消息不明なので、とりあえずその4人に接触して貰っても良いですか?」

 第10騎士団ってもしかして後詰めの人だったのかな……。

「分かりました。どこに行けば良いですか?」
「ガレスとアリアナはルシャノフの町に駐留しているはずです。イザベラは王都ステランクの王都防衛に就いています。トリスタンに関してはそのうち向こうから接触してくると思いますよ」
「えっと、じゃあまず私はルシャノフに向かえば良いですかね?」
「そうですね、ガレスは海軍なので王都まで移動する手段を用意してくれているはずです」
「ルシャノフで、ガレスさんとアリアナさんに会ってそのまま、王都へ船で移動してイザベラさんに会うと」
「えぇ、トリスタンとも王都で会うとは思いますが、王都を守る第1騎士団の団長エドワードにだけは気をつけてください」
「何か問題が?」
「彼は忠誠心に厚く私達とは違います。間違いなくあなたと敵対するはずです」

 そもそもですよ、複数の騎士団長が国王に反旗を翻す時点でおかしいと思うのだけど?

「あの、なんで国王を裏切る選択を?」
「私の場合は暴政に耐えかねたからですが、他の団長は今の国王より、現王の兄君に忠誠を誓っていたと言うのもありますし、それぞれの思惑があるんです」

 現王の兄……。

「えっと、そのお兄さんは無事なので?」
「えぇ、王都内でレジスタンスを率いています」

 と言うことは城を追われたと言うことか。

「その人に接触は?」
「トリスタンが接触してきたら、自ずと接触することになると思いますよ」

 と言うことは、トリスタンが庇っていると言うことだろうか?

「分かりました。とりあえずルシャノフに向かいますね」
「えぇ、そうしてください。後、可能でしたらミネユニロント王国の進軍を止めて貰えると助かります」

 ミアンのホープを経由して総大将ミッシェルに伝われば止まるはず。

「多分大丈夫だと思います」
「助かります。これから王都へと言う状態で背後を襲われるのは困りますので」
「だって、アクアお願いできる?」
「えぇ、既にその旨を伝えてあります」
「助かります。それでは私達は明日の朝、怪我人をコーレンの町に連れて行きます」
「じゃあ私は……」

 カバンから時計を出して時間を確認すると、12時過ぎだった。

「今からルシャノフに向かいますね」
「分かりました。道中気をつけてください」
「ありがとうございます、それでは」

 リリアンのいる部屋を後にした。

 外は相変わらず雨が降り続いていた。

「雨っていつまで続くかな?」
「水を大分減らしたので、明日の朝には止みますよ」
「そっか、ルナ、ルシャノフまでお願い」

 精霊達と同じ状態になっていたルナが実体化して乗りやすく膝をついて現れた。

 ルナの背に乗り、ルシャノフに向かって走り出した。
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