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第7章 学園生活 不穏な夏休み編

第159話 トロランディア帝国領内の拠点

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 麦の取引の話が終り、再びロシナティスの商業ギルド、ギルドマスターの部屋に戻ってきた。

 移動前には無かったお茶が置かれていたけど、騒ぎになってないのかな?

「ラミナ!飲んで良い!?」
「あっ、うん」

 一応私に確認するんだ、と思っていたらセレスは自分の分を飲み干した後に、私の分も飲んだ。

「喉渇いていたの?」
「ん~ん、ただたんに美味しそうだったからね」
「当然だ、このお茶は遠く倭国の高級なお茶だからね」
「へぇ」

 内心ちょっと飲んでみたかったかもなんて思ったけど、すでにセレスのお腹の中だ。

 まぁいっか。

「それでは、候補の物件に向かおうか」
「お願いします」
「ワクワクだね~」

 セレスのテンションが高い。

「そうだね」

 一方私は住むつもりもないからそこまでテンションは高くなかった。

 1階まで降りると、先ほど案内してくれた職員がいたが、特に騒いでいる様子も無かった。

 もしかして普段から消えることがある人なのだろうか?

「こっちだ」
 
 そう言って案内されたのは、商業ギルドの真正面、町の中央広場に面している大きな建物だった。

「ここですか?」
「あぁ、飢饉になってから入っていた店が撤退してね、今は空いているんだ」
「はぁ……」

 シルビアが正面入り口を開けると、ほこりっぽさと僅かにかび臭さが鼻についた。

「しばらく掃除してなかったな……」
『ささっとやってしまいましょう』

 アクアがそう言うと、見違えるレベルで綺麗になった。

「精霊か?」
「はい、アクアクリーンの魔法だと思います」
「そうか、とりあえずこっちだ」

 最初に案内されたのは、入ってカウンター奥にあるキッチンだった。

「元々飲食店をやっていただけあって、一通りの設備は揃ってる。パンも焼いていたからオーブンもちゃんと揃ってるぞ」
「いいね~」
『あぁ、場所といいこの環境なら俺はアリだな』

 グレンはここに住む気だったりするのかな?

「続いて、2階だな」

 2階に行くと、いくつかの部屋があった。

「前の持ち主は、3階は居住スペースとして使い、2階は従業員の休憩室や更衣室として使っていたが、居住スペースとしても使えるはずだ」

 2階、3階の各部屋を巡ってみたが帝都の自宅よりは圧倒的に広い間取りになっていた。ファミリー向けだよね?

「続いて、地下だ、食料庫として使ってくれても問題ないはずだ」

 案内された地下室は所々柱があるが、無駄な壁が無く広々としていた。

 所々壁にヒビが入っているのが気になる。

「壁のヒビは大丈夫なんですか……?」
「どうだろうな、直ぐに同行って事は無いと思うが、なにぶん築20年位経つからな」

 ん~、ヒビの入っているところを見て回る。建物のことは詳しくないからこそ、綺麗な状態の物件がいい。

「まん丸補強補修できる?」
『いいよ~、やっていいの?』
「契約するならかな」

 まん丸が補強補修できるなら別に良いかな。

「セレスどうする?セレスが契約したいなら私はここでも良いよ」
「する!」
「では契約書を用意するので、先の部屋に戻ろうか」
「やった~」

 そんなにうれしいのかな?

「まん丸お願いね」

 シルビアに聞こえない程度の小さな声で、まん丸に補修補強の依頼をした。

『は~い』

 その後、商業ギルド、ギルドマスターの部屋にもどり契約書を取り交わし鍵を受け取った。

「ところで、借りるじゃなく、購入でよかったのかい?」

 借りるとなると、次のことを気にしなきゃ行けないし、そこまで高い値段でもなかったしいっそのこと購入しちゃおうなんて思い、購入で契約してしまった。

「後のこと考えなくて済みますから」
「そりゃそうだが、セレスティアはともかく、君はあまり乗り気ではないように見えたんだが?」

 最初はそうだった。けれど一点だけ、気に入ったポイントがある。

 3階のバルコニーを出ると、目の前に邪魔な建物がなく、海が綺麗に見え、帝都グリーサが見えるのだ。そして見学をしたときは夕暮れで、良い感じの星空が見えるポイントに惹かれた。

「そうですね、最初はあまり乗り気じゃ無かったですが、セレスが気に入ってるようだし」
「そうか、まぁいいこちらからは以上だが、なにかあるか?」
「麦はどうするの~?」
「そうだな、明日の朝まとめて持ってきて貰っても構わないか?」
「いいよ~」
「たすかる、こちらもパンの作り手を探しておくとするよ」
「お願いします」
「あぁ、こちらこそ、これからよろしく頼むよ」

 そう言ってシルビアは手を出してきたので、私も手を出し握手に応じた。

「それでは、下まで送ろう」
「ありがとうございます」

 シルビアに下まで送って貰った。

「ヴェネスありがとうな」
「いえ、お互いに大変なのはこれからでしょ?」
「そうだな、早速明日の朝出発するやつらの護衛を受けてくれる奴を探してくれ」
「えぇ、わかりました」

 明日の朝出発って麦をどこかに輸送するのだろうか?

「それでは、ラミナさん直ぐそこまでですが送りますよ」
「あ、お願いします」

 2~30m位の距離だし、精霊達もいるし、不要と言えば不要だけど断るのもどうかなと思ってしまい、お願いしてしまった。

「それでは、行ましょうか」
「はい」

 商業ギルドを後にして数歩、ロシナティスの我が家に到着。

「今日は色々とありがとうございました。それではおやすみなさい、良い夢を」
「ありがとうございました」

 ヴェネスは軽く会釈をすると冒険者ギルドへ戻っていった。

 私は、新居の鍵を開け、中に入った。

 入った瞬間木材の香りやら良い匂いが漂ってきた。

 明かりを灯すと、先ほど見学来たときとは違い、一段と綺麗な状態になっていた。

「なにがあったの?まん丸?」
『ボクじゃないよ~セレスだよ~』
「ぇ?」
「新築同然の状態にしたんだ~」
「意味が分からないんだけど、セレスの力でってことだよね?」

 それ以外考えられないわけだが、ダンジョンの外でも力を使えるのかなって思ったけど、クゥが使っていたのを思い出した。

「そうだよ~私の力が及ぶ範囲ならある程度いじれるよ~」
「そうなんだ」

 さっき、まん丸に補修補強依頼をしたけど、意味が無かったと……。

「ご飯を食べよ~」

 セレスはそう言うと、カウンターの所に麦の袋を出した。

「ぇ、今から何か作るの?ワイバーンのお肉まだ残ってるからそれを焼かない?」
「食べる~!」
『ボクも~』

 まぁまん丸の場合は私と感覚共有してだから食べるのは私なんだけども……。

 その後、精霊達と残っているワイバーンの皮膜の焼き肉パーティーを楽しんだ。
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