上 下
123 / 263
第6章 学園生活 キラベルサバイバル学習編

第123話 ヒーリングレイン

しおりを挟む
 キラベル火山が噴火すると、溶岩はこちらに流れてくることはなかったが、小さな噴石がキラベルの町中に降り注いだ。

『また地震が来そうだな』
「ぇ?」
『来るよ~』

 グレンの言葉に“ぇ?”と思っていると、遠くの方でまん丸が叫んで返していた。

 まん丸の言葉の通りに、最初の揺れと同等かそれ以上の揺れがキラベルを襲った。

 まん丸が建ててくれた建物だから、倒壊する心配はなさそうだけど、救助にあたっている人たちが心配になった。

『生きている方の救助はあらかた済みましたし怪我の治療は一段落すると思いますよ』

 怪我の治療が終わったら今度は住む場所の再建だろうか?

 そんなことを思っていると、拠点前でゾッフが冒険者達を集めていた。

 どうしたんだろう?

 そんなことを思いながら揺れが収まると、私もゾッフの元に駆け寄ってみた。

「ゾッフさん何かあったんですか?」
「あぁ、明るくなってきたし、この先の村に救助部隊派遣と言ったところだな」
「ヒーラーとかは足りています?」
「いや、全然だな」

 私自身もヒールポーション系は既に使い切っている。
 
『ラミナ、ヒーリングレインの詠唱内容を覚えていますか?』
「うん」

 ヒーリングレイン、水系回復魔法の最上位の魔法だ、術者の魔素次第ではかなり広範囲になること、継続的に回復する事から戦闘中に使うと便利って昔アクアから教わった。

『今持てる魔素全部使うつもりで唱えてください、それだけでも多くの村人を助けることが出来ます』
「分かった」

 私は体内の魔素に意識を集中し、詠唱内容を思い出しながら口にした。

「大気に住まう水の精霊よ、大地を潤す雨よ、この地に癒しの恵みを降り注げ。疲れし魂を包み込み、痛みを和らげる優しき滴となれ。ヒーリングレイン!」

 そう唱えると、私の体内からごっそりと何かが抜ける感覚と軽いめまいに襲われ、私の頭上を中心に白く透き通った雲が現れどんどん広がりはじめ、やがてはキラベル地方全域を包みこみ、パラパラと雨を降らせ始めた。

「こいつは……」

 ゾッフをはじめ、その場にいた冒険者が驚きの声を上げていた。

「嬢ちゃん魔素は大丈夫か?」
「たぶん、これ以上魔法使ったら倒れると思います……」

 今の時点で、立っているのも少し辛い感じがある。

「そうか、十分!各自村に急げ!怪我人は雨がなんとかしてくれるはずだ!」
「「「っは!」」」

 冒険者達は返事をすると、駆け足でキラベルを去っていった。
 
 思う、これ最初から使えば良かったのでは?

「アクア、これ最初から使えば良かったんじゃないかな?」
『ダメですよ、開放骨折しているのに傷口だけ塞がったらどうなると思います?』

 また傷口広げないとダメって奴かな……?

「また傷つけないとダメとか?」
『えぇ、本来は長引く戦いのさなかで使う魔法ですからね、対象の症状がわからない時に使う魔法ではないんですよ』
「ぇ、それじゃあ、他の村の人の状況が分からない今使って良かったの?」
『えぇ、一応近くにある4つの村の状況は把握しています。死者2名出ていますが既に救助は終わっていますよ』

 それは冒険者が向かう意味があったのだろうか?

『それよりもだ』
「うん?」
『そのうち2つの村は、この辺りを離れたオーク達に襲われる可能性が高いんだよ』

 いやいやいや、もっと早く言おうか!

 結構大事な事じゃん!

「ゾッフさん!」
「なんだ」
「精霊曰く、この先の村の救助は終わっているそうなんですが、この地を離れたオーク達に襲われる可能性が高いって……」
「ふむ、この雨はいつまで降る?」
『今日の夕方まで降り続けると思いますよ』

 そんなに?
まだ朝の6時過ぎだよ?

「精霊曰く夕方までって」
「なら先の派遣部隊だけで十分だと思うが念のため応援を出しておこうか」

 ゾッフはそう言うと町中に戻っていった。

 大丈夫なのかな?

 そんなことを思いながら、治療拠点にもどり作業を再開させた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...