上 下
102 / 263
第4章 学園生活 友人の難病編

第102話 精霊派遣

しおりを挟む
 ミアンを離すと、思っていたように涙でぐしゃぐしゃになっていた。

「大事な話って何……?」

 精霊を派遣することを先に話すべきか、再発する可能性のはなしを先にすべきか悩んでいると。

「私が説明しましょうか」

 アクアが代わりに説明してくれるようだった。
 
「アクアちゃん」
「ミアン、良い話と悪い話何方から聞きたいですか?」
「悪い話って、再発かな……?」

 ミアンは既に再発の可能性があるって思っていたのだろうか?

「えぇ、先ほど皆さんが話していたように高い確率で再発すると思います」
「っ……」

 アクアがそう言うと、ミアンは既に泣いていたのに、さらにボロボロと涙がこぼれ始めた。

「そして、良い話ですが、私達の方で話し合った結果、誰かの子を派遣しようと思います」
「誰かの子……?」
「えぇ、いくつか代償がありますが、上位精霊を付けようと思っています」

 代償ってなんだろう?

 もしかして、“魔素が流れている感覚”ってやつだろうか?

「えっ……」
「精霊を派遣とは、そんなこと出来るのかい?」

 ミアンの父がアクアに質問していた。

「可能ですよ、事実、錬金科の卒業生には下位精霊が付いていますからね」
「噂だと思っていたが誠だったか、精霊がつくと再発は防げるのかい?」
「えぇ、限りなく0になると思いますよ」
「そうか、先ほど代償と言っていたがどんなことをするのだ?」
「いくつかありますが、一つ目は私達精霊の体は魔素で出来ています。故に魔素を貰い続けることになります」

 無限にあるミアンにとってはデメリットでも何でも無いだろう。

「そうか、常に体内の魔素に流れが出来るから再発しにくくなると言うことだね」
「えぇ、理解が早くて助かります。2つめ私達精霊は同じ属性の精霊同士で情報を共有します。そのためミアンが見たこと聞いたこと等は全て私達大精霊に筒抜けになります」
「それくらいなら……」

 同属性の精霊同士は情報共有するってことは知っているけれど。

「それくらいと言って良いのでしょうか?ラミナが私達にミアンの聞いたこと見たことを聞かれたら答える必要があるんですよ?」

 そんな無闇にミアン個人の事を知るつもりは無いのだけど……。

「逆を返せば、私に何かあればラミナに伝わるってことですよね?」
「えぇ、その通りです」

 悪事に巻き込まれたりした場合はメリットになるのか。

「一つ聞くが、上位精霊を派遣するというが、もしや精霊魔法を使えるようになるのかい?」
「えぇ、悪意がなければ問題なく使えますよ」

 ん?
 卒業生バッチは勘が良くなるだけじゃなかったっけ?

 下位と上位の差なのかな?

 代償どころかミアンからすれば、魔素硬化症の再発が可能な限り0になる、何かあったら私に伝わる。精霊魔法が使える。とメリットの方が大きい気がする。むしろメリットしかないのでは……?

「私、精霊さんを受け入れます」
「分かりました。それでは火・水・大地・植物いずれかを選んでください」
「水で!」

 アクアの問に即答するミアン。

「分かりました。ラミナ少しだけ分けてください」
「うん」

 私が答えると、アクアが私の肩に寄っていくとアクアから小さな青い光が生み出された。

「それではミアンの元に」
『はいはい~』

 アクアから生み出された上位精霊はずいぶん明るいタイプらしい。

 上位精霊がミアンの手の近くに停まると。

「今は見えないかもしれませんが、名前を付けてあげてください」
「えっと名前はホープ」

 僅かだがミアンの手の近くに居る上位精霊が発光した気がした。

「あっ、流れる感覚が」
「えぇ、もうじき姿が見えるようになりますよ」
「あっ」

 ミアンが反応するとホープもミアンの周囲を飛び回り始めた。

「今はただの光の球ですが、この子の姿をイメージしてみてください」

 アクアがそう言うと、ミアンが右手を前に伸ばし、ホープもそれに応えてミアンの手に停まった。

 ミアンはホープを両手で覆い顔の前に持ってきて何か祈りを捧げるような姿勢を取った。

 しばらく見ているとミアンの手から淡い光が漏れた。

「出来たかな……?」

 ミアンがそう言いながら手を広げると、そこには小さな青い鳥が居た。

「大きさや姿はイメージすれば変えることができます。必要に応じて対応してください、それから常時アクアヒールとアクアクリーンを発動させていますので、病気や怪我にはなりにくい体になると思いますよ」

 なんだか、至れり尽くせりって感じだなんて思ってみていた。

「アクアちゃんありがとう!」
「どういたしまして」

 ミアンへの精霊派遣は終わったかな?

「ラミナ君、少し良いだろうか?」
「ぇ、はい」
「もし明日夜時間があるなら、我が家に来ないか?今日のお礼をしたいのだが」

 この後サウススペルンって思ったけど、イリーナもマリベルも帝都に居るし行かない方が良いかな?

「えっと大丈夫です」
「そうか、それでは明日の夕方使いの者を向かわせるから楽しみにしていてくれ」
『美味しいものが食べられる~』

 公爵の話に一番最初に反応したのはまん丸だった。

「分かりました」

 今週末は薬作りと冒険者活動でもしようかな……。

 その後はミアン達家族と雑談をしてから解散となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

魔王復活!

大好き丸
ファンタジー
世界を恐怖に陥れた最悪の魔王ヴァルタゼア。 勇者一行は魔王城ヘルキャッスルの罠を掻い潜り、 遂に魔王との戦いの火蓋が切って落とされた。 長き戦いの末、辛くも勝利した勇者一行に魔王は言い放つ。 「この体が滅びようと我が魂は不滅!」 魔王は復活を誓い、人類に恐怖を与え消滅したのだった。 それから時は流れ―。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...