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第4章 学園生活 友人の難病編

第91話 名前

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 初めての本番が終り座り込んでいると、

「マリベル、旦那さんを」
「はい!」

 エルフの女性がそう返事すると、直ぐに分娩室の外に出て行き、旦那さんを伴って戻ってきた。

「元気な女の子ですよ」

 イリーナがお母さんの横に置いてある小さなベッドの上で泣いている赤ちゃんを旦那さんへ紹介していた。

「おぉ~」

 ベッドから赤子を抱き上げる男性。

「あ、妻は……」
「問題ないですよ」
「あなた……」
「あぁ、ユミル、子どもを産んでくれてほんとうにありがとう、君も無事に済んでに良かった」
「えぇ……」

 なんかやりとりを聞いていて、私には場違いの場な気がしてならなくなった。

 それを察してくれたのか、ゴーレム化したまん丸が片付けを始め、私もそれに合わせて必要な物を片付け、こっそりと分娩室を出て外のベンチに腰掛けた。

『何事も無く終わって良かったな』
「うん、そうだね……、本当に良かった……」

 最大限神経を使ったせいか正直疲れた。

 家に帰って寝たいのが現状だが、ここはサウススペルンだ近くに帰る場所もない。

「疲れた……」
『そりゃそうやろ』
『少しベンチで横になってはどうですか?』
 
 この通路は分娩室しかないのだろうか?
 人通りが全くといって良いくらい無かった。

「そうしようかな……、なんかあったら起こして」
『えぇ、わかりました』

 とりあえずはイリーナが出てくるまででも……。

 そう思い、ベンチに横になり目を閉じた。

 どれくらい目を閉じていただろうか?

『ラミナ』
「ん……」

 ミントの呼び声に目を開けると、先ほどのエルフの男性が居て背後にイリーナとマリベルと呼ばれたエルフの女性が居た。

「君、2人を救ってくれてありがとう!」

 エルフの男性はやや興奮気味に迫りお礼を言った。

「あっ、はい……、2人が無事で良かったです……」

 私としてはやれることをやって救えて良かったと思っているだけだ、だから興奮気味にお礼を言ってくるエルフの男性に対して、若干引いていた。

「君の名はなんて言うんだ?」
「ぇ、ラミナです」
「そっか、じゃあ娘の名前もラミナにしよう!」
「ぇ」

 意味が分からなかった。

「ぇ、良いんですか……?もう少し考えた方が……」
「いや、君精霊使いなんだろう?」

 そんなこと言ったっけ?
 そんなことを思っていると。

『独り言言ったり、無詠唱で傷が治ったりしてればな……』

 グレンから突っ込まれた。
 
 確かに今まで精霊使いと思われるような行動を奥さんの前でしていたしそう思われても仕方ないのかな。

「えぇまぁ……」
「ボクはね君がもっと大きな存在になる気がするんだ、革命を起こした聖女のようにね」

 先祖と同列扱いされていると言うことだろうか?
 たった二人の命を救っただけでって思うと、ちょっとおこがましい気がした。

「えっと、奥様も良いというなら構わないですけど……、後悔だけはしないようにしてくださいね……」
「あぁ、ありがとう!君の名前をというのは妻からの案なんだ」

 って事は、私が同意した時点で確定なんだ……。

「そうですか……」
「あぁ、今日は本当にありがとう」

 男性はお礼を言うとどこか行ってしまった。

「お疲れ様でした。この後、さっきの手順を教えてもらっても良いかな?」

 男性の後ろに居たイリーナとマリベルに囲まれた。

男性の次はイリーナとマリベルですか……。

「はい……」
「それじゃあ場所を変えましょうか」

 イリーナがそう言いながら手を差し出さしたので、イリーナの手を借りて立ち上がり二人の後について行った。

 二人の後に付いていくと、職員室のように机が並んでいる部屋に通された。

 “この部屋で話なのかな?”と思ったけど違い、奥の部屋に連れて行かれた。

 錬金科の学科長室と似た部屋だった。棚に飾ってある物が無く、いろいろな本が置いてあった。

「そこに座ってちょうだい」
「はい……」

 イリーナに促されたソファーに座ると、テーブルを挟んで対面にイリーナとマリベルが腰を下ろした。

「ラミナさん自己紹介していませんよね」

 マリベルの方から声をかけてくれた。

「あ、はい、ラミナです今年アカデミーに入学しました」
「私はこの治癒院で院長をしているマリベルです。先ほどは見事な手際でした」

 そうなの?
 自己評価をするとしたら……、80点くらい?

 減点分は最初震えていたから始めるまで時間をかけてしまったことかな?

 そう考えれば、初めてから赤ちゃんを取り上げるまでの課程は手際良かったのかな?

「えっとありがとうございます?」
「ふっふふ、先ほどの手際を見ていると子供だと思えませんでしたが、今の姿は年相応って感じですね」

 そう言いながらマリベルは微笑んでいた。

「私の言ったとおりでしょ、彼女はもっとすごいことをやろうとしているんだから!」

 イリーナが胸を張って言うことなんだろうか?

「そうなんですね、すると今後も縁がありそうですね」
「そのつもりでここに連れてきたんですよ」
「そうなんですか?」

 私の中では見学のために連れてこられたという印象だったが、イリーナの中では違ったらしい。

「えぇ、帝国内では一番大きくて利用する方も多いですからね、ラミナさんの為にもなりますし、私たちもラミナさんの技術と知識を身につける機会になりますからね」

 私の為ってのはどういうことだろうか?

「私の為って?」
「ここに居るのは大半が妊婦さんですが、それ以外の病気や怪我をしている方が居ます。ラミナさんなら、もっといろいろな人を救うことが出来るようになると思うんです」

 あぁ、ヴィッシュが“ラミナ君に救える命はたくさんあるはずですよ、その目で見て感じてきてください”って言っていた理由が分かった。

「私の経験のために……?」
「えぇ、ヴィッシュ先生はリタさんに細菌の事や薬の事等色々教わり、世界に広める役目を担っているんですよ。だから、私はラミナさんから色々な治療法を学んでそれを世界に広めていきたいんです」

 先祖にとって良き理解者としてヴィッシュが居たように、私の良き理解者としてイリーナが付いてくれると言うことだろうか、私としても知識がある人が側に居てくれるのはありがたかった。

「なるほど、これからよろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそ!」

 イリーナはそう言うと、右手を差し出してきた。

「えっと……?」
「あれ?握手を知らない?」
「握手?」

 初めて聞いた。

『ミント』
『あいよ』

 グレンがミントを呼ぶと私の前で握手をしていた。

『これが握手だ、親愛の印だったり挨拶として使われるんだよ』
「へぇ……」

 グレンとミントの手本を元に、私も手を差し出しイリーナの手を握った。

「精霊さんが教えてくれた?」
「はい」
「精霊さんが付いているのはうらやましいですね」
「そうだよね、といっても私たちにも下位の子がついているはずなんですけどね」
「そうでしたね」

 イリーナとマリベルがうらやましがるのは分かる。
 私も精霊使いじゃなく、目の前で精霊と色々会話している人を見たら同様にうらやましく思う。

「それじゃあ、さっきの手順教えてもらえるかな?」
「あっ、はい」

 さっきの手順を二人に最初から説明した。
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