上 下
40 / 263
第4章 学園生活 友人の難病編

第40話 カバンの中身

しおりを挟む
 錬金科の医務室から寮の部屋に戻って来た。

『リタの手紙よまん?』
「あ~そうだね」

 カバンを開け手を入れると、直ぐに手元手紙が現れた。

 何もない空間に手紙だけが手元に……、これがマジックバッグ?

 ツキから借りたのとは少し違う気がする。

 カバンから手を出すと、薄い黄色の綺麗な封筒があった。100年以上前の物にもかかわらずとても綺麗な状態だった。

「これ本当に先祖が?」
『せやで、カバンの中は時の流れがないんや』
「ぇ?じゃあ100年以上前のまま?」
『そうですよ、リタが村に向かう前日に書いていましたからね、手紙からすればほんの少し前までリタが手に触れていた状態ですよ』

 さっきまん丸が“リタの匂い”とか言っていたのはそのせいなのかな?

「そうなんだ」

 封筒の封を切り手紙を取り出し、便箋を広げた。

“私の遠い遠い子孫へ

 この手紙を読んでいるという事は無事アカデミーに入学てきたという事でしょうか?

 あなたが、どのような目的を持ってアカデミーに来たかはわかりませんが、カバンの中にある物を使ってください、不要なら捨ててもらっても構いません。

 リタ”

 あれ?
 これだけ?

「これだけ?」
『フッフッ、そう思いますよね、リタは元々手紙を書くのを苦手で、この手紙を書くのに3日もかけていたんですよ』

 3日もかけてこの内容って、散々悩んだ挙句簡潔に済ませたってことだろうか?

『せやな、手紙をカバンしまって村に向かってからもずっと手紙の内容を気にしとったんやで』
『ですね、まぁ手紙はそっけないですが、カバンの中身は今のラミナに役に立つ者も結構多いですよ、とりあえずカバンの中身を出してみたらどうですか?』
「うん……、そうする」

 カバンに手をいれ何かをと思っていたが、肩までカバンの中に入れても底にぶつかる事も、壁にぶつかる事もなかった。

「何もないよ……?むしろカバンの中に入れそうなくらい広いよ?」
『そりゃ、マジックバッグやからね、生き物は入れないから大丈夫や』
「そうなんだ……」
『何が入っているかのメモを入れていたと思うので、メモが欲しいと念じてみるといいですよ』

 そう言うのは手紙に書いてくれていればいいのに……。

「メモね……」

 カバンに手を入れた瞬間、紙切れが手元に現れた。

「……、一瞬で手元に現れた……」
『そう言うものですからね、必要なものを意識しないと手に取れないんですよ』

 そう言う説明も手紙に書くべきだと思う。

 手元に現れたメモを手にカバンから手を出すと、1枚の紙があった。

 メモに目を通すと、肉や麦等の食材、薬草類、鉱石類、レシピなどの本類、調合道具、料理道具、寝具や家具、魔道具に杖や剣、砂、船(レーベン号)、そして多種多様の武器等色々書かれていた。

 ここにある者だけでも生活出来る気がした。

 その中でもいくつか気になる。時計と多くの鉱石類、そして砂と船だった。

「時計?」
『あぁ、まん丸の手製懐中時計やね』
「日時計じゃないの?」

 私の中では、時計=日時計だった。持ち運べる時計ってなんだろうか?

『ちゃうよ、懐中時計、ボッシュが持ってたで、時間が分かるから便利やで』
「そうなんだ」
『アカデミー内でも時計が使われていますよ』

 時間は鐘があるから特に不便を感じてはいなかったけど、とりあえずカバンに手を入れて時計をイメージすると。手の平に収まりそうな円形の何かが手元に現れた。

 カバンから取り出すと、文字盤以外はガラス製と思しき懐中時計が現れた。

「これ?」
『せやで』

 ずっとまん丸の反応がないなと思い辺りを見渡すと近くの棚の上で丸まっていた。

 また寝ている。まぁ何もないからいいけど……。

「これ何で出来ているの?ガラス?」
『いや、クリスタルや』
「鉱石なの?」

 透明な鉱石があるのを初めて知った。

『そうですよ』
「鉱石類が一杯あるのはなんで?」
『薬草をくっつけると特殊な反応を起こしたりすんねや、それをチェックするために持ち歩いとんねん』
「特殊な反応?」
『せやで、毒草でも鉱石の上に種を乗せて成長させると毒素が抜けて薬になったりすんねや、その逆もあるし、全くの別物になる物もあるんや』
「へぇ、そうなんだ」

 砂もそういう意味で入っているのだろうか?

 とりあえず、キラベルに向かう際にはこのカバンを持っていけばいい気がした。

 先ほどの時計を見ると22時を回っていた。

「時間って意識したことないから分からないけど、結構遅い時間だよね?」
『せやな、ラミナはいつも21時位には寝てんで』

 そろそろ寝とかないと明日に響きそうだった。

 シャワーを浴びて直ぐにベッドに入り恒例の魔素を精霊に吸わせて寝た。

 船のことは今度聞いてみよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

魔王復活!

大好き丸
ファンタジー
世界を恐怖に陥れた最悪の魔王ヴァルタゼア。 勇者一行は魔王城ヘルキャッスルの罠を掻い潜り、 遂に魔王との戦いの火蓋が切って落とされた。 長き戦いの末、辛くも勝利した勇者一行に魔王は言い放つ。 「この体が滅びようと我が魂は不滅!」 魔王は復活を誓い、人類に恐怖を与え消滅したのだった。 それから時は流れ―。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

転生しようとしたら魔族に邪魔されて加護が受けられませんでした。おかげで魔力がありません。

ライゼノ
ファンタジー
事故により死んだ俺は女神に転生の話を持ちかけられる。女神の加護により高い身体能力と魔力を得られるはずであったが、魔族の襲撃により加護を受けることなく転生してしまう。転生をした俺は後に気づく。魔力が使えて当たり前の世界で、俺は魔力を全く持たずに生まれてしまったことを。魔法に満ち溢れた世界で、魔力を持たない俺はこの世界で生き残ることはできるのか。どのように他者に負けぬ『強さ』を手に入れるのか。 師弟編の感想頂けると凄く嬉しいです! 最新話は小説家になろうにて公開しております。 https://ncode.syosetu.com/n2519ft/ よろしければこちらも見ていただけると非常に嬉しいです! 応援よろしくお願いします!

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

処理中です...