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第4章 学園生活 友人の難病編

第39話 人を殺す治療法

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 誰かがやってくれると思っていたが、やってくれる人がいないので自分でやる事にした。

「アクアサポートお願い」
『えぇ、任せてください』

 ベッドで横になっている男の子の横に立ち、胸骨の下あたりに触れる。

 身体の構造なんかは、村を出ると決めてからミントとアクアから色々と学んだが、すべては口頭のみだった。

『胸骨の先端とおへその間辺りで良いと思いますよ』
「ありがとう」

 アクアに言われた通りの場所に指を滑らせた。

 なんとなく、ここだと感じる場所に針を突き立て、ゆっくりと刺していく。

『うまく血管を避けとるね』
『ですね』

刺していると抵抗がなくなったのが分かり、刺すのを止めた。

「アクア」
『えぇ、大丈夫です、後は私に任せてください』

 アクアが僅かに光った気がする。クリーンの魔法を使ってくれたようだ。

『針を抜いて大丈夫ですよ』

 アクアに言われた通り、針を抜いた。

 針を抜くと再びアクアが光った気がした。

 針を刺していた場所の傷が塞がっている?

 アクアヒールを使ったって事だろうか?

 そういえば、ダッドマッシュルームってどういう原理なんだろうか?

「ダッドマッシュルームってどういう作用で、こうなっているの?」
『胃の中でマッシュルームがゆっくり解きぃ、成分が胃にしみこむ事で効果を発揮すんねんで』

 即効性があるということだろうか?

「あぁ~、すると胃に残っているのが無くなったら目を覚ますって事?」
『せや、この男ももうちょっとしたら目が覚めるはずや』
 
 ミントの言う通り、少ししたら目を覚ました。

「あれ?ここは?」
「ここはアカデミーの錬金科の医務室です」

 皆を代表してヴィッシュが対応していた。

「俺はなんでここに?」
「こちらの2人が、あなたを運んできたんですよ、お腹の調子はどうですか?」
「あっ、全然痛みが無いです。すいません、ありがとうございます」

 男の子は、直ぐに状況を理解した用だ。

「いえ、大丈夫ならよかった、外は暗いので気を付けて帰ってください、ファラ君、ミミ君、学園の入口まで送ってあげなさい、そのまま君たちも帰りなさい」
「はい」
「はい、こっちです」
「あぁ、ありがとう」

 ヴィッシュが指示を出すと、男と2人の女生徒が医務室を出て行った。

 3人が出て行くと、ヴィッシュがこっちを見た。

「ラミナ君、先程の君の独り言で大体の流れが想像つくのだが、教えてもらっても良いかい?」
「ぇ?はい」

 流れを言えばいいのだろうか?

「えっと、ヴィッシュ先生の見立て通り、胃に穴があき、内容物が外に漏れたことにより、腹の中で炎症を起こしているとアクア……、水の精霊さんが言っていました」
「なるほど、名前からして、ミント君は植物の精霊といったところだね」
「はい」
「そうか、ありがとう、続きをお願いしてもいいかな?」
「はい、胃の内容物が漏れた事に寄る物ならクリーンの魔法を使えばいいと思ったんですが、穴があいていないと意味がないと言われました」
「なるほど、それで」
「それなら、針を刺して穴を思ったんですが、リンクル族の方は傷の治りが早いから塞がってしまうとアクアに言われ、ならば毒蛇の牙のように、穴の開いた針を刺せばと思いました」
「なるほど、それでまん丸君が、中空洞の針を作った、って事だね」
「はい、そうです」
「うんわかった。ありがとう」
「いえ」
「君は今の病が不治の病だという事は知っていたかい?」
「ぇ?」

 信じられなかった。ヴィッシュが診断していたから何かしらの方法がある物だと思っていた。

 胃に穴があいているときにクリーンの魔法を使ってから、ヒールポーションを使えば普通に治せそうだけど……?

『そうですね、リタの頃にも何人か見ましたけど、痛み止めとヒールポーションを処方して延命措置するくらいしかできませんでしたしね……』
「そうなんですか!?」
「あぁ、先程君がやってくれたように簡単に治せるものだと思っていなかった。それ以前に、僕らは傷をつけて治療するという概念が元々ないからね、だから君の手法を思いつくことが出来なかった」
『せやな、リタもそうやったもんな』
「そうなんだ……」
「ラミナ君は、まだ常識という色に染まっていないからこそ、柔軟な発想が出来るのかもしれないね」
「今の医療って薬だけで何とかするのが普通なんですか?」
「いや、僕らはあくまでも薬師だ、医師は瀉血(しゃけつ)をして治療をしているがね」
「シャケツってなんですか?」
「体内の血を抜く医療だよ、彼等にとっては殆どの病は汚れた血にあると思っているからね、目に見えない生物の存在を信じる者は少ないんだ」

 そんな治療法があるのか。

「その、瀉血(しゃけつ)で病気って治るんですか?」
「そうだね、治っている者もいるが、治らない者もいる」
『そりゃそうですよ、あの治療法はほとんど意味のない治療ですからね』

 ヴィッシュが言い終えると、すぐさまアクアが反応していた。

「意味ないの?」
「ん?」
「すいません、アクアが……」
「あぁ、なるほど」
『えぇ、回復した者達はただ単に、人がもともと持っている自然治癒力によるものですよ、それを瀉血で治ったと思っているだけですから』
「そうなんだ」
『えぇ、それに、瀉血をする方法によっては、余計な病にかかりますよ』
「えぇ?」
『瀉血の方法の1つに、ヒル系の生き物や魔物を使う事が多いのですが、種によっては病原菌を持っているので、血を吸わせると同時に感染することもありますし、血が止まらずそのまま失血死することもあるんです』

 死ぬ治療法、これは治療法と言って良いのだろうか?
 私の中では治療法と呼べるものじゃない。

「そんなの治療法じゃなくない……?」
『そうです。治療法と呼べるようなものじゃないんですよ』
「ラミナ君、アクア君が何を言っていたのか教えてもらっても良いかい?」
「あっ、はい」

 その後、ヴィッシュにアクアから聞いたことを伝えた。

「なるほど、意味のない治療法か、彼等は信じているからな……、止める事は出来ないと思う……」
「そうですか……」

 人を殺す治療法、何とかならないのかな……?

「さて、ラミナ君、もうだいぶ遅い時間になっている。寮の入口まで送りますよ」
「あっ、すいません、ありがとうございます」
「いや、こちらこそ新しい治療法に出会えたんだ、感謝していますよ、君の手にある針もらってもいいかい?」
「あっ、はい、どうぞ」
「ありがとう、それじゃあ行こうか」

 ヴィッシュに、針を渡し、寮まで送ってもらった。

 寮の入口まで来ると。

「そうだ、ラミナ君、休み明けの放課後にまた錬金科においで、リタ君が残したものを見せてあげるよ」

 先祖が残したものってなんだろう?

「わかりました」
「それでは、良い休日を」
「ありがとうございます」

 お礼を伝えると、ヴィッシュは背を向け歩いて行った。

 私はそのまま寮の部屋に戻った。
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