【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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人の姿になったユキ

第86話 暦と時間

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 ジルさんに使ってもいい診察室に案内してもらうと、すでにユキとナンニャさんがいた。

「はやいのぉ」
「ユキちゃんに色々と教えることもあったので」
「そうじゃ、その件なんだが、ナンニャこのままここの管理を任せる」
「それは彼がやるのでは?」
「そう思っていたのだが医師業務に専念したいと言っておってな、それからユキも彼の下に付く感じじゃ」
「はぁ、わかりました」

 ナンニャさんは少し不満そうな表情を見せたが、ユキは満面の笑みだった。

「誠明~いっしょだー」
「一緒というより、手術の時の補助してもらいたいからね」
「そっか~呼吸管理?」

 毎回毎回違う人で説明する手間があったからな、一番変えたかったのはその部分だった。

「わかるんだ」
「うん~わかるよ~いつも見てたからね~」

 確かにいつも隅っこでじーっと見てたな。

「そっか、ちょっとこれから回ろうと思うだけど一緒に来る?」
「もちろん!」
「って事で案内してもらいたいんですけど」
「ふむ、ナンニャ、誰か手すきの職員はいるかね?」
「そうですね、もうじき朝のミーティングがあるのでそれからでもいいですか?」
「大丈夫です、どこでやるんです?」
「奥がスタッフルームになっているのでそちらで」

 診察室から奥を見て見るとナースステーションみたいなところがあった。よくできてるなと思った。

「わかりました、ありがとうございます。んじゃそっちで待ってればいいですか?」
「えぇ」

 中央に高く細い机のがありナースステーションと思しき所へ移動しようとした時、診察室の奥の通路を通った人の格好に驚いた。通り過ぎた人は看護師のような制服着ていた。

「もしかして今の人達って看護師ですか?」
「私達は看護婦と呼んでいますよ」
「へぇ」

 この病院の職種って何があるんだろうと気になった。

 ジルさんナンニャさんユキと共にナースステーションのような所にいくと、正面は入院病棟みたいな感じだった。

「はぁ入院病棟ですか」
「さよう、ここは主に産科だのぉ」
「はい、こずえさまから人口を増やすなら出産時の対応が一番大事だと教わっておりますので」

 こずえさんの名前がでてきた。

「御堂こずえ、聖女様の事です?」
「えぇそうですよ」

 やはり彼女だったか、どういった経緯でドワイライフ王国に来たのかが気になるが、彼女なりに色々やってたんだと分かった。

 ステーション内を見回すと、学校にあるような円形の壁掛け時計が飾られていた。

「あれ?時計ですよね」
「えぇそうですよ、ドワイライフでは各家庭時計を1つは持ってるんですよ」
「そうなんですか?」
「そうじゃ、みんなが時間を把握する事が大事だからと言ってな、城に大量の時計を寄付されたんじゃ」
「へぇ、あ、もしかして例の集まりも8時くらいに終わっていたのは……」
「そうじゃ、主らのプライベートまで邪魔しちゃ悪いからのぉ」

 この国では時間が共有できるのか、そういう意味ではありがたいかも。

「そうでしたか、時計の復元とかはできるんですか?」
「それはのぉ~あと1歩と言ったところじゃ、1年で3分程ずれるんじゃよ」

 それは妥協してもいいレベルじゃないか?

「十分な気がしますけど」
「普通ならそうなんじゃが、ワシらドワーフは物作りに特化した種族だからのぉ、妥協できんのじゃ」

 とりあえず普段から腕時計とかしていても問題なさそうだ。

「はぁ、もしかして暦も……?」
「うむ、ドワイライト国内なら通じるぞい」
「でもカレンダーはないですよね」
「そうじゃのぉ」
「ありますよ、そこからは見えないですが、こちらに」

 自分が立っている所から少し移動したらあった。

「へぇ、日時管理はばっちりですね」
「あぁ、これも結構必要だと言っていたからのぉ」

 大陸内で共有とかしないのかな?時間と日付だけでも共有できれば十分だと思うんだけど。

「国内だけでしか通用しないんです?」
「そうじゃのぉ、時計が出来れば暦と一緒に周辺諸国と共有していきたいんがじゃ肝心の時計がのぉ」

 ドワーフならではの拘りなんだろう。

「そうですか」
「「「おはようございます」」」

 5人の白衣を着た女性達が来た。ドワーフだけじゃなく人、獣人、リンクル族と多種族だった。

「「おはよう」」
「おはようございます~」
「おはようございます!」

 ジルさんとナンニャさんは上司らしい感じの挨拶だ、ユキは元気いっぱいだな。

「あとは明けのロアナさんとモアナさんだけですね」

 気のせいか?聞き覚えのある名前が聞こえた気がした。

「「おはようございます~」」

 病棟側から入ってきた2人を見て驚いた。ハイエルフのロアナとモアナの姉妹だった。

「「「あっ」」」

 お互いに気づき、3人の声が被った。
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