【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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願いを叶える薬

第79話 男の正体

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 ペスト対応をする事約5年、絶対にウォーゼン国内の町だけじゃないと思う、行った村や町は100や200とかそういうレベルじゃなかった。

「ふむ、これで大丈夫だろう」
「この町はこれでおしまいですか……」

 正直昼夜問わず、休みなしでの対応は心が荒む、患者を相手にするとスイッチが入り集中できるからいいけど町から町へ移動する間は集中が切れる。この間が無ければいいのになんて何度思った事か。

「いや、黒死病の対応はこれで終わりだ、お前のおかげでこの世界の人口が2割まで減る未来はなくなったからな」

 まぁ中世の地球でもヨーロッパ全人口の3分の1が死亡したと記録に残っている。それ以前の文明レベルなら世界の人口が2割まで減っても別におかしくはないか。

 というか未来視ね……。創造神ユスチア様も確定した未来は見えないとか言っていたがそれが出来るという事は、同等かそれ以上の立場なんだろうか?

「あなたは何者なんです」
「ふむ、少し場所を変えるか」

 そう言うと、街の風景が一転して、どこかの草原の風景が目の前に広がった。

 こっちの同意とか無視して移動するのやめてほしい。

「さっきの質問だが、だいたい察しがついているんじゃないのか?」
「ユスチア様と同等かそれ以上の方」
「同等かそれ以上というのは違うな、私はこの世界の運命を司る神だが、同時にこの世界の破滅を防ぐのが役割だな」

 神様か大体は当たっていた。

「ユスチア様とは上司と部下ですか?」
「そうだ」

 同等かそれ以上が違うというなら彼の方が部下なんだろう。

「んじゃ自分の仕事はこれで終わりですよね?」
「そうだな、礼として何か願いを1つ言え出来る事なら叶えてやろう」
「可愛い嫁ちゃんに引き合わせてください!」

 願い事なんてこれしかない!これがこの世界に来た理由なのだから。

「それは俺が何かしなくても叶うが?他にないのか?」

 この世界に来て早7年願い事が叶うことなく22歳ですよ!

「可愛い嫁ちゃんに会うためにこの世界に来たのに、全然会えないじゃないですか!」
「はぁ~、それを俺に言われてもな、だがなお前は既に相手に会っているんだよ」

 神と名乗る男はため息を吐きながら答えた。

 誰だ?今まで会って来た恋愛対象になりうる女性を思い返してみる。

 ドワーフのミルちゃんか?確かに友達みたいな夫婦関係ならミルちゃんがよさそうだけど、違う気がする。

 紅の翼の獣人のハンナ?明朗快活な感じの彼女には確かに惹かれる物はあるが違う気がする。

 アイアンフォースのルーシェル?確かによさそうだな、だがシェリーはあり得ない、ゴールデンレトリバーの獣人と思しき人?

 プロズ王国王女のリタ?身分的なものがおまけで付いてきそうだ嫌だ。

 ハイエルフのロアナ・モアナ姉妹?妹のモアナちゃんは可愛いと思ったけどロリコンじゃないからな、幼女には興味ないし。

 エリウス・ユスチアの船長マイア、副船長マリベル?

 ざっと思い返したが、どの女性もしっくりこない。
 ただこの中から選ぶなら、お姉さんって雰囲気のマイアか、姉御肌って雰囲気のハンナとマリベルは良いんだけどな。

「本当に会ってます?」
「あぁ確実に会ってるな」

 ん~?

「自分何時結婚します?」
「ん~3か月以内だな」

 男は少し考える様子を見せた後答えた。
 3か月なら近いうちにって感じか、はっきり見えているならいいかな?

 他の願い事は旅の目的エンシェントドラゴンに会う事かな?

「んじゃ、エンシェントドラゴンの所まで連れて行ってもらえません?」
「それは私だが?」

 ん?

「えっと?」
「私がエンシェントドラゴンのシーザーだが?信じられぬならそっちの姿になろうか?」
「ぇ?」

 と思っていると男は自分から少し離れ、巨大なドラゴンに姿を変えた。

「そっちの狐は最初から私に気づいていたようだがな」

 腕の中にいるユキはウンウンとばかりに首を縦に振っていた。

「そうなのか……、もしかして不機嫌だったのが機嫌よくなったのって……」
「あぁ、私からの依頼を手伝ってくれたら願いを叶えてやると言ったら機嫌がよくなったな」
「ユキの願いは、人になる事ですか?」
「そうだな」

 ん~願い事叶えるエリクサーを作るために会おうと思っていたのに、それとは別に行きの願い事が叶うのか、血いらなくなったかな?材料あるし、一応貰っておこうか?

「血を少し分けてもらっても?」
「それ位は構わんが」

 そう言うとドラゴンは、爪で自分の身体を傷つけた。

「ほれ受け取れ」

 ほれ受け取れ言われても、結構な出血量なんだが、数滴で良かったのにと思いつつ、空きのペットボトルに血を入れた。

「ありがとうございます」
「うむ、それで願い事は?」

 今のは願い事に入らないのだろうか?

「今のは……?」
「そんなもの願い事でも何でもなかろう」

 そうですか、ん~願い事願い事……。本来の旅の目的地ドワイライフ王国王都クロットに送ってもらう?

 正直それしか思い浮かばなかった。

「ならドワイライフ王国王都クロットまで送ってください」
「それ位は構わんが、他に願い事はないのか?」
「ん~……」
「まぁ良い、背に乗れ」

 あれ?また瞬間移動みたいな感じで移動するんじゃないの?

「飛んでいくんです?瞬間移動とかは……?」
「そっちでもいいが」

 というと、元の人型に戻った。

「なら行くとしようか」

 と男が言った瞬間、草原の風景から、王都クロット正門前に移動した。

「ありがとうございます!」
「いやいい、そなたの願いの分は、その狐から聞いた。教会から狙われないようにしてほしいとな、その願いは叶えた。その狐の願いは直に叶う」
「キュ~♪」

 あぁそういえば、教会の教皇派から逃げるためにここ目指してたんだっけか、したらマバダザに帰ってもいい気がしてきた。

 まぁいいか、しばらくはドワイライフ王国での暮らしを堪能しよう。

「ありがとうございました」
「いや、礼を言うのはこちらの方だ、また何かあれば俺を訪ねてこい」

 尋ねる事なんてもう無いような気がするが。

「その時はよろしくお願いします」
「あぁ、ではな」

 と一言残して男は姿を消した。
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