【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

文字の大きさ
上 下
53 / 91
願いを叶える薬

第53話 ミグニーのハイエルフ達

しおりを挟む
 翌日の夕方、港の桟橋でユキと釣りを楽しんで宿に戻ると、宿のおかみさんから。

「ロアナちゃんから手紙を預かっているよ」

 と言われ、おかみさんから手紙を受け取り中身を見ていると、“手紙を読んだら竹林の宿か酒場まで来てほしい“と書かれていた。

「すいません竹林の宿ってどこですか?」
「あぁ大通りを港の方に下っていくと広場があるの解かるかい?」

 たぶん昨日一緒にリンゴを食べたところだと思った。

「そこならわかります」
「その広場手前の左の路地を一本入った所にあるよ」
「ありがとうございます」

 早速宿を出て竹林の宿に向かった。

 広場手前の路地を左に行くとすぐにそれらしき宿があり、入口の上に“竹林の宿”と書かれていた。

 入り口を入ると、自分たちが居た海猫亭とは違い、1階はレストランのようになっていた。

「いらっしゃい、1人と1匹かな?」

 自分たちに気づいた従業員らしき女性が寄って来て聞いてきた。

「あ、いえ、ロアナさんを訪ねてきたんですが」
「あぁ、あそこの親子は今部屋に戻ってるね。空いてる席に座ってまってておくれ」

 と言われ辺りを見回し、空いている円卓を見つけ座って待つことにした。

 しばらくすると、ロアナとモアナ姉妹とフィルそして後ろ髪を結んだロアナと同年代くらいの男性が降りて来た。もしかしてあれがお父さん?

「あ、お姉ちゃんあそこ」

 最初に自分たちに気づいたのは妹のモアナちゃんだったようで、気づくなり手を振ってきた。

 膝の上で甘えモードのユキを抱きかかえ一度立ち上がりこちらも手を振り返すと、3人がこちらにやってきた。

「お待たせしました。こちらが父のリオスです」
「リオスです。よろしく誠明君、娘たちを助けてくれてありがとう」

 ロアナさんと同年代と思しき男性はやはり父親でしたか。優しい感じの人で良かった。

「自分は伊東誠明と申します。こっちが相棒ユキです。よろしくお願いします」
「あぁ、座ろうか」
「はい」

 ロアナさんもモアナちゃんも座りフィル君はモアナの膝の上でお座りしていた。

「食べながら話をしようか、誠明君は食べれないものはあるかい?」
「いえ、特に食べれないものは無いです」
「そうか、それではおすすめコースにしようか」

 その後、リオスさんは従業員を呼び色々な物を注文をしていた。

「さて、君は僕の父とエリクサーの件で話がしたいんだったよね?」
「はい、可能ですか?」
「うん、いいよ、ただオリビの町で少し待たせてしまう事になってしまうけどいいかな?」

 オリビに戻るって言ってたし、港町かなんかかな?

「無理をお願いしているのはこちらなので大丈夫です」
「そうか、父がオリビまで来てくれるとは思うが、そうじゃない時は道なき道を歩いて我々の住処に来てもらうことになるがいいかい?」
「道なき道ですか?」
「そう、エルフ達は定住する集落があるんだが、我々は1年ごとに住処を変えていてねそのためオリビから今の住処までは道がないんだ」

 遊牧民ならぬ遊森民なんだろうか?

「その時はがんばります」
「うん、それからもう一つ、エリクサーの材料であるドライアドの実は我々にとっても大切な物なんだ、もしかしたら手に入れるのは難しいかもしれないよ」

 まぁ願いを叶える薬の素材だし入手が難しいだろうってのは予測していた。

「そうですか……、ドライアドの実ってどんなものなんですか?」
「そうだね、ミグニーの所々にドライアド達が育てている木があってね、その木の実なんだ、我々が1年おきに住処を移しているのはドライアドの実の恩恵をあずかる為に、実のできるドライアドの木の近くに移り住んでいるからなんだ」

 毎年実を着けるわけじゃないのか、実をつける条件みたいなのはあるのだろうか?

「実をつける条件ってあるんですか?」
「あるよ、翌年実を付けるドライアドの木周辺は魔素が濃くなるんだ、濃くなる事でドライアド達が活発化して木を育てるんだよ」

 もしかして魔素を放出しまくればドライアド達が集まってくるのかな?

 もしそうなら当分実のならない場所で自分の体内の魔素を放出しまくれば……。

「そうなんですね、オリビ近くにもドライアドの木ってあるんですか?」
「あるけど、もう枯れてしまっているから実を付ける事はないんじゃないかな?」

 枯れてるのか、違うところを探すべきなのかな?

「もしもの話ですけど、自分がいる間に実ったらもらえたりします?」
「そうだね、それは問題ないと思うよ、我々が見ていた木以外で実ったなんてのはよく聞くしその時は見つけた人に所有権があるからね」

 よっし言質を取れた。試せることは試そう。

「月の雫について何か知ってますか?」
「ごめんね、ボクは製薬関係はさっぱりなんだ」
「そうですか」

 ドライアドの実、月の雫、エンシェントドラゴンかフェンリルの血と何か、果たして集められるのだろうか?

 その後は夕食を食べながらいろいろな話を聞き、明日の朝出航するということになった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...