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放浪の旅の始まり

第51話 ハイエルフと精霊

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 翌朝、宿をチェックアウトし、ドワイライフ方面に行く船探しに港に行くことにした。

 昨夜盛り上がっていた屋台は半分程開いていたが、まだ開いていない屋台も多くあった。

 港の方に向かっていると、昨夜トラブルがあった屋台を見ると、若い女性と女の子が木の板なんかを出し修理をしていた。

「あっ!昨日の!」

 女性がこっちに気づいたようで近寄ってきた。

「すいません、夕べはありがとうございました」
「キュィ~♪」

 自分が返事する前に足元にいるユキが返事していた。

「あぁいえいえ」

 正直自分は何もしてないからな。

「ユキちゃんもありがとうね~」

 女性はしゃがみユキの頭を撫でながらユキにもお礼を言っていた。

「あの~もしこの後お時間あるようでしたらお礼をしたいのですが」
「あぁ、いいですよ、ドワイライフ方面に行く船を探しに来ただけなので」

 嫁ちゃん探ししている最中だし、綺麗な女性の誘いを断るわけもなく了承した。

「そうなんですね、この先に憩いの場があるのでそちらで、お話しませんか?」
「はい」

 昨夜は気づかなかったが、女性を見ると耳が尖っていた。エルフかな?

「モアナ、フィルいくよ」
「は~い」「クィッ」

 と、2つの返事が聞こえた。返事のした方を見ると、昨夜の女の子とフェネックの様な子がこっちに寄って来た。

「あ、私の名前はロアナ、こっちは妹のモアナとグレーフィフォックスのフィルです」
「モアナです」

 そう言うと駆け寄ってきた女の子が軽く頭を下げた。

「自分は伊東誠明でこっちはホワイトフォックスのユキです」
「キュィ~♪」
「2人ともよろしくね」
「キュィ!」
「よろしく」

 自己紹介を終えるとロアナさんは昨夜自分とユキがご飯を食べていた広場に移動し。近くの花壇に縁に腰掛けた。

「この辺でいいですよね?夕べ貸していただいたタオルをお返しますね」

 あぁ女性に渡してそのままだったか、持ち込み品だから別に返さなくてもよかったのだが。

「別に返さなくてもよかったのに」
「そう言うわけに行きませんよ」

 女性からタオルを受け取ると血がついてないのを見ると洗ってくれたようだった。

「それから、売れ残りで申し訳ないんですけどこちらをどうぞ」

 そう言って手渡されたのは昨夜屋台の周囲に散らばっていたリンゴの様な物だった。

「これは売り物じゃないんですか?」
「売り物ですけど明日か明後日には店じまいですからね、全部捌けなくて……」

 ちょっとだけお姉さんの好感度アップの為に全部買おうかななんて思ってしまった。

「んじゃありがたく」

 齧ってみるとまんまリンゴだった。

「はい、ユキちゃんもどうぞ~」

 ロアナが地面にリンゴを置くとユキもすぐに齧りついた。

「モアナもフィルも少し休憩しましょ」
「クィッ」

 モアナちゃんもフィルもロアナからリンゴを受け取ると、食べ始めた。2人が食べたのを確認しロアナもリンゴを食べた。

「そういえば誠明さんは教会に追われてるんですか?」

 ぇ?

「何でそれを?」
「あなたがこの世界に来てからずっとそばに居る精霊さんが教えてくれたんですよ」
「精霊?」
「えぇ、私達ハイエルフはみんな精霊を見る事もできるし話をすることも出来るんですよ。あなたがこの世界に来た時に近くにいた水の精霊さんが、あなたに興味を持ったみたいでずっとそばに居たみたいなんですよ」

 精霊信仰があるとは聞いていたけど本当に存在するのか、この世界に来た時からずっといる精霊……、見えないストーカーとか怖っ、ってかハイエルフ?

「ハイエルフってエルフとは違うんですか?」
「似てますけど異なりますかね?」

 なぜ疑問形で答える?

「というと?」
「厳密には大きな差はないんですよ、エルフの方々と違うのは、精霊が見えたり精霊と話が出来るかどうかとか、後は寿命が200年程ハイエルフの方が長いくらいです」

 寿命の差か、なんとなくだが日本人と外国人とかそのくらいの違いなんだろうなとか思った。

「そうなんですね、それで精霊さんから教会の話を?」
「はい、ちなみにまだあきらめてはいないみたいですが、今あなたを追っている人達はカラドゥの町を越えたばかりの所でマウントディアに苦戦して進めないようですよ」
「そこまでわかるんですか?」
「精霊さん達は同じ属性精霊同士情報共有していますからね、今この時の状況位は把握できますよ」

 何ともうらやましい精霊ネットワーク、その場にいなくても状況を知る事が出来るとか。

「そういえば、何かお礼しなきゃでした。ドワイライフに行くと言ってましたよね?」
「そうですね、教会の手の及ばない国にって思っています」
「そうですか、それでしたら数日中に私達も出発するんですが、私達と一緒に行きませんか?」
「ん?3日後にドワイライフに向かうんですか?」
「いえいえ、ドワイライフに向かうというより、その隣にあるミグニーのオリビって町に戻るんですよ」
「戻るって事はミグニーって国出身なんですか?」
「そうです、国って表現が正しいかわかりませんが、ミグニーは全域が森に覆われてるんですよ、その為エルフの方か私達ハイエルフしかいない地域なんです」

 ミグニーもある意味教会の手が及んでいない場所なのか。

「ミグニーってどのあたりに有るんですか?」
「そうですね、プロズ王国からみると、ドワイラフの奥になりますね、なのでアーテスまで送り届けるとかなら構わないと思うんです」

 通り道なのか、お言葉に甘えようかな?というか、この子船持ってるのかな?

「ありがたいのですが、船を持ってるんですか?」
「はい、今こちらに向かっているお父様が船を持っています。お父様達が戻り次第出航することになっています」
「じゃあお願いしても良いですか?」
「はいもちろんです♪ユキちゃんの方は何をすればいいかな?」
「キュィ~ッキュゥ~キュ」
「んと、ちょっと待ってね……」

 ロアナは何か考える素振りを見せた後。

「あぁなるほど、魔物から人になる話を知りたいのね、ユキちゃんは人になりたいの?」

 直接ユキの話を理解した感じではなかったが、精霊が通訳しているのかな?

「キュッキュ!」

 ユキは人になりたかったのか、だから集落でもその話をロッジに聞きたかったのか、ってか人になってどうするつもりだろう?

「そっか~ごめんなさい魔物から人になる話は知らないけど、ユキちゃんの願いを叶える方法は知ってるかも」
「ッキュ!?キュィッキュ!」

 ロアナから思いもよらない答えを聞いた。
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