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放浪の旅の始まり

第44話 カラドゥの町

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 ザック達がいるマバダザを後にして1週間何事もなくガラドゥの町に着いた。

 ガラドゥの町は何というかこれから山越えをする人達の最後の町といった感じだった事と、山越えを考えている人が殆どいない事が気になった。どこかのグループに混ぜてもらおうと思っていたのだがその想いは儚くも散ってしまった。

 とりあえず時刻も夕方だったので、ユキを服の中に入れ、この先の道の状況等を聞くために酒場に寄った。

「はい~いらっしゃい~空いてるところに座ってね~」

 空いている所か、カウンター席が空いてるからカウンター席でいいかなと思いながらカウンター席に座った。

 ユキは自分の襟から顔だけを出して辺りをキョロキョロしていた。

「あら、お稲荷さんですか~?」

 狐をお稲荷さんと表現するのは初めて聞いたな。

「ここいらでは狐をお稲荷さんって言うんです?」
「そうですよ~はるか昔この先の村で病が流行った時聖女様が寄ってくれてね~その際聖女様が狐さんの事をお稲荷さんと言っていたんですよ~」
「へぇ~この先ってカッチョイスまでに行く間に村あるんです?」
「3つの集落がありますよ~全部合わせて1つの村ですね~、どこも獣人達が主の集落なんですけどね~」

 村があるなら、往来がありそうなんだがな。と思いながらカウンターの中に居るお姉さんを見ると、お姉さん自身も獣人なのがわかった。耳の形状をみると狼かな?

「お姉さんは狼の獣人なんです?」
「お~そうですよ~狼系の獣人ですよ~」
「村の人は結構来るんです?」
「結構というか10日に一度は来ますね~取れた羊毛やヤギの乳等の作物や魔物や動物の素材を持ってきてくれるんですよ~」

 入って早々いい話が聞けたが、その獣人達について行けないかな?

「ここから村って結構距離あるんです?」
「ありますね~、一番近い所で普通の人だと20日間ほどかかると思いますよ~ディア系の魔物が多いので慣れてないと辛いですけどね~」

 あ~よくない情報だった。

「獣人だから10日に1度来れる感じなんですかね?」
「そうですね~まぁ毎回同じ人ってわけでもないですよ~」

 さてどうしたものか、この先の状況を聞いておくか。

「ここからカッチョイスまで行くんですが何かアドバイスありますか?」
「山越えか~マバダザから船って思ったけどこの時期シーサーペントの産卵期で海はあれか~、そうだね~無理しないで早めに休む事をお勧めするよ、後夜は火を絶やさないようにね~、あとは~3つ目の村を越えたあたりから今の時期は雨季だから注意してね」

 日が暮れ始めたら早めに野営準備と焚き火は絶やさないようにか、雨季はどうすることも出来ないし……。

「雨季はいつ頃位まで?」
「そうだね~寒くなる頃には収まるよ」

 お姉さんの見えない所でスマホを出しカレンダーを表示させると8月10日と表示されていた。

 寒くなる頃っていうと、10月か11月位か?
 今度は雪で悩まされそうな時期に突っ込むな。

「雪は積もるんですか?」
「そりゃ積もるよ~このあたりは王都とかと違ってもう雨季の終わり頃に雪が積もるんだよね~」

 山越えを急いで雨季でも構わず進むかな。足止め食らって追いつかれるのも嫌だし。

 明日の朝出発してカッチョイスまで急ぐか。

「ところでお客さん~注文してくださいな~ここは情報屋じゃないですよ~」
「あ~すいません、おすすめ料理ください、あとはユキにも食べれるお肉系のなにかで」
「は~い、ディアしゃぶいっちょ~」

 お姉さんがそう言うと、奥の方から「へい」みたいな声が聞こえた。

 まさかのしゃぶしゃぶ!?
 と思っていたが、出されたのは本当にしゃぶしゃぶだった。

「もしかしてこれも聖女様が?」
「そうですよ~」

 昔ここに来たっていう聖女って“こずえさん”なんだろうなと思った。

 その後、お肉を数枚そのまま顔だけ出しているユキに食べさせつつ、自分もディア肉のしゃぶしゃぶを堪能した。タレには醤油みたいな何かをベースにし柑橘系の何かが入っているのは分かったがそれ以外は良く分からなかったが、結構おいしかった。

 情報収集と夕食を終えて店をでたあと宿屋に行き部屋を取って寝ることにした。


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