【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

文字の大きさ
上 下
38 / 91
診療所開設!

第38話 姫様の治療報酬

しおりを挟む
 自分たちの姿に気づくとウォズさんが馬車から降りて来た。

「誠明殿この後城まで付き合ってくださらんか?」
「えっと……、構わないですけど……、今度は何か……?」
「王が少し話をしたいと」
「はぁ……」

 今度は何だろうか?

 促されるがまま馬車に乗り城へ向かう事になった。

「カイルの病の事はわかりましたかな?」
「えぇ、胃がんですね」
「胃がんとは?」

 改めてウォズさんに胃がんについて話していると城に着いた。

「今日は王の私室の方に案内します。敬語等は不要ですので普段通り話していただいて大丈夫ですよ」

 と言われてもな、なるべく普段通り話せるように意識しておこう。

 王の私室は姫様の向かい側にあった。ウォズさんが3回ノックすると中から声が聞こえ扉を開けて中に入った。

「おぉ来たか、忙しい所呼び出してすまんな、少し話をしたくてな2人ともこっちに座ってくれ」

 王様と2人のメイドがお茶を注いだりしていた。

 王様に促されるように席に着くと、ユキを膝の上に乗せた。

「誠明殿今日来てもらったのは娘の治療に対する褒美についてだ」

 そういえば治療費とか貰ってなかったことを思い出した。

「あぁなるほど、たいした手術でもなかったですし金貨1枚でいいですよ」
「安すぎやしないか?」

 王様からの答えがあった。

「料金設定ですが、診察だけで銀貨5枚、薬の処方ありで最大大銀貨2枚まで、手術は無いようにもよりますが金貨1枚~10枚と行った感じですね」
「命を救うにしてはずいぶん安い値段設定のようですが……」

 以前にもアイアンフォースの団長からも同じような事を言われた。

「お金がないからって生きる事を諦められてもと思っているので、相手次第ではその人が払える金額まで下げたりしますよ」
「なるほど、わしらからすれば安く思うが、貧しい者達からすれば大金か」
「そうですね」

 王様はウォズさんの方をちらりと見るとウォズさんが机の上に金貨1枚をだした。

「まずは姫様の治療費として納めてください」

 まずは?他に何かあるのか?と内心思いながら置かれた金貨を受け取った。

「確かに受け取りました」
「もう一つ、娘を娶る気はないか?」

 王様から衝撃的な事を言われた。

「……ぇ?」
「娘を娶る気はないか?」

 聞き間違いじゃなかったらしい。

「いやいやいや、そんな扱いは……」
「娘も誠明殿ならと言っている」

 本人の気持ちも確認済みですか、たしかに元気になってからの姫様は普通に可愛いとは思う。歳が近いせいからかも選択肢としてはありだと思うが一国の姫様と結婚とか荷が重すぎる。

 嫁ちゃん探してこの世界に来たけど、さすがにこの選択肢は取れないと思った。

「えっと、申し訳ないのですがその話は……」
「誠明殿、娘の何が不満なのか聞かせてもらってもいいか?」

 王様の口調が少し怒ってるような口調になっていた。

 自分は必死に頭を働かせ言い訳を考えた。

「娘さんに不満というのは無いです。どちらかというと自分の身の上に関わる事でございます」
「ほう、そなたの身の上が娘と結婚できない理由になるのか?」

 完全に怒ってる。

「はい、まずは自分は医者です。一歩間違えれば人殺しとののしられてしまいます」
「わしも悪人の首を飛ばすように指示したりするぞ」

 それもそうか、と思った時、正当なる理由を思い出した。

「それだけではございません。以前教会の関係者の方から、自分の知識や技術は、異端審問官や教皇派の方に狙われるかもしれませんその際は教会の手が及ばないところへ逃げろと言われました。もし狙われたときは姫様にも危険が及ぶのではないでしょうか?」

 自分の発言を聞き終わると王様とウォズさんは顔を見合わせていた。

「確かに、君の持つ知識は彼等が狙ってもおかしくないものですね」
「そうだな、異端審問官にその下につく狂信者に狙われるか……」

 お、正当なる理由として受け取ってもらえただろうか?

「はい、もし狙われたときは国を出るつもりです」
「そうなるでしょうな、この国では創造神教の影響力が強い、どこに行くか決まっているのですか?」
「はい、南にある帝国か南東にある獣王国なら教会の手が及ばないと聞いています」

 帝国にはいく気はないが、とりあえず選択肢としてはあるので伝えた。

「ハリー、彼にドワイライフ王国への推薦状を渡しては?」
「ドワイライフか、たしかにあそこなら……」

 宰相であるウォズさんが、国王を名前呼び最初に敬語じゃなくてもいいと言っていたしそういう事なのかと実感した。

「ドワイライフってなんですか?」

 そう尋ねるとウォズさんが、空間から大きな地図を取り出し机の上に広げた。

 この人もアイテムボックス持ちなのか。

「獣王国北部にある王国ですね、この国からだと海を挟みペバッチ共和国を越えた先にある国ですよ」

 ウォズさんが、立ち上がり指で現在地を差しそのまま東方向にずらしながらドワイライフの場所を教えてくれた。

「へぇ」
「君はドワーフ達と仲がいいと聞いています。この国にいるドワーフの大半はドワイライフと技術交流出来てもらっているドワーフ達なんですよ」

 技術交流か、鍛冶や建築技術を教わっているって事だろうか?

「鍛冶や建築技術を教わっているんですか?」
「そうです。ドワーフ達は鉱石や岩石について詳しいですからね。対して私達のほうは農業、林業、漁業等の技術者をドワイライフに派遣しているんですよ」
「なるほど……、もしかしてさっきの推薦状は……」
「そうです、もし追われる事になった時、我が国の技術者としてドワイライフに行ってみてはと思いまして」

 ザックやジル達の故郷なんだろうか?興味が湧いた。

「ドワイライフに教会はないのですか?」
「ありますが、派遣されている技術者の為の教会ですからね、ドワーフ達は創造神よりも精霊を信仰していますから教会の影響力はないに等しいんですよ」

 ドワイライフ王国か、帰ったらザックやジルにどんな所なのか聞いてみるか。

「なるほど」
「ウォズの言う通り誠明殿にはドワイライフへの推薦状を渡そう、ドワイライフに行ったら城に行き推薦状を見せればいい」
「それならありがたく頂戴します」
「そうか、では後日そなたの所へ届けさせよう。それともう一つ」

 王様がウォズさんの方を見ると、ウォズさんが机の上に鉢植えをだした。

「これってシェリーさん達が取りに行ったやつじゃ……」
「月夜花、エリクサーの素材と言われている花だ、娘が元気になった今必要なくなってしまったからな」

 何かの役に立つ時が来るんだろうか?

「いいんですか?」
「かまわないよ」
「では、ありがたく」

 机の上に乗っている月夜花の鉢植えを受け取ってアイテムボックスへ入れた。

「他にも何かあれば言ってくれ、婿殿になってくれんのは残念だが教会が絡むとなれば仕方ない……」

 王様は、本当に残念そうにため息をついていた。

「ありがとうございます」
「それではお開きにしましょうか、入口までお送りしますよ」
「ありがとうございます」

 その後ウォズさんと共に王様の私室を後にし入口まで見送ってもらった。

 馬車で送るという話は遠慮し、露店巡りをしながら自宅に帰った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...