【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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診療所開設!

第34話 造血幹細胞移植

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 アイアンフォース団長クルツが本日最後の患者だったらしく、クルツを診療所入り口まで見送ろうと入口まで行くと、ちょうどシェリーが入ってきた。

「ちょうどよかったみたいね」
「だな、後は任せた」
「えぇ」

 もしかしてこのまま城まで行くのかな?
 良い時間だし昼食取ってからにしたいんだけど……

「もしかして、すぐ行くんですか?」
「そのつもりだけどなにか?」
「すこし、お腹に何か入れてから行きたいんですけど……」

 少し間を置いてからシェリーが答えた。

「待ってるから食べてくればいいんじゃない?」
「じゃあ、お言葉に甘えて、ユキ、フワいくよ」
「キュッキュ!」「グワッ!」

 1階にある厨房で、ユキ用に干し肉と野菜、フワ用に野菜を与え、自分のカップ麺用にお湯を沸かした。

「そういえば、フワって空飛べるの?」
「グワッ!」

 と言いながら頭を縦に振った。

「んじゃこの後城に行くんだけどフワもくるか?」

 そう聞くと、激しく左右に首を振った。

 だろうなぁ、ある意味処刑場だったし、そうだよなと思った。

「んじゃ3階の部屋の窓あけておくから、自由にしてなよ、もう捕まるなよ?」
「グワッ!」

 フワが頷いたのを確認し、先ほどクルツから貰ったマジックバッグを首にかけてやった。

「さっきのクルツからの診療報酬だって、使う人がいないからユキとフワにってさ」
「グワ♪」

 フワはとてもうれしそうで、カバンの蓋を開けたり閉めたりしていた。

「キュ~?」
「ユキの分もあるよ」

 ユキにもつけてみるが、カバンが大きすぎて引きずってしまう……

「ユキはもう少し大きくなってからだな……」
「キュ……」

 残念そうに頭を落とすユキだが、こればかりは仕方ないと思う。

 腹ごしらえを済ませて、フワを抱えて3階に上がり、フワを降ろし部屋の窓を開け、1階に戻った。

 その後、ユキを抱えてシェリーと共に城に向かった。

 城に着くと、門番の人が直ぐに城の中に案内してくれた。

 案内された先は王女の部屋だった。

 中に入ると既に王と王妃が待っていた。

「やっと来たか」
「すいません」
「いや、よい、今は娘も起きてる昨日の説明をもう一度頼めるか?」
「了解です」

 抱えていたユキが床に降ろし、その後、昨日説明した事を丁寧に説明し3人が疑問に思った事を常にしてくるのでそれに対しても答えた。

 王女は病気のせいで元気がないが結構賢明な感じだった。

「大丈夫そうですか?」

 十分説明もしたし、王、王妃、王女と3人共ちゃんと理解が出来たようだった。

「あぁわしは大丈夫だ」
「私もです」「私も」

 3人の理解をしてもらったうえでもう一度質問をした。

「造血幹細胞移植をうけますか?」
「リタお前の為の手術だ、お前が答えなさい」

 当たり前のことだが、王女本人に決断させるようだ。

「お願いします」
「わかりました。王妃様、それでは先ほど説明した通りにお願いします」
「はい、メイア何人か呼んできてちょうだい」

 自分は王妃の造血幹細胞採取の際に使う診察台2つを出しつなげた。

 ドナーである王妃の準備だ下を脱いでもらい、中央に造血幹細胞採取の為の5㎝四方の穴があいた大きな布をかぶせてもらう作業までをメイドたちやってもらう予定だ。

「ワシらは隣の部屋に移動しようか」
「えぇ、終わったら呼んでください」
「はい、かしこまりました」

 増援を呼びに行くメイドのメイアに告げ王とユキと一緒に隣の部屋に移動した。

 別室でユキを撫でながら王と王妃の出会いとか婿養子で王家に入った事等の身の上話を王から聞いていると、ドアがノックされ、メイドが入ってきた。

「大変お待たせしました。王妃様の準備が出来ました」

 王女の部屋に戻ると、既に台の上で横になっていた。

「それでは、王妃様麻酔をかけますね」

 麻酔の素材と同様ロナン草で作った局所麻酔を

「えぇ」

 さぁ本番だ、王妃に麻酔をかける前に、部屋の中を“浄化”で綺麗な空間にしてから王妃に局所麻酔をかけ、採取するための体位に移行してもらった。

 王妃の麻酔が必要な範囲にいきわたるまでの間にもやる事がある。王女の癌細胞を浄化で消す事だ、王女が横になっている横まで行き、王女に声をかける。

「では王女様、あなたの身体を蝕んでいる者達を体内から消します。違和感があるとは思いますが自分を信じてください」
「はい、おねがいします」

 触診スキルを発動させ、王女の体内の癌細胞を確認しながら。

「浄化」

 と唱えると王女の身体全体が淡く光った。王女の体内を確認すると未熟な白血球を作り続ける造血幹細胞や未熟な白血球等異常をきたしていた細胞が王女の体内から消えていた。

「これで大丈夫です。少し休んでてください」
「はい」
 
 次は再び王妃の方だ、王妃の麻酔が必要な部分にいきわたったのを確認すると、造血幹細胞採取開始だ。

 採取用の注射器を取り出し、王妃を覆っている布の穴が若干ずれていたので直し腸骨の位置を確認し注射器の針を刺していく、予防接種等で使う注射器とは違い鉛筆の芯程の太さを誇る採取用の針を慎重に進めていった。

 触診を使いながらやっている為どこまで進んでいるかが良く分かるが、触診スキルだけではなく自分自身の感覚も使っていく、適切な場所に到達すると、王妃のにある造血幹細胞の量を確認しながらゆっくりと吸引していった。

 適量採取した後針を抜いた。

「それでは王妃様はしばらく、仰向けで安静にしてもらっていいですか?必要あればメイドさん達がトイレに付き添ってください」
「えぇ」「「「はい」」」

 採取した骨髄液が凝固しないように手首で回しながら次の手へ移行する。

 本来ならば、色々するがそんな道具もない為、このまま採取した液体を注射器に移し、王女の腕から体内へ注入していった。

 あとは王女の体内に入った造血幹細胞が上手く機能してくれることを祈りながら王女の体内をモニタリングしていた。

「どうだ?」

 移植手術中、室内の端でウロウロしていた王が話しかけてきた。

「一応移植手術に関してはこれで終わりです。あとは移植した造血幹細胞が上手く機能してくれれば大丈夫です」
「そうか、うまく行ったかどうかはいつになったらわかる?」

 まぁ、親としては早く結果を知りたい気持ちも分からんでもないが……

「直ぐにはわかりませんよ、経過観察する必要があります」
「そうか」
「しばらくは毎日顔を出しに来ますよ」
「頼む」

 移植手術は終わったけど、貴族達へのペストの説明はどうするんだろう?このあとやるのかな?と疑問が頭をよぎった。

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