【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

文字の大きさ
上 下
34 / 91
診療所開設!

第34話 造血幹細胞移植

しおりを挟む
 アイアンフォース団長クルツが本日最後の患者だったらしく、クルツを診療所入り口まで見送ろうと入口まで行くと、ちょうどシェリーが入ってきた。

「ちょうどよかったみたいね」
「だな、後は任せた」
「えぇ」

 もしかしてこのまま城まで行くのかな?
 良い時間だし昼食取ってからにしたいんだけど……

「もしかして、すぐ行くんですか?」
「そのつもりだけどなにか?」
「すこし、お腹に何か入れてから行きたいんですけど……」

 少し間を置いてからシェリーが答えた。

「待ってるから食べてくればいいんじゃない?」
「じゃあ、お言葉に甘えて、ユキ、フワいくよ」
「キュッキュ!」「グワッ!」

 1階にある厨房で、ユキ用に干し肉と野菜、フワ用に野菜を与え、自分のカップ麺用にお湯を沸かした。

「そういえば、フワって空飛べるの?」
「グワッ!」

 と言いながら頭を縦に振った。

「んじゃこの後城に行くんだけどフワもくるか?」

 そう聞くと、激しく左右に首を振った。

 だろうなぁ、ある意味処刑場だったし、そうだよなと思った。

「んじゃ3階の部屋の窓あけておくから、自由にしてなよ、もう捕まるなよ?」
「グワッ!」

 フワが頷いたのを確認し、先ほどクルツから貰ったマジックバッグを首にかけてやった。

「さっきのクルツからの診療報酬だって、使う人がいないからユキとフワにってさ」
「グワ♪」

 フワはとてもうれしそうで、カバンの蓋を開けたり閉めたりしていた。

「キュ~?」
「ユキの分もあるよ」

 ユキにもつけてみるが、カバンが大きすぎて引きずってしまう……

「ユキはもう少し大きくなってからだな……」
「キュ……」

 残念そうに頭を落とすユキだが、こればかりは仕方ないと思う。

 腹ごしらえを済ませて、フワを抱えて3階に上がり、フワを降ろし部屋の窓を開け、1階に戻った。

 その後、ユキを抱えてシェリーと共に城に向かった。

 城に着くと、門番の人が直ぐに城の中に案内してくれた。

 案内された先は王女の部屋だった。

 中に入ると既に王と王妃が待っていた。

「やっと来たか」
「すいません」
「いや、よい、今は娘も起きてる昨日の説明をもう一度頼めるか?」
「了解です」

 抱えていたユキが床に降ろし、その後、昨日説明した事を丁寧に説明し3人が疑問に思った事を常にしてくるのでそれに対しても答えた。

 王女は病気のせいで元気がないが結構賢明な感じだった。

「大丈夫そうですか?」

 十分説明もしたし、王、王妃、王女と3人共ちゃんと理解が出来たようだった。

「あぁわしは大丈夫だ」
「私もです」「私も」

 3人の理解をしてもらったうえでもう一度質問をした。

「造血幹細胞移植をうけますか?」
「リタお前の為の手術だ、お前が答えなさい」

 当たり前のことだが、王女本人に決断させるようだ。

「お願いします」
「わかりました。王妃様、それでは先ほど説明した通りにお願いします」
「はい、メイア何人か呼んできてちょうだい」

 自分は王妃の造血幹細胞採取の際に使う診察台2つを出しつなげた。

 ドナーである王妃の準備だ下を脱いでもらい、中央に造血幹細胞採取の為の5㎝四方の穴があいた大きな布をかぶせてもらう作業までをメイドたちやってもらう予定だ。

「ワシらは隣の部屋に移動しようか」
「えぇ、終わったら呼んでください」
「はい、かしこまりました」

 増援を呼びに行くメイドのメイアに告げ王とユキと一緒に隣の部屋に移動した。

 別室でユキを撫でながら王と王妃の出会いとか婿養子で王家に入った事等の身の上話を王から聞いていると、ドアがノックされ、メイドが入ってきた。

「大変お待たせしました。王妃様の準備が出来ました」

 王女の部屋に戻ると、既に台の上で横になっていた。

「それでは、王妃様麻酔をかけますね」

 麻酔の素材と同様ロナン草で作った局所麻酔を

「えぇ」

 さぁ本番だ、王妃に麻酔をかける前に、部屋の中を“浄化”で綺麗な空間にしてから王妃に局所麻酔をかけ、採取するための体位に移行してもらった。

 王妃の麻酔が必要な範囲にいきわたるまでの間にもやる事がある。王女の癌細胞を浄化で消す事だ、王女が横になっている横まで行き、王女に声をかける。

「では王女様、あなたの身体を蝕んでいる者達を体内から消します。違和感があるとは思いますが自分を信じてください」
「はい、おねがいします」

 触診スキルを発動させ、王女の体内の癌細胞を確認しながら。

「浄化」

 と唱えると王女の身体全体が淡く光った。王女の体内を確認すると未熟な白血球を作り続ける造血幹細胞や未熟な白血球等異常をきたしていた細胞が王女の体内から消えていた。

「これで大丈夫です。少し休んでてください」
「はい」
 
 次は再び王妃の方だ、王妃の麻酔が必要な部分にいきわたったのを確認すると、造血幹細胞採取開始だ。

 採取用の注射器を取り出し、王妃を覆っている布の穴が若干ずれていたので直し腸骨の位置を確認し注射器の針を刺していく、予防接種等で使う注射器とは違い鉛筆の芯程の太さを誇る採取用の針を慎重に進めていった。

 触診を使いながらやっている為どこまで進んでいるかが良く分かるが、触診スキルだけではなく自分自身の感覚も使っていく、適切な場所に到達すると、王妃のにある造血幹細胞の量を確認しながらゆっくりと吸引していった。

 適量採取した後針を抜いた。

「それでは王妃様はしばらく、仰向けで安静にしてもらっていいですか?必要あればメイドさん達がトイレに付き添ってください」
「えぇ」「「「はい」」」

 採取した骨髄液が凝固しないように手首で回しながら次の手へ移行する。

 本来ならば、色々するがそんな道具もない為、このまま採取した液体を注射器に移し、王女の腕から体内へ注入していった。

 あとは王女の体内に入った造血幹細胞が上手く機能してくれることを祈りながら王女の体内をモニタリングしていた。

「どうだ?」

 移植手術中、室内の端でウロウロしていた王が話しかけてきた。

「一応移植手術に関してはこれで終わりです。あとは移植した造血幹細胞が上手く機能してくれれば大丈夫です」
「そうか、うまく行ったかどうかはいつになったらわかる?」

 まぁ、親としては早く結果を知りたい気持ちも分からんでもないが……

「直ぐにはわかりませんよ、経過観察する必要があります」
「そうか」
「しばらくは毎日顔を出しに来ますよ」
「頼む」

 移植手術は終わったけど、貴族達へのペストの説明はどうするんだろう?このあとやるのかな?と疑問が頭をよぎった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...