【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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診療所開設!

第31話 ユキの幻影魔法

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 露店巡りしながら診療所に戻ると、既に2階に明かりが灯り話し声が聞こえていた。

 ドワーフ連中が既に宴会をはじめてるのかと思いながら、診療所の入口から中に入り2階に上がった。

 2階に上がり、扉を開けると案の定ドワーフ達が宴会をしていた。

 ただ、いつもは100%男だが、今日は違う大半が女性ドワーフ達だった。

「お~遅いぞ~ようやく戻ってきたのぉ~」
「こんばんは、何かいつもとメンツが違いますよね」
「なぁに、女性陣がな、たまには私らも変わった物を飲みたい!と騒ぎ始めてな今後は2グループずつ交代制で行くことにしたんじゃよ」

 今までは男ばかりでむさ苦しいと思ってたが、半数以上が女性になるだけで、大分雰囲気が変わっていた。おまけに自分たちで食材を買ってきておつまみだけじゃなく、サラダ等の夕飯として食べれそうなものが机に並べられていた。

「なんというか、今までお酒だけだったのに、今日は鮮やかですね……」
「そりゃのぉ~ドワーフの女性は基本料理でもてなすのが好きじゃからのぉ~今後は好きに食べてよいぞ、代わりに安く売ってやってくれ」

 それは全然かまわない、こちらも色々とごちそうになるなら対価を出さなきゃならないだろうし。自分の場合は持ち込んでいるものは無制限に出せるし、無料でも構わなかった。

「えぇ、それ位は構わないですよ、それなら今までの料金の2割位にしましょうか?」
「っほ!そんなにか!?」
「まぁ、自分もユキも、こいつも御馳走になりますからね」

 黒いアヒルの子の名前決めてなかったな。ジルがアヒルの方を見ながら。

「そのアヒルはディアダッグか、これから捌くか?」
「グワー!!」

 自分の腕の中で必死に首を振っている。

「こいつ言語理解もってるっぽいんですよ、なんで絞めるのが……」
「ディアダッグの卵は一級品だからのぉ、飼えばいいんじゃないか?」

 卵か、生卵ご飯食べれるかな?

 飼うにしても名前どうしようかな、肌触りの良い黒い羽だし、フワにするか?

「そうしようかと」
「あぁ、ほれそんなところで突っ立ってないで料理を楽しんでくれ」

 ジルに連れられ部屋の中央に案内され、いつもの酒販売会が始まった。

 しばらくお酒の販売していると、ユキの姿が見えなかった。

 どこ行ったんだろうと思っていると、部屋の端の方でザックたち数名と何やら話をしているようだった。

「ほぉそれがお前さんの姿か」
「ユキちゃん可愛いっすね~」
「なるほどな~」

 ユキの鳴き声が聞こえないのにもかかわらず、ザックたち周囲のドワーフ達と普通に会話しているような感じだった。

 販売を終えてユキとザック達が居るほうへ行くと。

「キューィ」

 ユキがこっちを向き飛びついてきた。慌てずにユキを受け止めた。

「さっきから何やら話してたみたいですけどなんかあったんです?」

 そう聞くとザックが教えてくれた。

「そうか、お前さんには見えないんだったな、ユキが幻影魔法で獣人の子を見せていたんだよ」
「会話してたみたいだったのは?」
「身振り手振りで色々答えてくれてたからな」

 ジェスチャーか、幻視が出来るなら幻聴とかも出来そうだけどな?

「ユキは喋れんの?」

 腕の中に居るユキに聞いてみたが。

「キュ~……」
 
 ちょっと悲しそうに応えた。

「幻が喋るわけなかろう?」
「ん~自分の理屈が、ユキの幻影魔法に当てはまるかどうかは知らないですけど、幻覚って5種類あるんですよ」
「ほう?その5種類とは?」
「幻視、幻聴、幻触、幻味、幻臭ですね、精神に関する病気になるとよく見られるんですが」
「ふむ、1つ1つどのようなものか聞いても?」
「いいですよ、じゃあまず幻視ですね、これは本来そこにあるはずのないものが見えるってやつですね、これはユキが子どもの幻を見せた事で出来てるんじゃないですかね?」
「そうだな」
「次に幻聴ですが、聞こえるはずのない音や声が聞こえるってやつです。もしかしたらユキが幻視で見せている子どもが喋ったようにみせることが出来るんじゃないかなと思ったんですよね」
「なるほどな、それでおまえさんが喋れるかを聞いたのか」
「えぇ、言語理解を持っているユキならそのうち出来そうですけどね」
「だろうな、ユキと喋れるようになるのは楽しみだな」
「キュッキュ!」

 自分には聞こえないし見えないしだけどね……。

「続いて説明しますね」
「あぁ頼む」
「幻触、なにかが触れられているとか、腕を虫が這っているような感覚があるとかがそれに該当しますね、ちなみに金縛りもこの部類に該当する物がありますね」
「金縛りか、身体が動かせなくなるやつだな、麻痺とは違うのか?」
「毒や薬なんかで原因が分かるのは麻痺なんでしょうけど、そうじゃないものは金縛りに該当するんじゃないですかね」
「なるほどな」
「幻味、これは例えば、その味が本来と違う味がするとか、口に何も入れていないのに変な味がするなどですかね、最後の幻臭は、何もないのに変なにおいがする等の事をいいますね」
「なるほど5つ感覚に作用することはできるんじゃないかと思っているんだな?」
「そうです、ユキの幻影魔法は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚それぞれに作用出来るんじゃないかと思うんですよね」
「そうなると、幻影に殺されることも可能なのか?」
「脳が錯覚起こせばそれも可能だと思いますよ」

 現に、脳が錯覚を起こせばパニックになったりして、過呼吸を起こしたりと呼吸器系に異常をきたすことが出来れば可能性はゼロじゃないと思っている。

「ふむ」
「キュ~~!」

 難しい顔をしているザックとは違い、ユキは何やら新しい発見!とでも思っているのか少しうれしそうに鳴いていた。
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