上 下
29 / 91
診療所開設!

第29話 浄化魔法実験2

しおりを挟む
 メイドのメイアと共に厨房に移動すると。調理員だろうか近づいてきた。

「メイアかどうした?」
「王様より、こちらの方に1羽のディアダックを渡すようにと」

 調理員と思しき男が自分を品定めをするように見た。

「ん、おまえさんここは厨房だ、魔物は中に入れんな」

 男がユキを見て言った。

「あ、すいません、ユキ、ちょっと外で待ってって」
「キュ~、ッキュッキュ!」

 最初は少し悲しそうに鳴いたが、直ぐに分かってくれたようだった。

「自分の名前は伊東誠明です」
「俺はここの厨房を任されているロックってもんだ、ディアダックなんかどうするんだ?」
「んと、浄化の実験?」
「食材を粗末にすんなよ……」
「ロック様、実験が終わったら処分はお任せすると」
「訳の分かんない実験されてもな食材にはならんだろう」

 そりゃそうだ、自分もなんかの実験で使った食材なんて食べたくはない。

「肉とかにはダメージはないので大丈夫だと思いますよ?」
「いやいい、王命なら仕方ないな……、ついてきな」

 そう言うとロックは厨房横の扉を開け中庭にでた。
 中庭には、いくつかの囲いがあり、豚のような何かの姿や、ホーンラビット等の姿があり、黒いアヒルの様な生き物も居た。

 ロックはその黒いアヒルの様な生き物の元に行くと1羽のアヒルの首を掴みこちらに突き出してきた。

「食材にもなりそうにない奴でやってくれ」
「了解」

 ロックがつかんでいる首の下あたりを掴んで地面に下ろす。

「終わったら厨房に戻ってこい、そいつは好きにして構わない」

 ん~良いのかな?とりあえず触診を発動させるとその理由が分かった、右足を怪我していて、人でいうなら蜂巣炎みたいな状態になっていたが、他に異常らしい異常は無いような気がするんだがな……、とか思っていた。

 とりあえず実験だ、暴れるアヒルをよそに、一部の白血球を消す事が出来るかどうかと、異常をきたしている造血幹細胞だけを浄化させることが出来るかどうか、この2つが出来れば、あの子の治療が出来る。

 とりあえず、適当に首の部分を流れている白血球だけをイメージして。

「浄化」

 すると、自分の握っている個所が淡く光り、直ぐに光が収まった。

 成功したかどうかと問われれば、おそらく成功しただろう、流れ続ける血液の中で一部分だけ白血球が存在しない箇所があったからだ、次に造血幹細胞だ、患者と同じアヒルの胸骨の造血幹細胞だけを消すイメージをしながら。

「浄化」

 今度は光は見られなかったが、触診でイメージしていた部分の造血幹細胞がすべて消えていた。

 これで放射線治療、化学療法の代わりとなれることが証明できた。問題はこのアヒルだ、どうしようか?

「グワグワ!」
 
 身体の異変を感じたのか、自分の手から逃げ出そうと暴れまくっている。

「ん~、貰って帰ろうかな?」
「グワ!」

 なんか急におとなしくなった気がした。

「あれ?自分の言葉分かる?」

 頭を上下に振っていた。

「グワ!」

 もしかしてこの子も言語理解もっているんじゃ……?と思ってしまった。

「んじゃおいで」
「グワ~グワ~」

 ちょっとうれしそうに鳴いていた。

 ん~この子もメスなのはわかるんだけど、自分としては動物や魔物じゃなくて人種の女の子に好かれてお持ち帰りしたいんだけどなぁとか思いつつ厨房に戻った。

「ん?終わったのか?」

 厨房に戻ると、ロックとメイアが待っていた。

「えぇ、問題なく」
「そうか、そいつ連れて行くのか?」

 ロックが足元のアヒルを見て言った。

「貰って良いです?」
「構わん、ケガしている奴を食材にはできないからな」

 まぁ、王様に出す食事にそう言うのは使うって事は出来ないよね……。

「んじゃありがたく頂戴します」
「あぁ」
「んじゃ、メイアさん戻りましょう」
「はい、それでは」

 厨房から出るとユキが隅っこでおとなしくお座りして待っていた。

 出てくる自分に気づくと駆け寄ってきたと同時に。

「キュ!?」
「グワッ!グワッ!」

 ユキはアヒルを見て次に自分を見てきた。

「キュ~~?」
「グワグワッグワ!」

 アヒルが必死に首を左右に振っていた。

 なんとなくだが、ユキは、私のご飯?とか言ってるのかな?
 それに対してアヒル必死に否定している感じがしたが、何を言っているのか分からない。

「ふふふ、なんだか会話しているみたいですね」

 初めてメイドさんが笑った気がした。

「そうですね、ユキ、ちょっと仲良くしてあげてね」
「キュッキュ!」

 どうやら返事はOKのようだ。アヒルも首を何度も縦に振っていた。

「グワ!」

 その後自分とメイドのメイアは一言もしゃべらず部屋へ移動したが、ユキとアヒルは何か会話をしているような感じでずっと、キュッキュだのグワグワだの鳴いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

【完結】元ヤンナース異世界生活

川原源明
ファンタジー
回復魔法の存在しない世界で医療知識を活かした異世界生活 交通事故で、子どもを庇って命を落とした。元ヤンキーの看護師、進藤 茜 創造神の態度に納得いかずにクレームをつける!すると先輩の神と名乗る女性が現れ一緒に謝罪 謝罪を受け取ったと思ったら…話も終わってないのに…異世界に飛ばされる…あのくそ女神! そんな思いをしながら、始まる元ヤンナース茜の異世界生活 創造神と異界の女神から貰ったチート能力を活かした 治療魔法を使って時には不治の病を治し、時には、相手を殺す… どんなときも、周りに流されないで自分の行きたい道を! 様々な経験を積むうちに内なる力に目覚めていく…その力とは… 奴隷商で大けがしてる奴隷を買って治療魔法で回復させ、大けがをさせた元凶討伐をしたり、 王国で黒死病治療に関わったり お隣の帝国の後継者争いに巻き込まれていく… 本人は、平穏な生活を望むが、周囲がそうさせてくれない…

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...