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診療所開設!
第19話 マイホーム兼診療所
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シアが退院してからは、時々孤児院への往診をしたり、ザックとシアの紹介で、病気や怪我人が訪れるようになりそれらの対価として、お金だけではなく薬草や小物や食材を貰う事が多くなってきた。
そして定期的にザックたちドワーフが、お酒の販売会を希望し販売してお金が増えているので生活には大して困る事が無かった。
そんな生活を満喫していたある日の昼、外から帰ってきたザックが、仮診察室である自分の部屋に来るなり。
「誠明よ、出かけるぞ」
「どこにですか?」
「おまえさんの新居だ」
ん?まだ1週間ちょっとだけどもう建っているの?
「はやくないです?」
「建築ギルドのメンツが、おまえさんから買う酒が美味いから、終わったら祝いとして飲み比べをやろうと張り切って作たんだ」
もしかして酒の販売会に来てるドワーフの中に建築ギルドのメンツがいるのかな?
「飲み比べは良いんですけど、建築ギルドのメンツって販売会に来てたんですか?」
「あぁ、あそこのギルマスも皆お前さんの酒販売会の常連だぞ」
知らぬうちに知り合ってたのか、販売会のメンバーと自己紹介してないからな、会ったら自己紹介くらいしないとか。
そんな事を想いながらザックについて行っていると、孤児院に行く道を歩いていた。
このあたりはどちらかというと住宅街だったきがするが?
しばらく歩くと外装が真っ白な3階建ての建物が見えてきた。まさかここじゃないよなぁとか思っていると。
「ここだ」
3階建て?しかも周辺の木造とはまた違うのが気になった。
「周辺の建物と違って木造じゃない気がするんですが」
「いや、柱とかは木造だぞ」
「もしかして壁に何か塗ってるんです?」
「あぁ、貝殻高温で焼いた後を細かく砕いた奴だな」
体に良さそうな成分でなにより。
「何か意味あるんですか?」
「さぁ、詳しい事は分からん、ジルの拘りだからな、ジルに聞いてくれ」
「そうですか……、ジルさんってどなたなんです?」
「建築ギルドのギルマスだ、それよりも入るぞ」
そういうと、ザックは扉を開け中に入っていった。慌てて自分も後について行く。
中に入ると、細かい事を伝えた覚えがないのだが、待合室の様な物、受付カウンター、診察室があった。そして診察室の奥には手術室として作ったのか中央には細いベッドの様な台が置いてあった。
受付、診察室、手術室と廊下を挟んで反対側には大きな病室が2つと厨房とトイレがあった。トイレがこの世界で初めて見る洋式のトイレなんだが……、病室にはそれぞれ4つのベッドが四隅に置かれそれぞれに机としても使える高さ1m程の小さな収納と、高さ2m程の大きな収納がついていた。
「10個といってたが、土地の関係上8になっちまったと言ってたな」
「まぁそれ位なら、ってか自分受付カウンターとか言った覚え無いんですが?」
「言ったろ、この建物はジルの拘りで出来てるんだと、詳しい事はジルに聞いてくれ」
そのジルとやらは、何故詳しい話をしていないのにもかかわらずここまで作れるんだろう?
一般病棟の病室を見ているような感覚なんだが、各エリアを仕切るカーテンがあれば完ぺきなくらいだった。
「そのジルさんはどこに?」
「上だろうな、多分既に酒盛りを始めとる」
上から騒がしさなんてしないんだがなと思いながら、廊下の突き当りの階段を登っていくと、階段の途中に玄関の様な扉があり、そこを開け中に入ると何もないだだっ広い1ルーム?だった。
そしてザックの言う通り、そこでは10人程のドワーフ達が既に酒盛りをはじめていた。
「お、ザックきたな、あまりにも遅いからはじめちまった」
ザックの元に1人のドワーフがやってきたが、ザックを含めすべてのドワーフよりも年がいってそうな感じで皺くしゃの顔に白い髪の毛と髭を蓄えていた。
「ジル爺、依頼人だ、あんたの拘りに驚いていたぞ」
「そうじゃろ、そうじゃろ~」
このお爺さんドワーフがジルさんなのか、確かに何度か酒の販売会で顔をあわせているな、白髪白髭で皺々の顔のドワーフなんて1人しかいなかったし……。
「えっとはじめましてというのは変ですが、伊東誠明です」
「知っとる知っとる、お主の酒は美味いからのぉ~今日も楽しみにしとるんじゃ」
酒か~。
「ジルさんは下の部屋はどうしてあの構造、あの配置にしたんですか?」
「ん~?気に入らんかったか?」
「いえ、完璧なんですよ。あとは仕切る為のカーテンみたいなものがあればって位でしたし」
「そうじゃろ、そうじゃろ~驚いてくれてワシはうれしいぞ~」
もう酔っぱらってるのか話が……。
「爺さん酔うの早すぎだろう……、誠明はなんでと聞いてるぞ」
「ふむ、実はな下の形状の部屋を作るのは初めてじゃないんじゃ」
「ぇ?病院の一室みたいな感じでしたが……」
「ほっほ、病院と来たか久しいな」
ん?何が久しいのか?
「なにが久しいんです?」
「病院という単語を聞いた事じゃ」
「ん?この世界に病院はないんですか?」
「そうじゃな、わしが知っとる限りこの国には存在せんな、今は祖国のドワイライフに似たような役割を果たす物はあるがのぉ、一応昔は病院としての役割を果たしておったぞ」
似たような役割というのが気になるが、昔は病院が存在したと、という事は自分以外にも迷い人の医者がいたということだろうか?それだと創造神が言っていた2~5世紀レベルの医療と言っていた部分が矛盾してくる。どういうことだ?
「どういうことですか?」
「昔、聖女様の依頼で病院を作ったんじゃ、受付カウンターやら病室やらはその時の記憶を基に再現したのじゃ」
なるほど、という事はその聖女様って多分病院関係者の迷い人?
それにもしかしたら、シアが言っていた浄化で病を治したという聖女?
「もしかしてその聖女様って、浄化で病を治したりしてたんですかね?」
「ほっほ、よう知っとるな、そうじゃよ」
「迷い人とか?」
「ほっほ、そうじゃ」
「ここに来る前どんな仕事をしていたか聞いています?」
「聞いとるカンゴフといっとったのぉ」
「ありがとうございます」
「よいよい」
看護婦か、言い方が古いあたり自分が居た頃よりも20年位昔かそれ以上前から来た人かな?
昔は男性が看護士、女性が看護婦と呼んでいた時代があったというのは聞いた事がある。今や男女問わず看護師だし。
浄化で病気を治すことが看護師に出来て医者の自分が出来ないという事はないだろう、近いうちにどうやってか実験してみないとだな。
それよりもこの2階は何のための部屋なんだろうか?
「ところでこの部屋は何のための部屋なんですか?」
「きまっとる、酒盛り場じゃ、ここでお主が酒を販売し皆で飲むのじゃ」
そんな部屋いらない!
「はぁ、爺さん依頼人からそんな部屋を作ってくれと言われてないぞ……」
「ワシもきいとらんのぉ~」
「じゃあなぜ作った!?」
思わず突っ込んでしまった。
「ワシが欲しいと思ったからじゃ!」
ダメだこいつ……。
「よいか!酔いつぶれても安心できる場所なんてそうそうないぞ!」
なにこの人酔いつぶれる前提で作ってんの?
そりゃ急性アルコール中毒で倒れてもすぐそこに医者がいれば安心できるわな……。
「酔いつぶれる前に帰ってくださいよ……」
「安心するんじゃ、ここの部屋の掃除なんかはワシらがやるから気にするでない」
いや、そういう問題じゃないんだが?
「そんな部屋いらないですよ、ここに入る為に下を通らないとダメじゃないですか……」
「ほっほっほ、その心配はいらんぞい、こっちに来るんじゃ」
そういうと、2階の入口扉とは反対方向に案内されると窓の外にじゃベランダがあり、ベランダの隅に下に降りる外階段があった。窓のカギ閉めて良いかな?
「勝手にここに入れる状態だと……?」
「そうじゃ、それに何かあればここに避難できるようにしてあるんじゃ、こっちに来い」
そう言うと、ジルは横の壁の前まできた。
よく見ると壁に切れ目みたいなのがあるけど……?
「どうやってか、明けるんです?」
「ほっほ、勘がいいのぉ~」
そう言うとジルは壁を押した。すると、壁が折りたたまれ、壁の裏は部屋に沿うような小さな廊下があり、3つの扉があった。
「よいか、聖女様もいっとったが、清潔が大事なんじゃろ?なのでシャワールームを備え付けておる」
そう言って1番右の扉を開けると、たしかに脱衣場とシャワールームがあった。
「次はトイレじゃ」
真ん中の扉を開けると、中で男女別になっておりそれぞれ奥に2つの個室があった。
「最後に調理場じゃ!ここでおつまみを作るのじゃ!」
絶対に違うよね!?ここに居座る気満々じゃないのか!?
「どうじゃ?少しでも広く使いたいときは壁を折りたたんでおけば少し広く使えるんじゃ」
自分が気になるのはそこじゃない!
「ちゃんと帰ってくださいよ……?」
「何じゃ嬉しくないのか?」
「この部屋が無かったら喜んでたと思いますね……」
「残念じゃのぉ~お主の住まいは上にあるぞ、これが鍵じゃ」
ジルさんから3階住居の鍵を受け取りユキと2人で上に登った。
1階2階の面積を考えると十分立派な広さなんだけど、2階の件でなんかワクワク感が消失した。
3階に上がり中に入ると、広々としたリビングと対面式のカウンターキッチンがあり、リビングをぐるりと囲むように窓があり外にベランダがあった。入って左手の扉にはトイレや風呂場などの水回りと3つの個室があった。なんというかベランダからならどの部屋にもアクセスできるという独り身にはもったいないくらいの広々とした住居エリアだった。ベランダから外を見ても、3階建て以上の建物は少なく見晴らしがよかった。
ん~住居エリアは気にいった。お風呂が存在するのが、うれしい!
それよりも気になったのが、すべての扉にユキが出入りできるような小さな出入口がついていた。
2階に戻ると、自分に気づいたジルが寄って来た。
「どうだったかね?気に入ってもらえたかね?」
「えぇすごく気にりました」
「そうかそうか~、次が最後じゃこっちにこい」
次が?1階、2階、3階以外になにかあるのかな?
そう思いながらジルの後について行くと、外階段を降りると今度はさらに地下に伸びる階段があり、その階段を下って行った。まさかの地下室とか思いつつ、地下室の入口扉の前まで来た。ジルは懐から鍵を出すと、扉の鍵を開け中に入った。
そこには2カ所壁に魔法陣の様な物があり中央には透明な石がはめ込まれていた。
「ここは?」
「説明するぞい、ここは排水処理する場所じゃ」
そう言って横の中央に魔法陣がある壁をトントンと叩く。明らかに壁の向こうには何かがあるような感じだった。
「壁?」
「この奥はこの建物の排水が集う場所でな、色々な物を綺麗にするクリーンスライムがおる」
スライムで下水処理する世界なのか……、今までそんなこと考えたことなかったなとおもっていると。
「それでな、クリーンスライムは排水と汚れを食うと体内に魔素をため込むんじゃ、そこでこの魔法陣の出番じゃ、この魔法陣は吸魔の魔法陣でな、クリーンスライムがため込んだ魔素を吸収し中央にある魔石に魔素をため込む」
魔法陣とか見ると地球とは違うというのを改めて感じた。
「そうしてもう一方の方だが」
と、言いながらもう一つの魔法陣が描かれた壁の方に移動した。
「こっちは逆じゃ、この建物内にある照明や水、お湯を出すための魔法陣じゃ、明かりが着かなくなったり、水が出なくなったら、あっちの吸魔の魔法陣の魔石と交換するんじゃ、」
エコエネルギーならぬスライムエネルギーなのか。
「この技術って結構使われてるんですか?」
「いや、王都じゃ城と学園位にしか使われておらんな」
ハイテク装置で高額装置なのか?
「上で出した水すらもスライムが吸収するってかんじですよね?」
「そうじゃ、この建物だけですべて完結するようにしてあるぞい」
それだけ言うと自分の方に寄って来た。
「ほれ、ここの鍵ともう一つ大事な魔石じゃ」
そう言って手を出すと、鍵と、拳大の茶系の色をした透明の石だった。
「この魔石は?」
「吸土の魔石じゃ、この部分がちょうど埋まるように調整してある。土を吸収させたら必ずどこかで吐き出させるんじゃぞ、じゃないと使えんからのぉ」
「もしかしてこの建物を持ってどこかに逃げる時にこれを使えと?」
「そうじゃ、ザックから教会に目を付けられる可能性がある事をきいとるからのぉ」
そのためだけに、城や学園にしか使っていない技術を使ってくれたのかと思うと、頭を下げずにはいられなかった。
「ありがとうございます!」
「よいよい、報酬は2階を自由に使わせてくれればよい」
それはちょっと……、と言いたかった。
そして定期的にザックたちドワーフが、お酒の販売会を希望し販売してお金が増えているので生活には大して困る事が無かった。
そんな生活を満喫していたある日の昼、外から帰ってきたザックが、仮診察室である自分の部屋に来るなり。
「誠明よ、出かけるぞ」
「どこにですか?」
「おまえさんの新居だ」
ん?まだ1週間ちょっとだけどもう建っているの?
「はやくないです?」
「建築ギルドのメンツが、おまえさんから買う酒が美味いから、終わったら祝いとして飲み比べをやろうと張り切って作たんだ」
もしかして酒の販売会に来てるドワーフの中に建築ギルドのメンツがいるのかな?
「飲み比べは良いんですけど、建築ギルドのメンツって販売会に来てたんですか?」
「あぁ、あそこのギルマスも皆お前さんの酒販売会の常連だぞ」
知らぬうちに知り合ってたのか、販売会のメンバーと自己紹介してないからな、会ったら自己紹介くらいしないとか。
そんな事を想いながらザックについて行っていると、孤児院に行く道を歩いていた。
このあたりはどちらかというと住宅街だったきがするが?
しばらく歩くと外装が真っ白な3階建ての建物が見えてきた。まさかここじゃないよなぁとか思っていると。
「ここだ」
3階建て?しかも周辺の木造とはまた違うのが気になった。
「周辺の建物と違って木造じゃない気がするんですが」
「いや、柱とかは木造だぞ」
「もしかして壁に何か塗ってるんです?」
「あぁ、貝殻高温で焼いた後を細かく砕いた奴だな」
体に良さそうな成分でなにより。
「何か意味あるんですか?」
「さぁ、詳しい事は分からん、ジルの拘りだからな、ジルに聞いてくれ」
「そうですか……、ジルさんってどなたなんです?」
「建築ギルドのギルマスだ、それよりも入るぞ」
そういうと、ザックは扉を開け中に入っていった。慌てて自分も後について行く。
中に入ると、細かい事を伝えた覚えがないのだが、待合室の様な物、受付カウンター、診察室があった。そして診察室の奥には手術室として作ったのか中央には細いベッドの様な台が置いてあった。
受付、診察室、手術室と廊下を挟んで反対側には大きな病室が2つと厨房とトイレがあった。トイレがこの世界で初めて見る洋式のトイレなんだが……、病室にはそれぞれ4つのベッドが四隅に置かれそれぞれに机としても使える高さ1m程の小さな収納と、高さ2m程の大きな収納がついていた。
「10個といってたが、土地の関係上8になっちまったと言ってたな」
「まぁそれ位なら、ってか自分受付カウンターとか言った覚え無いんですが?」
「言ったろ、この建物はジルの拘りで出来てるんだと、詳しい事はジルに聞いてくれ」
そのジルとやらは、何故詳しい話をしていないのにもかかわらずここまで作れるんだろう?
一般病棟の病室を見ているような感覚なんだが、各エリアを仕切るカーテンがあれば完ぺきなくらいだった。
「そのジルさんはどこに?」
「上だろうな、多分既に酒盛りを始めとる」
上から騒がしさなんてしないんだがなと思いながら、廊下の突き当りの階段を登っていくと、階段の途中に玄関の様な扉があり、そこを開け中に入ると何もないだだっ広い1ルーム?だった。
そしてザックの言う通り、そこでは10人程のドワーフ達が既に酒盛りをはじめていた。
「お、ザックきたな、あまりにも遅いからはじめちまった」
ザックの元に1人のドワーフがやってきたが、ザックを含めすべてのドワーフよりも年がいってそうな感じで皺くしゃの顔に白い髪の毛と髭を蓄えていた。
「ジル爺、依頼人だ、あんたの拘りに驚いていたぞ」
「そうじゃろ、そうじゃろ~」
このお爺さんドワーフがジルさんなのか、確かに何度か酒の販売会で顔をあわせているな、白髪白髭で皺々の顔のドワーフなんて1人しかいなかったし……。
「えっとはじめましてというのは変ですが、伊東誠明です」
「知っとる知っとる、お主の酒は美味いからのぉ~今日も楽しみにしとるんじゃ」
酒か~。
「ジルさんは下の部屋はどうしてあの構造、あの配置にしたんですか?」
「ん~?気に入らんかったか?」
「いえ、完璧なんですよ。あとは仕切る為のカーテンみたいなものがあればって位でしたし」
「そうじゃろ、そうじゃろ~驚いてくれてワシはうれしいぞ~」
もう酔っぱらってるのか話が……。
「爺さん酔うの早すぎだろう……、誠明はなんでと聞いてるぞ」
「ふむ、実はな下の形状の部屋を作るのは初めてじゃないんじゃ」
「ぇ?病院の一室みたいな感じでしたが……」
「ほっほ、病院と来たか久しいな」
ん?何が久しいのか?
「なにが久しいんです?」
「病院という単語を聞いた事じゃ」
「ん?この世界に病院はないんですか?」
「そうじゃな、わしが知っとる限りこの国には存在せんな、今は祖国のドワイライフに似たような役割を果たす物はあるがのぉ、一応昔は病院としての役割を果たしておったぞ」
似たような役割というのが気になるが、昔は病院が存在したと、という事は自分以外にも迷い人の医者がいたということだろうか?それだと創造神が言っていた2~5世紀レベルの医療と言っていた部分が矛盾してくる。どういうことだ?
「どういうことですか?」
「昔、聖女様の依頼で病院を作ったんじゃ、受付カウンターやら病室やらはその時の記憶を基に再現したのじゃ」
なるほど、という事はその聖女様って多分病院関係者の迷い人?
それにもしかしたら、シアが言っていた浄化で病を治したという聖女?
「もしかしてその聖女様って、浄化で病を治したりしてたんですかね?」
「ほっほ、よう知っとるな、そうじゃよ」
「迷い人とか?」
「ほっほ、そうじゃ」
「ここに来る前どんな仕事をしていたか聞いています?」
「聞いとるカンゴフといっとったのぉ」
「ありがとうございます」
「よいよい」
看護婦か、言い方が古いあたり自分が居た頃よりも20年位昔かそれ以上前から来た人かな?
昔は男性が看護士、女性が看護婦と呼んでいた時代があったというのは聞いた事がある。今や男女問わず看護師だし。
浄化で病気を治すことが看護師に出来て医者の自分が出来ないという事はないだろう、近いうちにどうやってか実験してみないとだな。
それよりもこの2階は何のための部屋なんだろうか?
「ところでこの部屋は何のための部屋なんですか?」
「きまっとる、酒盛り場じゃ、ここでお主が酒を販売し皆で飲むのじゃ」
そんな部屋いらない!
「はぁ、爺さん依頼人からそんな部屋を作ってくれと言われてないぞ……」
「ワシもきいとらんのぉ~」
「じゃあなぜ作った!?」
思わず突っ込んでしまった。
「ワシが欲しいと思ったからじゃ!」
ダメだこいつ……。
「よいか!酔いつぶれても安心できる場所なんてそうそうないぞ!」
なにこの人酔いつぶれる前提で作ってんの?
そりゃ急性アルコール中毒で倒れてもすぐそこに医者がいれば安心できるわな……。
「酔いつぶれる前に帰ってくださいよ……」
「安心するんじゃ、ここの部屋の掃除なんかはワシらがやるから気にするでない」
いや、そういう問題じゃないんだが?
「そんな部屋いらないですよ、ここに入る為に下を通らないとダメじゃないですか……」
「ほっほっほ、その心配はいらんぞい、こっちに来るんじゃ」
そういうと、2階の入口扉とは反対方向に案内されると窓の外にじゃベランダがあり、ベランダの隅に下に降りる外階段があった。窓のカギ閉めて良いかな?
「勝手にここに入れる状態だと……?」
「そうじゃ、それに何かあればここに避難できるようにしてあるんじゃ、こっちに来い」
そう言うと、ジルは横の壁の前まできた。
よく見ると壁に切れ目みたいなのがあるけど……?
「どうやってか、明けるんです?」
「ほっほ、勘がいいのぉ~」
そう言うとジルは壁を押した。すると、壁が折りたたまれ、壁の裏は部屋に沿うような小さな廊下があり、3つの扉があった。
「よいか、聖女様もいっとったが、清潔が大事なんじゃろ?なのでシャワールームを備え付けておる」
そう言って1番右の扉を開けると、たしかに脱衣場とシャワールームがあった。
「次はトイレじゃ」
真ん中の扉を開けると、中で男女別になっておりそれぞれ奥に2つの個室があった。
「最後に調理場じゃ!ここでおつまみを作るのじゃ!」
絶対に違うよね!?ここに居座る気満々じゃないのか!?
「どうじゃ?少しでも広く使いたいときは壁を折りたたんでおけば少し広く使えるんじゃ」
自分が気になるのはそこじゃない!
「ちゃんと帰ってくださいよ……?」
「何じゃ嬉しくないのか?」
「この部屋が無かったら喜んでたと思いますね……」
「残念じゃのぉ~お主の住まいは上にあるぞ、これが鍵じゃ」
ジルさんから3階住居の鍵を受け取りユキと2人で上に登った。
1階2階の面積を考えると十分立派な広さなんだけど、2階の件でなんかワクワク感が消失した。
3階に上がり中に入ると、広々としたリビングと対面式のカウンターキッチンがあり、リビングをぐるりと囲むように窓があり外にベランダがあった。入って左手の扉にはトイレや風呂場などの水回りと3つの個室があった。なんというかベランダからならどの部屋にもアクセスできるという独り身にはもったいないくらいの広々とした住居エリアだった。ベランダから外を見ても、3階建て以上の建物は少なく見晴らしがよかった。
ん~住居エリアは気にいった。お風呂が存在するのが、うれしい!
それよりも気になったのが、すべての扉にユキが出入りできるような小さな出入口がついていた。
2階に戻ると、自分に気づいたジルが寄って来た。
「どうだったかね?気に入ってもらえたかね?」
「えぇすごく気にりました」
「そうかそうか~、次が最後じゃこっちにこい」
次が?1階、2階、3階以外になにかあるのかな?
そう思いながらジルの後について行くと、外階段を降りると今度はさらに地下に伸びる階段があり、その階段を下って行った。まさかの地下室とか思いつつ、地下室の入口扉の前まで来た。ジルは懐から鍵を出すと、扉の鍵を開け中に入った。
そこには2カ所壁に魔法陣の様な物があり中央には透明な石がはめ込まれていた。
「ここは?」
「説明するぞい、ここは排水処理する場所じゃ」
そう言って横の中央に魔法陣がある壁をトントンと叩く。明らかに壁の向こうには何かがあるような感じだった。
「壁?」
「この奥はこの建物の排水が集う場所でな、色々な物を綺麗にするクリーンスライムがおる」
スライムで下水処理する世界なのか……、今までそんなこと考えたことなかったなとおもっていると。
「それでな、クリーンスライムは排水と汚れを食うと体内に魔素をため込むんじゃ、そこでこの魔法陣の出番じゃ、この魔法陣は吸魔の魔法陣でな、クリーンスライムがため込んだ魔素を吸収し中央にある魔石に魔素をため込む」
魔法陣とか見ると地球とは違うというのを改めて感じた。
「そうしてもう一方の方だが」
と、言いながらもう一つの魔法陣が描かれた壁の方に移動した。
「こっちは逆じゃ、この建物内にある照明や水、お湯を出すための魔法陣じゃ、明かりが着かなくなったり、水が出なくなったら、あっちの吸魔の魔法陣の魔石と交換するんじゃ、」
エコエネルギーならぬスライムエネルギーなのか。
「この技術って結構使われてるんですか?」
「いや、王都じゃ城と学園位にしか使われておらんな」
ハイテク装置で高額装置なのか?
「上で出した水すらもスライムが吸収するってかんじですよね?」
「そうじゃ、この建物だけですべて完結するようにしてあるぞい」
それだけ言うと自分の方に寄って来た。
「ほれ、ここの鍵ともう一つ大事な魔石じゃ」
そう言って手を出すと、鍵と、拳大の茶系の色をした透明の石だった。
「この魔石は?」
「吸土の魔石じゃ、この部分がちょうど埋まるように調整してある。土を吸収させたら必ずどこかで吐き出させるんじゃぞ、じゃないと使えんからのぉ」
「もしかしてこの建物を持ってどこかに逃げる時にこれを使えと?」
「そうじゃ、ザックから教会に目を付けられる可能性がある事をきいとるからのぉ」
そのためだけに、城や学園にしか使っていない技術を使ってくれたのかと思うと、頭を下げずにはいられなかった。
「ありがとうございます!」
「よいよい、報酬は2階を自由に使わせてくれればよい」
それはちょっと……、と言いたかった。
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「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
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23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
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トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
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よろしくお願いいたします。
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エラーから始まる異世界生活
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45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
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