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王都マバダザ

第12話 お揚げ

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 どうするかな、ここ数日手術らしい手術していないし、感覚を取り戻すために練習をするか、そう思い、アイテムボックスから皮つきの鶏むね肉をとりだした。

「キュ~?」
「ご飯じゃないよ、ちょっと離れててね」

 ライトボールを5回唱え、5つの光源を出した。

 まだ慣れてなかった頃、皮つきの鶏むね肉のなかにある細い血管で吻合練習したものだ、手術の勘を取り戻すために、ちょっと練習をばと思い手術用の道具をだした。顕微鏡がないが触診スキルで同等の事ができたし、やれるだろうと思い鶏肉に触れると、生きてはいないが顕微鏡をのぞいているような画面が脳内に浮かんだ、鶏肉から手を放すが、まだ画面は脳内に残っている。

 このままメスを動かすと、視界の中にメスの刃先が現れた。剪刀等様々な道具を使いながら、血管剥離をしたり、血管同士をくっつける吻合をしてみたが、腕や勘が鈍ったりはしていないようだった。

 顕微鏡をのぞいているような画面に関しては自分が必要と思っている間は脳内に浮かび続け、不要になったら消える、そして倍率も思いのままに出来るという便利なシステムだった。

 準備ができ次第ザックの手術をしてもよさそうだな。

 使った鶏肉を炉の入口近くに置いて軽く焙りユキにあげた。

「キュ~♪」

 嬉しそうに食べ始めた。自分も何か食べるかな、やかんに天然水を注ぎ、炉の近くにおいて沸騰を待ちながら、きつねうどんのカップ麺を用意しお湯の沸騰を待った。

 やかんから湯気が噴出したので、持ち手の部分を掴んだ瞬間。

「あっちぃ!」

 改めて思った。そもそもやかんは、下から温めること前提で作られてる。横からやってれば持ち手の部分まで熱されてそうなる事を考えてなかった。

「キュッキュッキュ♪」

 ユキは途中で食べるのをやめて笑っていた。
 こいつはもう……、笑ってないで心配位してほしいんだけどな……。
 トングを取り出し、やかんを掴み炉から遠ざけた。

 改めて鍋掴み用のミトンでやかんを掴みカップ麺の容器にお湯を注いだ。

 スマホを久々に取り出し、三分後にアラームが鳴るように設定した。

 3分後アラームが鳴ったのを確認し、蓋を開けると。

「キュッキュン♪」

 開けた瞬間、ユキが油揚げだけを咥えて食べてしまった。

 自分の好物である甘い油揚げを奪われ少し頭に来た。

「ユキ!お前どっかいけ!2度と顔を見せるな!」
「キュ!」

 ユキが自分の怒鳴り声に対してビクッとしたようにこちらを見た。

「人の好物を奪うとかさ何考えてんの?お前が好きなもんを人に奪われたらどう思うよ」
「キュ~……」

 ユキは、自分から視線を外しうつむいた。
 
「もう出ていきなよ、自分はもう2度とお前の面倒見る気ないからさ」
「キュキュ」

 ユキはうつむきながら弱々しく首を左右に振った。

「嫌だって言ってもさ、自分も好きな油揚げを奪うようなユキは嫌いだし」
「キュ~……」

 ちょっと言いすぎかなぁとか思いつつも。
 ユキに背中を向けてアイテムボックスから、甘いお揚げ4枚入りを出して2枚をうどんの上に乗せ食べ始めた。

 きつねうどんを食べていると、床に座りうどんを食べていたせいか、背中をグリグリ?されるような感覚があり後ろを向くと、ユキが頭を自分の背中に押し当てて首を振っていた。

「あのさ、いまご飯食べてるんだけど何?」
「キュ~ン……」

 ユキは自分から少し離れうつむいてお座り状態になった。

 引き続きうどんを食べ、食べ終わった後ユキの方を向いた。

「でどうするの?出て行って良いよ?」
「キュ~ン……」

 うつむいたまま首を振るユキ。反省したかな?

「2度とやらないっていうなら、面倒見てあげるけど」
「キュ」

 うつむいたまま頷いた。

「んじゃもう1つ、人の不幸を笑うのはやめな、さすがにイラってくる」
「キュ?」

 こっちを見て首をかしげていた。わかってない感じかな?

「船の上で自分が気持ち悪そうにしていた時とか、さっき自分があっつ!ってやった時お前笑ってたよね?ちょっと違うけど、今のお前を自分が笑ったらどう思う?いやだよね?」
「キュ……」

 ユキは、再びうつむき頷いた。

「じゃあそれもやらないように、今後は自分がされたら嫌な事は絶対にしないように!」
「キュ……」

 “キュ……”は、ごめんなさいとかそういう意味があったりするのかな?
 十分反省したようだし、残っている2枚の油揚げをユキの方に差し出した。

「食べなよ」
「キュ……」

 1度油揚げの方をみて再びうつむき首を左右に振った。その後、ユキは鼻を使って油揚げの入ったケースを自分の方に寄せてきた。

 食べないから自分に食べてって事かな。

「ん~自分も言いすぎたし、お詫びの意味を込めてユキにあげたのになぁ~ユキは仲直りしたくないのかなぁ~?」

 ッバと頭を上げて自分をジーっと見てる。

「食べなよ、自分も出て行けとか言いすぎた。ごめん、その詫びの意味もある」
「キュ♪」

 ユキは、お揚げに見向きもせずに自分のお腹にに飛び込んできた。抱き上げると唇周りをペロペロ舐め始めた。

 その後は、ひとしきりユキを撫でたり櫛で毛並みをそろえたりしながら、残っている油揚げをユキに食べさせてあげた。油揚げって結構油っこいけど、狐が食べて大丈夫なのかな?と疑問に思った。

「どうなる事かと思ったが、ちゃんと仲直りしたな」

 部屋の入口の方から声がしたと思い見るとザックが立っていた。

「どこから見てたんです?」
「おまえさんが、あっつとか言ってた時からだな」

 ほとんど最初からじゃないか!

「最初から見ていたと」
「それが最初ならそうだな、ユキはまだ生まれて2~3週間位だからな、言い過ぎじゃないかと思ったが、お前さんに怒られてユキも理解してるみたいだったし見守ってたって事よ」

 ホワイトフォックスの2~3週間って人間で言うとどれくらいなんだろうか?1~2歳位か?

「人に換算すると何歳位なんですかね?」
「さぁな、それは分からんが小さな子どもってくらいだろ」

 ちょっとどころじゃなく言い過ぎだったかな反省。

「そういえば、ザックさん」
「ん?」
「あそこにある物が完成したらいつでも手術が出来ますが、どうします?」

 人工骨を指さしザックに質問した。

「そうだな、明日の朝頼めるか?」
「了解」
「それで、さっきお前さんが食べてたものをわしにもくれんか?」

 きつねうどんでいいのか?油揚げの方でいいのか?不明だった。

 その後ザックもきつねうどんを食べ、油揚げのリクエストがあったので、そちらも出すと、ザックも2枚ユキにあげると言ってユキは喜んで油揚げを食べていた。

 ふと、全身麻酔なら呼吸管理する人が必要なのでは!?
 今更ながら重大な事に気づいた。
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