上 下
146 / 195
VSヴォーネス共和国(クラリス教団)

第146話 6カ月後と開拓作業

しおりを挟む
 ペンジェンのリンクル族救出後、半年がたち、季節が初冬から初夏になった。

 ヴォーネス国内の26ある都市のうち、首都ヴォーネスを含む22の都市の解放が終わった。

 手順はペンジェン同様に、攻略する都市へ自分が潜入しリンクル族の救出し、リライアンスフラワーとエノオンドクダミの粉末を入れ替え、街に居る市民と駐留する兵士に神刀で戦意と・クラリス教団への信仰心を斬る。この3つの仕事をするだけになった。

 エノオンドクダミの粉末は、ヴィンザーにクラリス教団の事情を説明したら、ペンジェン攻略直後、ヴィンザー達と共にエノオンに行き、現地在住のリンクル族達によって大量に生産されるようになった。

 解放された街に、冒険者ギルドや商業ギルドが入り、活気があふれ始めていた。

 残り4都市だが、ヴォーネス共和国を南北に縦断する大河により進軍が阻まれている状態だった。

 そのためヴィンザーの指示で、教団の動向に注視しつつ、国力の復興に注力することになった。

 内政重視の時期は、解放済みの街へ医者として巡回する事と、エノオン湖から流れる川を中心にペンジェン、エスティア付近までの開拓を手伝うことになった。

◇◇◇◇◇◇

 今日は多くのリンクル族達と一緒に開拓する日だ、目の前には木々が鬱蒼と生い茂っていて、街道200人を超えるリンクル族が居る。

「よっし!神様!みんな揃った!やってくれ!」

 ん?

「何で神様?」
「失った足を生やしたり、スキルを与えたりすることができるんだろ?神様以外に何がいるんだ?」

 ヴィンザーの足の件と、いつだっかシャドーウルフを譲ったリンクル族からの情報だろうか?それにしても神様に接するような話し方じゃないよな?と思った。

「御使いなのは事実ですが、神様じゃないですよ」
「そうか?まぁなんだっていいさ、リンクル族の俺達からしたら、あんたはこの国の英雄でもあるんだ」

 “そうだそうだ”等周囲のリンクル族達も同意していた。
 神様だったり英雄だったり……、ペンジェン以降の街は、兵も少なかった為に無駄な血を流さずに攻略していったが、リンクル族達を救出しただけで英雄とか、どうなんだろうか?

 まぁいいか、誰かの迷惑にならないなら気にしないでおこう、その場にしゃがみ地面に両手を地面につけありったけの魔素を森の中に張り巡らせていった。
 
 魔素を流せど流せど、絶対健康のおかげか体内の魔素が回復していく、どこら辺まで流せているのかが分からないが、ただひたすら地面に魔素を流していった。

『もういいんじゃない?かなり広範囲に行き渡ってるよ』
『そっか』

 自分の感覚だとどこまでいきわたっているのかが分からなかった。

 つぎはガイアコントロールで、草木を根から抜き、地中の岩や石を地表に出して、それらすべてを操作した土地の中央に集めた。

 ガイアコントロールを終えて前を見ると見渡す限りの畑になっていて右前方のはるか先に木々や岩が大量に集まっていた。

「こりゃ凄いな!やっぱあんたは俺らの神様だ!」

 その一言をきっかけに周囲のリンクル族が騒ぎ出した。

 正直自分自身も驚いている。鬱蒼とした森が広がっていたはずなのに、目の前には、遠くの丘まで続く畑という光景だった。

 リンクル族の騒ぎが収まりそうになかった。

「騒ぐのは終わってからでいいから、さっさと麦などを植えましょう」
「そうだった、それじゃ皆手分けして植えていくぞ!」
「「「「「お~!」」」」」

 リンクル族達が、1つ1つ丁寧に植え始めた。

 見ていて思った事、多分適当にばらまいた方が早い気がする、神の手を使って育成する際には暇を持て余しているドライアド達が手伝ってくれるだろうし、どうにでもなる気がしていた。

 子どもが200人横1列に並んで種植えする光景はなんだか、幼稚園とかの芋掘り大会みたいなほほえましさがあった。

 種植えは任せて、木々や岩などが集積されている中央に向かった。

 中央に着くとそこには大量の木々と様々な大きさの岩や石に雑草等があった。

 木々を残してすべての素材をアイテムボックスに入れた。

 木は、加工しやすいように、根の部分を切り落とし、枝を払い1本の丸太にした。

 次の木もやろうとしていると、ヒスイが声をかけてきた。

『ねね~同じ作業ならアイテムボックス内で一括で出来るのにやらないの?』

 ん?

『そんな便利機能があったの?』
『あれ?言ってなかったっけ?材料作りなら一括でやった方が早くない?』

 そもそも一括でやる方法があるって今知ったが?

『やり方は?』
『やったことのある作業なら、イメージすれば、アイテムボックス内にある物を一気に加工できるよ、けれど付与魔法とか、魔法を行使した加工はできないからね?』

 製品を作るのには向いていないが材料を作るのには向いている機能かちょっと試してみようと思い、周辺にある木々をすべてアイテムボックス内に入れた。

 枝払いと根の切り落としをイメージし、今度は収納した木々を目の前に出していくと……、すべての木々が丸太化していた。

『これは便利だな』
『でしょ~』
『もう少し早く教えてくれても良かったんじゃない?』
『いや~ごめんごめん、もう教えていると思ってた』

 思い返せば、一括作業をする必要があったシーンなんてあったかな?無かった気がした。

『いや、何かいい機能があったらまた教えてよ』
『オッケ~』

 目の前には何千本という丸太が積み重なっていた。

 リンクル族達の方をみると、まだ種植えをしている様子だった。

 アイテムボックス内に入れた大きな岩を取り出した。3m四方は有りそうだな。石像作れるかな?

 思い立ったが吉日という、リンクル族のお仕事もまだかかりそうだったので、エスティアに負けない神像を作ろうと思った。

『この世界の豊穣の神ってどんな神様?』
『フェンリル様だよ、メグちゃんのお母さん』

 ちび助のお母さんか、そうしたらちび助は真っ白だったから、フェンリルも体は真っ白なのかな?

『体毛が白い狼でいいのかね?』
『うん~それで問題ないよ~』

 狼か~ポーズはどうするかな、ぱっと頭に浮かぶのは、遠吠えするポーズ、お座りポーズかな?お座りの方がいいか、ポーズはそれでいいか、ならばさっそく取り掛かろう、行動速度上昇と、五穀豊穣と、決して壊れることが無いようにとイメージし大量に魔素を纏わせ岩を掘り始めた。

 木材とは感触が違うが、岩を掘りながら、都度必要なオリハルコンの彫刻刀を作り彫っていった。

 彫刻刀を作ったり、岩を掘っていると、突如ヒスイが声をかけてきた。

『行動速度上昇が限界突破したね~』
『そっか』
 
 どれだけ早くなっているのかは後で知れればいい今は集中して石像づくりをしよう。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

転生錬金術師・葉菜花の魔石ごはん~食いしん坊王子様のお気に入り~

豆狸
ファンタジー
異世界に転生した葉菜花には前世の料理を再現するチートなスキルがあった! 食いしん坊の王国ラトニーで俺様王子様と残念聖女様を餌付けしながら、可愛い使い魔ラケル(モフモフわんこ)と一緒に頑張るよ♪ ※基本のんびりスローライフ? で、たまに事件に関わります。 ※本編は葉菜花の一人称、ときどき別視点の三人称です。 ※ひとつの話の中で視点が変わるときは★、同じ視点で場面や時間が変わるときは☆で区切っています。 ※20210114、11話内の神殿からもらったお金がおかしかったので訂正しました。

処理中です...