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VSヴォーネス共和国(クラリス教団)

第138話 ペンジェンの街 クラリス教団の秘密 後編

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 目的のエノオンドクダミに関しての本が見つからなかった。

 地下書庫に行くとしよう、シモンズの死体を回収し、読んでいた本を元に戻した。

『ヒスイ悪いんだけどさ、地下に行きたいんだけど、案内してくれる?』
『良いけど今から行くの?』
『うん?今からでいいんじゃない?』
『君が良いなら良いけど』

 そう言って自分の肩から先導するように自分の前をふよふよと飛び始めた。

 ヒスイの案内の元地下に降りると、ちゃんと教会らしい聖堂があった。
 しかもかなり広い、見た感じ教会の建物の下だけではなく、他の建物の下も使っているような空間だった。
 ただ地下の為か薄暗い聖堂だった。左右にそれぞれ2つの扉があった。

『どこの部屋?』
『右側の2つが書庫になってるよ』
『ありがとう』

 入口から近い方の扉を開けて中に入ると、2階よりも多くの書物が並んでいた。そしてどちらの扉から入ってもこの書庫に続いている事が分った。

 中を歩きながら、この中から探すの?と思った。

 書庫を歩き回っていると奥の書棚に鎖がついていて、各書物に鎖がつながっていた。
 
 お!?当たりを引いた予感!

 背表紙にタイトルが書いてあるものはそのまま確認、タイトルの無い物は手に取って確認を繰り返していると見つけた。

 背表紙に薬草とだけ書かれているものがあった。手に取り本を開こうとするが、鎖と鎖の間に鍵穴があり鍵が無いと閲覧できないようになっていた。

 面倒な事をする……、仕方ないのでアイテムボックスから神刀を取り出し抜刀した。

 鎖を斬る為だけに抜刀かと思いながらササっと2度鎖を斬った。

 神刀を納刀しアイテムボックスへしまい、鎖の残骸を払い床に本を広げ、何度も開いた形跡のあるページを開くとそこにはリライアンスフラワーの詳細が書かれていた。

 興奮剤に鎮静剤として使える事も当然書かれていたが、副作用の依存性を打ち消すためにエノオンドクダミやブルーマンジュシャゲの葉を一緒に使用するように記載されていた。

 これがこの本が鎖に繋がれていた理由か、だがエノオンドクダミが毒草扱いしている本ではなかった。他のページをめくるとエノオンドクダミのページも何度か開いている形跡がみられたが、線が引っ張ってあったりと何か特別な事をしている形跡は無かった。

 ふと思った。
 リライアンスフラワーの入手方法だ。

『ヒスイ、リライアンスフラワーって簡単に入手できるの?』
『ん~街道から少し入った森の中に一杯生えてるよ、リライアンスフラワーは茎や根っこが残っていれば3日後に花を咲かせる成長が早くしぶとい植物だね』

 ドクダミも似たようなしぶとい性質だけどな、まぁ簡単に採取できるのが分かった。

『どこに保管しているか分かる?』
『粉末状のもの?それとも花?』
『両方』

 ヒスイは少し考える素振りを見せた。

『ん~この街には3カ所かな、ここと反対側の扉の中と、兵の詰め所と海上にある船のなか』

 1つはすぐ近くか悪いが回収させてもらおう。

 とりあえず欲しいと思える情報が無かったので本を閉じ書庫に戻した。

 先にリライアンスフラワーを回収するか……、書庫を出ると入口から正面にある祭壇の上に何か置いてあることに気づいた。

 近寄ると大きく分厚い本だった。B4サイズか?厚さも20㎝はあるな表紙にも背表紙にも何も書かれていなかった。

『クラリス教団の経典だよ』
『真実を見る眼で?』
『うん』

 ヒスイが教えてくれたという事はそうなのだろう。

 経典をパラパラっと捲っていると、最初の方にエノオンドクダミが毒草だと記載している部分があった。決して触れたり口にしたりすることの無いようにと記載され、触れると皮膚がただれスケルトンのようになるとか、口にするとグールのようになるとか記載されていた。

 ゾンビじゃなくてグールなのか……、この2種の違いはあるのか?

『ヒスイ、質問なんだけどさ、ゾンビとグールの違いって何?』
『ゾンビはただ動く死体だね、グールは君の知識を借りていうなればウィルス性の病だよ。生きている者じゃないと感染しないんだけど、感染すると皮膚が溶けたようにドロドロになるんだ、そして激しい痛みや苦痛を味わうんだよね~その痛みを緩和するには生者の血肉を口にすることなんだけど、ウィルス自体がグールの唾液なんかの体液に含まれているから咬まれたら、その人もグールになっちゃうのさ』

 ゾンビゲームにありがちな設定か、今もそんなウィルスが今もあるのか?

『そのグールって今も居るの?』
『ん~居ないと言って良いかな~この大陸の人狼騒動と同じで、別の大陸の物語にしかでてこなくなってるかな』

 “居ないと言って良いかな”って何……?すごく引っかかる言い方なんだが?

『もしかして、その騒動鎮圧は……』
『そうだよ、ネア様、ソラリス様、エルメダ様、そして秋津様の4人がかかわっているね』

 人狼騒動にグール騒動、先祖たちが居た時代に何が起きていたんだ?

『全く関係ない事を聞くけど、先祖たちが居た時代に、人狼騒動、グール騒動以外にも何かあった?』
『うん、他にもセイレーンとかヴァンパイア、妖狐、チュパカブラなんか色々あるよ』
『それら全部に先祖とか神々がかかわっていると?』
『うん』

 有名な空想上の生き物の名前がずらっと並んだな、他にも雪男だとかありそうだなと思った。

 妖狐騒動の結末は以前聞いた通りだろう、最終的に妖狐の娘と先祖が結婚し現在リースという子孫が居る。本当に何があってこんなことが起きたんだろう?

『そんなに様々な騒動が起きた理由とか知ってる?』
『知っているけど、答える権限はないかな~知りたいならネア様ソラリス様エルメダ様のだれかに聞いてみるといいよ』

 今までいろいろな事を教えてくれたヒスイだが、答える権限がないと来たか、きっと何かあるのだろうと思った。

『そうか、答えてくれてありがとう』
『いえいえ』

 証拠となる経典を回収し、反対側の扉を開けると、ずらりと並ぶ大きなツボがあった。

『もしかしてこれ全部……』
『うん、リライアンスフラワーの花びらを乾燥させ粉末状にしたものだね』

 証拠だし頂いて行くか……、すべてのツボを回収してその場を出ようとすると。

『たくさんの人が来る!』
『隠密極めてるんだよね?』
『うん』

 ならリライアンスフラワーの粉末を保管していた場所から出て聖堂の隅で息をひそめて人が来るのを待った。
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