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王都ヴェンダル

第92話 王城からの呼び出し

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 震災復興が落ち着いてきたある日の事。インターホンが鳴った。
 玄関を開けるとそこにはオスカーが居た。 

「おっす、直人」
「おはようございます~どうしたんですか?」
「ギルドに王城から使者が来たんだよ。」

 それで自分の所に来る意味が解らないが、もしかして自分も?

「オスカーさん何かやったんですか?」
「ちげぇよ!俺だけじゃなくお前にもだよ」

 やっぱり、けれど思い当たる節が全くなかった。

「人違いじゃないですかね?」
「人違いじゃねぇよ、震災直後の治療と、リリィ王女の治療の件だと思うぞ」

 リリィ王女の件は分かる、何で震災直後の治療が絡むの?
 震災直後対応したのはフォックスマンであって自分ではないはず……、

「震災直後の対応は自分じゃないですよ?」
「諦めろ、直人がフォックスマンと全く同じスキル持ちって事でばれてるんだよ……」

 鑑定か! 

「面倒事は嫌なんですが……」
「大丈夫だ、直人1人じゃない、俺もチェルも呼ばれてるからな」

 1人じゃなかった。

「震災直後の対応の件ですか?」
「だろうな」

 オスカーは初動で、自分よりも目立ってたと思うし当然な気がした。

「わかりました。それでいつ王城に行くんです?」
「今からだ」

 ハイ?心の準備も何もしてないのに今から?

「ぇ?今から?」
「あぁ、今からだ、商業ギルドでチェルが待っているから早くしろ」

 王城に着ていく服は何が良いんだろうか……?
 紋付羽織?ビジネス用のスーツか?
 オスカーを見ると普段着ているのと変わらない服装だが、チェルシーはきっちり決めてくる気がしている。

「服装ってどうするんです?オスカーさんはそのまま行くんですか?」
「そりゃこのまま行くぞ、軍服着るわけにもいかないし、スーツとか堅いのは嫌だからな」

 オスカーは、参考にならない気がした。
 チェルシーと合流してから考えよう、オスカーに言われるがまま、車に乗り商業ギルドに向かった。

 商業ギルドの到着すると、チェルシーの服装は普段と変わらない仕事着だった
 。チェルシーが仕事着だし、自分もふだんの着物で良いかこのまま行こう。

「おはようございます~」
「おっす~」
「2人共おはよ~行こっか~」

 商業ギルドからそのまま大通り歩き王城に向かった。

 王城入口には兵士が2人いた。

「今日はどのような御用で?」

 門番からの問いに対して、チェルシーとオスカーが招待状と思しきカードを提示していた。

「あれ?自分貰ってないですよ?」
「大丈夫だ、直人は俺と一緒だからな」

 残念、無かったら無かったで、帰る口実が出来たのにと内心思った。

「それぞれ身分を証明するものを見せてもらっても?」

 冒険者カードを兵士に提示した。兵士が3人それぞれのカードが本人かどうかのチェックを行った後3人にカードを返した。

「ようこそ王城へ、私が客室まで皆さんを案内します。」

 兵士が歓迎の言葉と同時に一礼をした。

 オスカーを先頭にチェルシー、自分と続き王城内を案内してもらった。

 絢爛豪華な装飾品があちらこちらに飾られていて、場違い感に襲われる。

 長い廊下を歩き案内された客間には既にメイドが3名待機していた。

「それでは、用意が出来るまではこちらでお待ちください」

 これまた豪勢な客室だった。

「みなさま、どうぞこちらへ」

 メイドが中央にある椅子へ座るように促してきた。机の上にはお菓子が並んでいた。

 促されるまま、オスカーもチェルシーも座り、カップに紅茶を注いでもらっていた。自分も座ったが、紅茶を注ごうとしたメイドに対して、

「あ~自分は良いです。」
「どうしたの?」
「もしかしてだが、ニンジャは出された食事には口を付けないと聞くが直人もそういう考えなのか?」

 それは毒を警戒して口にしないだけだけど、自分の場合は違う紅茶が飲めないだけなのだ、まぁ紅茶だけではなく、お茶系やコーヒー・炭酸・お酒も飲めないのだ。

「そんな大層なものじゃないですよ、単に紅茶が飲めないだけですよ。」
「大変失礼しました!」

 1人のメイドが深々と頭を下げた。

「気にしないでください、お冷があればお願いします」
「かしこまりました。直ぐに用意します」

 悪いことしたかな?と思った。

「なぜ飲めないのか聞いてもいいかな?」

 チェルシーの質問に対して隠す必要もないので素直に答えることにした。

「単に苦くて口に合わないと言うのもありますが、眠れなくなるんですよ」
「あぁ~なるほどな、カフェインの耐性が無いのか」
「そんな感じです、チョコレートもあまり口にしないですからね」
「へぇ、そうなんだ、飲めるものが限られると辛かったりしない?」
「そうですね、コーヒー、炭酸、アルコールなんかも飲めないですからね、友達とどこか行ったら水くらいしか飲めるものが無かったりすることもありますよ」
「直人は何が飲めんの?」
 
 この手の話をするとこの質問は当たり前のようにされることが多い、

「水とスポーツ飲料水にジュース位しか飲めないですね」
「おま、おこちゃまだな」

 オスカーが笑いやがった。まぁもう言われ慣れているからムッッと来ることもないけども、笑われるとまたかとは思う。

「オスカー……」

 チェルシーのあきれた反応を見せた。

「わりぃわりぃ」
「別にいいですよ、慣れていますから」

 その後も暫く雑談していると、扉をノック音が聞こえた。
 直ぐにメイドの1人が扉の元に行き扉を開けるとそこにはリリィがいた。

「皆様お待たせしました。謁見の間まで私リリィが案内します」

 普通は兵士とかメイドとかが謁見の間まで案内するものじゃないのか?

「リリィ元気だった?」
「はい、チェルシーも元気そうで何より」

 チェルシーがリリィの元に駆け寄り、オスカーと自分が後に続いた。

「オスカー様、直人様お久しぶりです。」

 ちゃんと歩けるようになっていた。
 ALS治療後からすでに半年、半年もあれば十分リハビリを行う時間もあるし当然なのかもしれない。

「普通に動けるようになっているようですね、良かったです」
「そうですね、直人様には感謝しかありません、ありがとうございました」

 普通の生活に戻れたなら良かった。
 あの離宮でメイドと2人で生活とか寂しかっただろう。

「それでは行きましょうか」

 リリィの横をチェルシーが歩き、自分とオスカーがその後に続いた。

「本日は皆さまを使徒様としてお迎えしますので、跪かないでください」

 思ったより気楽な謁見になりそうだなと思った。
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